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ゼンカの業――律業の聖煉者――  作者: 麻海 弘タカ
第1章
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九死一生

「……運がなかったね」


 素早く刀を鞘に納め、アマナはリーゼに視線を向ける。


「お嬢、ごめん。死なせちゃった~」

「ぐっ……ガチだ。ガチで本当に、死ぬかと思った……」


 緊張の糸が切れ、ヨスガは安心感から屋敷の庭に倒れ込んでいた。

 あまりに唐突に死の危険に晒され、思わずイェフナの口癖がうつってしまう。


「なっ――おおっ♪」

「――……運がいい」


「そだ――……ん?」


 盛り上がった庭の地面、造り出された片腕の石像が、背後からアマナを叩き潰す寸前で止められていた。


「あっしのことか……ぐわっ!」


 すぐさま駆け寄ってきたリーゼによって、アマナの額が地面につく寸前まで下げられた。


「この件はシュトライゼ家の名誉にかけて、必ず償います! なのでどうか、この子を許してあげてくださいませ!」


 ヨスガは地面に座ったまま、躰を起こす。


「十分助けてもらったから……これでお相子ってことで」

「だって。だから気にしないでよ、お嬢!」


「……何ですか、コイツ」


 レムは淡々と正論を口にした。


「あのっ……あのさ、お嬢。そろそろ頭を離して……――?」


 リーゼに頭を抑えられ、下を向いたままだったアマナ。

 柄の先端がひび割れていることに、遅れて気づいた。


「絶対死んだって思ったけど……そういうことか。ま、合格だね」


 最初の一撃で、運試しは済んでいた。

 ほんの僅かな重心のズレにより、普段通りの感覚で振るえなかった剣技。


 ヨスガが一生を得たのは、運が良かったということだ。


「アメツチ、十分に気は済みましたわね?」

「うん。運がいい人は好きだしね♪ あっしが気合い入れて守っちゃうよ!」


 ヨスガの首に手を回し、アマナは行進するように歩き出す。


「あのっ、力が強……」

「アヴィス・メイカーのとこに行くンだっけ? そンじゃ、しゅっぱ~つ!」

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