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獏のゆま  作者: 海埜ケイ
5/9

4夢



 黒髪で黒いシャツに黒のスラックス、胸元の金具で留めてあるマントも黒かく、唯一違う色をしているのは瞳の藍だけだ。見た目は二十代か十代後半くらいだろう。

 彼はフッと笑みを零した。

「よく分かりましたね、愛しのゆまくん。今宵も君に出会えて恐悦、至極でございます」

 青年の冷たい笑みに、ゆまは心底嫌そうな顔になり眉間に皺を寄せた。

「僕としては君とおしゃべるするのは虫酸が走るくらい嫌なんだけど、それも仕方ない。獏は悪夢を食べないと行けないからね。大人しく食料になって貰うよ」

「辛辣なお言葉を承りました。それにしても、つれないですねぇ、私は最良最高の吉日になって、思わず神にお祈りしたくなったくらいなのに・・・」

「ショタコン黒尽くめ」

「失敬な! 私はショタコンではなく、純粋にゆまくんだけを愛しているのです。現に今も、君に会う為に潤若き乙女の夢世界を無遠慮に汚しているのですよ。それくらい、他の人間には興味はございません」

 言い切る青年に、ゆまは容赦なく大鎌を振るった。

 青年は床を蹴って、悠々と大鎌の刃から逃れーーー刃の軌道が変わった。

「ほう?」

青年の首元にゆまの刃が当たるが、何故かそのまま通り過ぎてしまった。

「え?」

 何が起こったのだろう。

 今、確かにゆまの大鎌の刃が青年に届いたと思ったのに、青年はかすり傷一つ負っていない。

 ゆまは更に追撃するが、青年はダンスのステップを踏むかのように鮮やかな動きで大鎌を避けている。

「これが、ナイトメアとの戦い・・・」

 わたしは静かに呟いた。

ゆまが子供の姿をしているせいだろうか。狩るものと狩られるものの立ち位置が逆に見える。ゆまが追いつめているのに、追いつめられているようだ。

 段々と、ゆまの顔に焦りが見えてくる。それに反して青年は涼しげな顔で微笑んでいるばかりだ。

「ちょこまかと、すばしっこいヤツだな」

「ふふっ。鬼さん、こちら。手の鳴る方へ~」

「死!」

「あはははは~~~」

 憤怒を露わにして大鎌を振るったゆまに対して、青年は手刀で大鎌の刃を反らし、踏みつけた。

「チェックメイト、ゆまくん」

「クソッ・・・」

「口が悪い子にはお仕置きが必要ですね」

 青年の手がゆまの顔に近付く。

「ダメっ!」

 わたしは咄嗟に反発した。――瞬間、世界全体が揺れて、バランスを崩した青年は後方へ跳躍し、ゆまは尻餅を付いた。

 ダメだ、ゆまは負けちゃダメだ。勝たないとダメだ。やられちゃダメだ。私を助けてくれたんだ。正義の味方がやられるなんてあってはいけない。勝たないといけない、やられるなんてバッドエンドだ、バッドエンドはいらない、悪が勝ってはいけない、悪は倒さなくちゃダメだ、倒す、たおす、タオス、タオセーーーー。



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