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獏のゆま  作者: 海埜ケイ
2/9

1夢


 闇が世界を包み、静寂が広がる。

 空を仰げば、少しずつだが点々とした光が瞬いて見える。

 星と部屋の灯りに差違はない。

 全ての色が統一されている。

 俯くと、地面はまるで絵の具で塗り潰されたかのように真っ黒だ。

 昼に見た灰色の大地は姿を消していた。

 道並みに沿って歩いているのは偶然か、必然か。どうして歩いているのかも思い出せなかった。

 十字路に差し掛かった時、目の前を誰かが駆け抜ける。

 少し遅れて、警察のような格好をした人が肩を上下させながら、ゆっくりと走ってきた。

「ま、待てぇ」

 必死に声を上げるが、警察のような人は、息を切らせて十字路の真ん中でへたり込む。

「どうしたんですか?」

尋ねると、警察のような人はつっかえながらも答えてくれた。

「あの、殺人犯を、逃がしたくなく、走って、追い掛けて、仲間は呼んだ」

 警察のような人は本当に警察だったらしい。深く息を吐き、呼吸を整えるので精一杯だ。

 先ほどまで暗くて見えなかったが、警察の人は額と首周りに大量の汗を掻いている上、手が小刻みに震えている。

 相当な時間を走っていたに違いない。

 そう思うと、すぐに走り出した。

 後ろの方で警察の人の声が聞こえたが、内容までは聞こえなかった。

 恐らくは無茶な行動を止める言葉だったのだろう。

 しかし、何故だか止まるわけにはいかなかった。

早く犯人を捕まえないと。その思いで私の心は一杯だ。

一つに纏めた髪をなびかせて、黒いジャケットの前を開ける。

犯人の後ろ姿を目視した。

「待て! 止まれ!」

 私が叫ぶと、犯人は女だからと油断したのか、振り返って立ち止まる。

 私は犯人と対峙する形となった。

「どうして逃げる」

「・・・・・・」

「何故、人を殺した」

「・・・・・・」

「答えろ!」

 犯人の黒い顔に白い歯が浮かび上がった。

その口は確かに笑っている。

「あばよ」

はじめて犯人の声を聞いた瞬間、腹部に激痛が走った。

「な・・・・」




 ドンドンドンッ




 仰向けに倒れる私を見て、犯人は何かを呟き去っていった。

 何を言ったのだろう。

 白いシャツに穴が三箇所空いて、そこから赤い血が流れる。

 五感が鈍っているのか痛みがないのが救いだ。

 痛いのは嫌だ。

(このまま死ぬのかな?)

 ぼんやりと思いついた言葉に目を閉じて否定したい。

 喰らい考えをしているときに見上げる空は、まるで全てを飲み込むブラックホールのようだ。

 意識しかない私を飲み込んでくれないだろうか。

 目尻に光るものがこぼれ落ちた。





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