19.土木【8/5】
先週末は大変だった。
ライブハウスでのステージはおかげさまで大盛況だった。らしい。
どうもいまひとつ実感がないんだよな。
ドロップとブレーメンのステージは見てたからどれだけ盛り上がってたかよくわかるんだけど、Witchのステージがね。
みんな黙っちゃって、それでも客席の熱はどんどん上がってて。
最後の方はみんな目が血走ってるように見えたんだ。
うん。ある意味怖かったよ。
美智さんは月曜日に会社にやってきた。
日曜日は問い合わせだけで大変だったらしい。
次のステージも3バンドで出てほしいそうだ。
みんなが了承するならいいけどね。
高校生も結構見に来てたみたいで、駅前のバーガーショップで高校生がブレーメンやドロップの噂してたのを聞いてびっくりしたよ。
Witch?Witchのうわさは聞かなかったな。
すると、美香たちが興奮した顔で会社に来た。
「お兄ちゃんたちのWitchのうわさがすごい勢いで広がってるよ。」
どうやら学校でも土曜のライブハウスでのうわさは広がっていたらしい。
なんでも高校生のお兄ちゃんがライブハウスから帰ってきてしばらく放心状態だったらしい。
で、日曜日に改めて聞いたら
「すごいバンドが現れた。そのうちの一つは中学生バンドだった。そして一番すごかったのはメインでやったWitchだ。演奏のテクニック、歌声、メロディ。どれをとってもすごかった。みんな声が出なくて、客席の明かりがついて初めて演奏が終わってメンバーがステージから降りていたことに気づいたんだ。こんなことあると思うか?」
と興奮を抑えながら話してくれたそうだ。
そっか。あきれて声が出なかったって言うんじゃなければよかったよ。
俺は少しほっとしていた。
会社に残念教師から電話があり
「お前たちがライブハウスで演奏したって噂を聞いたがどうだった?」
という質問だったんで
「自分の目で確かめた方がわかるでしょ。」
と、今週末のライブに来るように誘っておいた。
校長と教頭もつれていくといっていたが、あの教頭本当に来るのかね?
今日は水曜日だ。
スキルメールが送られてきている。
今日授かったのは【土木】
『土木工事ができる。』
この一言だった。
このスキル使えばコースづくりも早く済むんじゃないか?
俺はさっそく朝食を終えた後、コース予定地に行きスキルを使ってみた。
いや~びっくりした。
木が根っこからするする抜けていき、地面も平らに整地されていく。
これは源蔵さんに言って、業者に頼むのはアスファルト工事だけにしてもらおう。
それ以前の工事はこっちで全部やれそうだ。
建築に続いて土木のスキルって…。
俺にどこかで街を作らせようとしてるのかな?
源蔵さんに念話で伝えると、ここの土木工事は結局発注してないことが分かった。
俺が木を伐採しながら根っこ抜いてたからね。それの切りが付いたら工事にかかる予定だったみたいだ。
それとバイクミュージアムの設計が出来上がってきたらしい。全3階建てで3階部分は全面テラスとして使うらしい。
1階と2階は展示スペースで地下に整備工場を作る予定らしい。
そういえば俺、道具製作ってスキルも授かってたよな。
源蔵さんと念話ではなしながらどうやれば秘密裏に作れそうかを相談した。
建築の確認申請の検査があるのでそれは通さなきゃいけないけど、基本どこが作っても問題ないはずだ。
俺は材料だけ用意してもらうことにした。
建設予定地の横に積み上げてブルーシートで覆ってもらうことにした。
コンクリートも元はセメントと砂利と砂だからな。あと水もいるか。
ここにも温泉を掘る予定なんだけどそれも俺がやることにした。
俺は建設予定地を少し広めに掘削し、残土はすべてアイテムボックスに収納しておいた。これでオフロードコースも充実した起伏が作れるな。
周辺も整地して、図面通りに道路が作れるようにしていった。
土木スキルには測量の技術もついていた。
ポイントを一点決めればそこからまっすぐだとかここで200Rだとかわかるようになった。
俺は図面に沿って軽快に木を引き抜いては収納し、地面を均していった。
水曜日一日で大方図面通りに整地はできた。
明日はボーリングして温泉を掘り当てないとね。
翌日木曜日には朝から温泉のためのボーリングを始めた。
掘った穴の周りを固めて鉄のように固くして掘り進んだ。
やがて昼頃には掘り当てて温泉が噴き出してきた。
急いで栓を石で作って塞ぎ、源蔵さんにお願いしてバルブを持ってきてもらってそれで止栓とした。土木スキルを使うとスッとそのバルブが温泉の出口に収まったんだ。
これで土日までに材料を集めてもらえれば、建築に取り掛かれるな。
土曜日は朝から建築に掛かれた。
昨日までの間に必要な材料はすべて運びこんでおいてくれた。
全面ガラスサッシなのでサッシ類が特に多い。
躯体は鉄骨造になっている。
さて、基礎と地下から取り掛かりますか。
俺は図面もアイテムボックスに取り込み学習していく。
矛盾点などのミスもあったがそれも頭の中で修正していく。
よし。水道や下水道、電気などの引き込み部分もしっかりできそうだ。
俺は建築のスキルを発動した。
するとアイテムボックスにしまった材料などを使ってみるみる形作られていく。
これはすごい。圧巻だ。
あっという間に建て終わってしまった。
3階の屋外部分には、ちゃんと露天風呂も男女に分けてできている。
温泉のバルブからの引き込みも大丈夫なようだ。
後はここから下水道と水道と電気を通してもらわなきゃいけないな。
そのあたりの引き込み工事は米田工務店にお願いした。
コンクリートもちゃんと固まって出てきた。
俺は残土を使って、水道や下水道工事にいるところだけ残して埋めなおした。
電気もできれば地下に這わしてくれるとありがたいんだけどね。
源蔵さんにそう言うとうまくやってくれるようだ。
後はそれぞれ引き込み線のための穴を掘っていかないとね。
山田さんちの横に出るように管を設置するための溝を掘っていった。
これでやれることはやったな。
後は源蔵さんにお任せだ。
さて、今日はライブハウスでの2回目のステージだ。
半分ほど曲は入れ替えて構成する。
そうそう。
ボーイズバンドの名前をスキッピングドッグ(Skipping dog踊る犬)。
ガールズバンドはフェアリーフィースト(Fairy feast妖精の宴)とした。
今日はそれぞれ3曲ずつ披露する予定だ。
スキッピングドッグが3曲、フェアリーフィーストが3曲、Witchが4曲だ。




