タイトルなし
私は、樹木のようになりたい。
芽を生やし、地面を突き破って出てくる樹木のようになりたい。
自然に生きる木のようなりたい。
貫いてきた鋼も、押し付けられた花も全て捨てて、そう願った。
誰かを尊び、敬っていた頃の私。
その人の正義に操られ、自らを失っていた私。
そんな私を、私は嫌い――――なんてことは、言うつもりは無い。
でも、確かに私は思う。
宿り木であった私だから、私は誰かを失った。
折れてしまった鋼を見て、私はそう思った。
それは、まだ見ぬ私。もう見ることの無い私。
誰かの手によって、自分を形成されてしまった私。
そんな自分になるつもりは毛頭ない。なってたまるかと、心から思う。
自然に生きたい。自分を殺すくらいなら、私は母親だって裏切れる。
少しの親孝行は、また後で。
でもそれは、何のため? 誰がため?
そんなこと、忘れたことは無い。
――――それは、紛れもない私のため。
私の正義は、私がため。
私がこれ以上、自分を見失わないことがないように、生きるため。
それがきっと、誰かのためになっているのだと信じて。
五人で作った。五人で築いた。
そう思ってきた正義は、全部バラバラに砕けた。いや、元々バラバラだったんだ。
だから、今度は。今度こそは。砕けることの無い正義を作る。
その正義が、一体何か私には分かる。
自分のことを一番に考えていればいい。
何が間違えか、正解かなんて分からないこの世界には、それが一番、よく似合っている。
誰かのためにとか、そんなのはいい。自分のために生きていれば。