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31.記憶がズキズキ


 翌朝、勇者くん達は村を出発した。次の村を目指すのだ。魔王の配下の居場所まではまだまだ先である。


 昨日勇者くんは盗賊団に遭遇したくないつって言ってたケド……うーん……。何かモヤモヤ。


『ねぇ勇者くーん……盗賊団……本当にほっといていいのー?後で村の人達困るんじゃないの?』


「……そ、それは……」

 と勇者くんは視線を彷徨わせる。迷ってるな?


『自分が対人戦したくないからって他の人を犠牲にするのは違うと思うんだよねー。勇者としてどうよ?……てか、何事も経験しておかないとね?』


「そうだな、俺も昨日は言わなかったが……レオン……腹くくれ」

 と勇者くんをじっと見る。


「うっ……。うん……そう、だ、ね……。村の人達の為にも退治しておかないとだよね。ほっといて後で後悔したくないもんね」

 とグッと唇を噛み締める。


『んじゃあ、今から盗賊団を探して退治するでOK?』


「うん……アインザー、盗賊団へのナビゲートお願いするよ」

 とその目はまだ揺れている。対人戦への覚悟がまだまだなんだなぁ。


『OKー盗賊団はねぇ……このまま街道沿い進めば遭遇するはずさー』


「……元々俺達を遭遇させる気だったのか」

 とクラウスくんはため息をつく。


『だってーん……正義の勇者様一行ですしぃ?盗賊団の一つや二つ倒して貰わないとーん』


「はあ……アインザーにはかなわないや……」


『でもね、勇者くん安心してほしいの。対人戦になったら俺切れない剣になってあげるから人を殺しちゃう心配はないよ。打撃だよ打撃』


「えっ……そんな事出来るの?」

 と目をクリクリさせる。


『そりゃ天下の魔剣アインザームカイト様ですからーん。ふふふ高性能なめんなよーん。とりあえずこれで安心でしょ?』


「うん、ありがとうアインザー」

 と勇者くんはようやくほっとした様だ。


 それから勇者くん達は順調に魔物を蹴散らしながら街道を進む。


 ……うーん……あれ?……切れない魔剣?何か引っかかるんだよなぁ……。何かこう……うーん……。何でだろう。あ、頭が……ズキズキする。






 そしてしばらくして街道が岩石で狭まった所が見えた。岩石が邪魔で先が見えない。が、気配は感じる……。


『勇者くん、クラウスくん……この先に盗賊団が待ち伏せているよ……大丈夫行ける?』


「うん……アインザーが付いていてくれるから……だ、大丈夫」

 と言うが勇者くんは手汗がビッショリだ。


『あー……そうだ……クラウスくんもさぁ、勇者くんの精神衛生の為に、魔力の剣にちょっと細工してよー』


「ん?細工?どういう細工だ?」


『クラウスくんも切れない剣にしておくれー。あ、大丈夫魔力強奪はそのままだから。とりあえず剣を出す時に切れない剣って思って出せばそうなるからさー』


「……分かった」

 と宙から魔力の剣を取り出した。見た目はいつもと変わらないが、もう切れない剣になっている筈だ。


 さて、俺もそろそろ切れない剣になりますかー。そいやっ!はい、なまくらの魔剣いっちょう上がりっ!


 さあ、そろそろあちらさんも来るかな?


 勇者くんが、一歩踏み出した時だった、岩石の影から盗賊団が飛び出してきた。二十人ぐらいいるだろうか。


 そしてゆっくり勇者くん達を取り囲もうとしていく。


「……あなた達は噂の盗賊団?」

 と勇者くんは俺を構えつつ盗賊団をじっと見る。


「……応える筋合いは無い。荷をここへ置いていけ。さすれば無事にここを通してやる」

 と盗賊団の頭領っぽいのが言う。


「それは無理だな。こちらにはお前達を蹴散らすという選択肢がある」

 とクラウスくんは挑戦的な目で盗賊団を捉える。


「ちっ……抵抗する気か……仕方ない……野郎共!殺せ!!」

 との号令によって、一斉に勇者くん達に襲い掛かってきた。


 が、はっきり言って勇者くん達の敵ではないな。勇者くんとクラウスくんは次々と剣で盗賊団の奴らを薙いでいく。もちろんなまくらなので切れてはいないが骨とかは逝っちゃってるだろう。


 ドサリドサリと敵は倒れ込んでいく。痛さで悶絶している者や、そのまま気絶している者もいる。……多分しばらく気絶している方が幸せだろう。


「な、なんだコイツら!?強ぇ!!」


「怯むな!本気で殺せ!!」

 と盗賊団は頑張るが無駄である。


 そしてクラウスくんの魔力が溜まった様だ、強力な魔術の打撃を放つ。


 その衝撃で周囲に土煙が立った。視界が悪くなる。


 その土煙をついて一人が勇者くんに襲い掛かってきた。勇者くんはまだ気付いてない。


『勇者くんっ!!後ろっ!!』


「えっ?うわぁ!」

 と勇者くんは驚きで思いっきり俺を振りかざしてしまった。……ここままじゃなまくらでも殺してしまうっ!


 だめだ!だめだ!殺しちゃダメだ!!


 そう強く思ったら俺はそいつの身体をすり抜けていた。


 あれ?……この光景……感覚……どこかで……?


 ああっ!今は勇者くんを守らないと!と勇者くんを敵の剣から守る障壁を張る。そして敵さんは俺の魔術の雷撃でおねんねしてもらった。


「ぼ、僕……」

 と勇者くんは尻餅をついて自分のやってしまいそうだった事に呆然としている。


 土煙が晴れると、残りの盗賊団はさっきのクラウスくんの魔術でほぼ壊滅していた様だ。ふう一安心。


「レオン……大丈夫か?」

 とクラウスくんが勇者くんに手を差し出す。


「う、うん……だ、大丈夫……」

 とクラウスくんの手を借りてゆっくり立ち上がった。


「終わったな」

 とクラウスくんは辺りを見回す。盗賊団は皆伸びている。


『んじゃあ、コイツらは王都の騎士団詰所にでも送りますかー。勇者くんが退治したとのメッセージを添えてね』


「うん、お願いするよ」


『OKー。その前に全員捕縛っと!』

 と逃げられないように捕縛の術を掛ける。そして陣を出現させて、王都の騎士団詰所へと送った。


「これてこの辺の村の人達も一安心だね」


「そうだな」


『勇者くんもクラウスくんもよく頑張りました!えらいえらい』


「うん……でも最後はアインザーがいなかったら……ゾッとするよ……」

 と勇者くんは身体を抱える。思い出して身震いしている様だ。


『まあ、結果オーライってことでー。ほら次の村へ進もうぜー』


「うん」

 と再び街道を進んでいく。


 が、俺の頭の中はずっとさっきの既視感と感覚がグルグルしている。


 ……あの感覚は以前にどこかで……。


 あー……頭痛い……。頭どこか分かんないけど。


 思い出したい様な?思い出しちゃいけない様な?なんだろうモヤモヤする。


 でもこれは開けちゃいけない記憶の蓋なんだと思うわー。忘れよう。うん、それがいい。そうしよう。うん。

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