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輪廻カンカン  作者: サーモン横山
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3話 パオーヌ大冒険


 むかしむかし、あるところに象さんの国がありました。象さん達はみんな仲良く暮らしていました。あるとき象さんの国を台風が襲いました。ものすごい雨と風が象さん達を打ち据えます。みんな寄り添って嵐が過ぎるのを待ちました。


 しかし群れの中にいる子供の象さんが風にあおられて空に飛んでいってしまいました。


 大人達はみんな鼻を伸ばして捕まえようとします。お母さん象もお父さん象も鼻を伸ばします。


 ですが風と雨によって大人達の伸ばした鼻は子象に届きません。子象も必死に鼻を伸ばしますが空中で木の葉のようにあっちこっちに飛ばされて次第に元気も無くなっていきました。


 この様子を見ていた神様は子象を憐れに思い力を授けました。


 子象の鼻がパオーーン、と伸びていき、お母さん象の鼻に届きました。しっかりと子象の鼻と自分の鼻を巻き付けたお母さん象。その二人を支える様にお父さん象も鼻を伸ばして捕まえます。


 そして他の象さん達も鼻を使って空に飛んでいる子象を引っ張っていきました。


 とても長く伸びた鼻をみんなで少しずつ引き寄せていきます。


 そして遂に空を飛び続ける子象をみんなで地面へと手繰り寄せたのです。


 子象はぐったりしていましたが翌日にはすっかり元気になりました。台風も過ぎ去り、よく晴れた青空が象さん達の上に広がります。


 象さん達は神様に感謝して子象の名前をパオーーン三世と名付けて一族で語り継ぎました。


 その血を受け継ぐ者は、いづれもよく伸びる鼻を持って象さんの国を支えていきましたとさ。


 パオパオ。




「だーうー」


 またか。また変な夢なのか。今度はパオーヌかよ。絵本の読み聞かせと混じっていい感じにまとまってるのがまた困るな。


 今は……まだ夜中か。部屋が薄暗い。あっ豆電球っぽいのがあるんだよ。何となく見えるレベルだけどね。お腹減ったけどわざわざ泣いて起こすのも……あっ、でる…………出ちゃった。


 …………よし、泣くか。


「ふにゃあ! ふにゃあ!」


 ……いや、わざとでは無いのだよ。勝手にこうなるのだよ。それにしても泣くのって疲れるのね。お腹グーグーだよ。さて、お母ちゃんが来るまでどうしようかなー。


「オムツですか?」


「ふきゃあ! ふきゃあ!」


 いひゃあ! どどこから現れたのね白さん! 泣くのはほぼオートなのに泣き声が変化したよ!


「明かりをつけます。もう少し我慢して下さい」


 ほえ? あっ、同じ部屋で寝てたの? なんかすいません。あと、赤ちゃんにそんなこと言っても普通理解しないからね。白さんって天然? 真面目というか、堅物というか。でもパオーーンしたんだよね。


「ふにゃあ! ふにゃあ!」


 おう。まぶしくなったぜ。部屋の明かりをつけたんだな。白さんでかいなー。ベビーベットでオムツ替える時って立て膝っぽいな。それでもでかいけど。うん、乗せてるよね。胸のふわふわ。


 お母ちゃんだと不可能だけど白さんすげぇよ。思春期が来たらどうしよう。目のやり場とかどうすればいいんだろう? 今から対策を考えておかないと。


「……パオン」


 はっ! しまった、また狙うのか! 我がパオーヌを。うぬぬ、またすごく伸ばされるのか! ふっ、だがしかし既に諦めの境地に達した我輩に隙は無し!


 さぁ、かかってこいやーー!


「ほやぁ~、ご飯~」


 なにっ! ここでお母ちゃんの乱入だと! しまった! ふすまが開く音を聞き逃していたか! 寝ぼけているのに足音が無いのはなんでなんよ!


「オムツは今終わりました」


 へ? あっ、終わってる? いつの間に。


「ありがと~。じゃあおっぱいタイムだね」


 やめてー。たしかにその通りだけど、ものすごく恥ずかしいからもう少し濁してー。


「ふにぃ! ふにぃ!」


 くっ! せめてもの反抗で手足をバタバタしてやるー。


「うわぁ、踊ってるー。可愛いなぁもう!」


「……かわいい」


 ……踊ってる……か。たしかにそうとしか見えないかも。


「そっか~、おっぱいダンスだね~」


「ふぎゃあ! ふぎゃあ!」


 違うから! 断じて認めぬぞ! おっぱいが欲しくて踊ってる訳ではない! いや、踊ってすらいないけど。その名称はマジでやめてー。


「はいはい、ママのふくよかな胸に、むしゃぶりつきたいんですね~」


 えっ?


「えっ?」


 あっ、白さんと被った。


「あ? なんか文句あんのかよ」


 きゃー! ママンがドスの効いた声で脅しに来たー! やっぱりレディースじゃん!


「ふくよかな……胸?」


 白さん、あんた……攻めるねぇ。絶対強者の余裕って奴? もう泣くのもストップだよ。はらはらどきどきの昼ドラだよ。


「あぁ? このおっぱいお化けが上から目線で何見てんだよ!」


 ガラわるぅ! 母ちゃんチンピラ入ってる! そして見られてるんだ、自称ふくよかな胸を。白さん大きいから基本見下ろしてるし、あのふわふわお化けは……とても良いものだよ?


「うっ……」


 う? 


「うわーん! やっぱりおっぱいが好きなんだー! お兄にゃんのばかー!」


 えっ、なに、なんなの? バタバタ走る音と次第に小さくなる母ちゃんの叫びからすると……逃げた? ……格差社会に打ちのめされたか、母ちゃん。


 ところで、おにいにゃんってなに?


「……」


 うひゃあ! 白さんどうしたのいきなり抱き上げて。ほえ? ふわふわに埋まるー。はぁ、すごい安心感。


「だうー」


 ふへー。あったかーい。でもお腹グーグー。


「……頑張る。だから」


 ん? んん? これは……やっぱりおっぱい出ないかー。なんか条件反射で吸い付いたけど無理かー。というか脱いでたのね白さん。あったかい訳が分かったよ。人肌って落ち着くわー。


「頑張る。あと一年吸い続ければきっと出る」


 ……それは何か別のモノな気がするよ、白さん。


「もっと強く噛む」


 それ、血が出るだけ……いや、まだ歯が生えてないからこれで限界だよ?


 というか、会話が成立してないか、これ。


「念話による意思は届いている。気にせずもっと吸って」


 ……なぬ?


「……飲みたくないの?」


 いやいや、ウェルカムっす! そこに山が有る限り、挑むのは赤ちゃんの務めですから! どんな山でもバッチコイ!


「……ん」


 ……そんな色っぽさを出されましても。


「んぁ……出る……」


 え? 何が? ボク分かんないよ?


「私の思い。受け取って」


 ふまぁ! なんか出てきた! テイスティーング! これは……なんだろう? 母乳ではないけれど。口に溶けてく不思議なテイストが……がががば!


「あばばばば!」


「あっ、やりすぎた」


 我輩は薄れていく意識の中でポツリとこぼされた白さんの声を聞いた。いつもの平坦な声がとても印象に残った。


 パオ?

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