九死一生
「……運がなかったね」
素早く刀を鞘に納め、アマナはリーゼに視線を向ける。
「お嬢、ごめん。死なせちゃった~」
「ぐっ……ガチだ。ガチで本当に、死ぬかと思った……」
緊張の糸が切れ、ヨスガは安心感から屋敷の庭に倒れ込んでいた。
あまりに唐突に死の危険に晒され、思わずイェフナの口癖がうつってしまう。
「なっ――おおっ♪」
「――……運がいい」
「そだ――……ん?」
盛り上がった庭の地面、造り出された片腕の石像が、背後からアマナを叩き潰す寸前で止められていた。
「あっしのことか……ぐわっ!」
すぐさま駆け寄ってきたリーゼによって、アマナの額が地面につく寸前まで下げられた。
「この件はシュトライゼ家の名誉にかけて、必ず償います! なのでどうか、この子を許してあげてくださいませ!」
ヨスガは地面に座ったまま、躰を起こす。
「十分助けてもらったから……これでお相子ってことで」
「だって。だから気にしないでよ、お嬢!」
「……何ですか、コイツ」
レムは淡々と正論を口にした。
「あのっ……あのさ、お嬢。そろそろ頭を離して……――?」
リーゼに頭を抑えられ、下を向いたままだったアマナ。
柄の先端がひび割れていることに、遅れて気づいた。
「絶対死んだって思ったけど……そういうことか。ま、合格だね」
最初の一撃で、運試しは済んでいた。
ほんの僅かな重心のズレにより、普段通りの感覚で振るえなかった剣技。
ヨスガが一生を得たのは、運が良かったということだ。
「アメツチ、十分に気は済みましたわね?」
「うん。運がいい人は好きだしね♪ あっしが気合い入れて守っちゃうよ!」
ヨスガの首に手を回し、アマナは行進するように歩き出す。
「あのっ、力が強……」
「アヴィス・メイカーのとこに行くンだっけ? そンじゃ、しゅっぱ~つ!」




