8.よろしく魔道士くん
そして、勇者くんが寝静まった頃……。
「ありがとな……アインザー……」
とクラウスくんが話しかけてきた。もちろんクラウスくんが防音の魔術を掛けているらしい。勇者くんには聞こえない。
『う、うん!どーいたしまして!……てかこちらこそありがとうね!これで勇者くんも安泰だよ!』
「……意外とお前が勇者の剣で良かったのかもな……」
とボソリと言った。でも俺にはハッキリ聞こえていた。
『うわーん……認めてくれてありがとう!』
「……そこまで認めてないからな……」
『でも少しは認めてくれてるんでしょ?』
「……ほんの……少しだけだ……」
『うん……今はそれでもいいよ……だからね、改めてよろしく、クラウスくん』
「…………仕方ないな……よろしく……アインザー……」
『わーい!ありがとね!!』
「ちっ……うるさい剣だな……」
『俺はこういう奴なのーよろしくしたんだからよろしくねっ!』
「ちっ……」
『……そーいえばさぁ……勇者くんとは幼なじみなんだね?このパーティの三人ってどういう関係?』
「ああ、ハンナも幼なじみでいつも三人で居た。小さな村だったしな……」
『ほー……ハンナちゃんは昔から聖職者だったの?』
「……ああ、ハンナは昔から人を助けたいという心根の優しいやつでな……幼い頃に村の教会に入信したんだ」
と声音が優しい……。
『ほー……クラウスくんってハンナちゃんが好きだったりする?』
「っ!おまっ!何を言うんだ!そ、そんな、わけっ!」
とめっちゃ焦っている……やーい図星でやんの!
『……クラウスくん……わかりやす過ぎ……』
「……言ったら折るぞ……」
と地を這うような声で脅してきた。
『は、はいぃ……言いません!女神様に誓って言いません!!』
「……ならいい……」
『ふー……んで、勇者くんは農家をしてたんだよね?』
「ああ、父親を早くに亡くしてな……母親を手伝う為だ……アイツだって剣の訓練したかったのかもな……」
『勇者くん……そうだったんだ……』
「……アイツには黙ってろよ」
『うん分かってるってー……。んで、クラウスくんは?』
「俺か?……俺は……父が魔道士なんだ、だから昔から魔術を教えてもらっていた……」
『ほー……だからあんなにスイスイ魔術使えるのねん』
「……もういいだろ……俺も寝るぞ……」
『うん……色々話してくれてありがとねん。おやすみー良い夢をー』
しばらくしたらクラウスくんの規則正しい寝息が聞こえた。
二人ともおやすみー。俺は眠れないけどねー。はぁ……暇だー。宝物庫なら色々話し相手が居たんだけどなぁ……剣の。