表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/32

29.帰郷


 翌朝勇者くん達は城を立ち、勇者くんが生まれ育った村へ戻ってきた。


 驚かせないように移動術での移転先は村の外れに指定した。


『ほー?ここが勇者くんとクラウスくんとハンナちゃんが生まれ育った村?』


「うん、そうだよ……久しぶりだなぁ……」

 と勇者くんは目を細める。


「ああ、久しぶりだ」

 とクラウスくんも懐かしそうだ。


 そうしていると村人に勇者くんが見つかった。


「レオンにクラウス?……どーしたんだ勇者として旅に出たんじゃなかったのか?」


「うん、この先に用があってね……ちょっと寄ったんだ」


「そうか、そうか、ならサーシャさんにも顔を見せてやれよ!心配してたからな!それじゃあ旅頑張れよ勇者様!」

 と村人は去っていった。


『サーシャさん?』


「僕の母さんの事だよ」


『ほほぅ……そりゃ顔を見せてあげなきゃ!クラウスくんも家族のとこへ行く?』


「ああ、そうだなしばらく会ってないからな。……じゃあ後で落ち合おう」

 とクラウスくんは村のどこかへ行った。多分彼の家だろう。


『んじゃあ、勇者くんの家へ行こうかー』


「うん……いや、今の時間ならまだ畑だと思うからそこへ行こう」


『ほー、了解!』


 それから勇者くんは村の奥の畑が並ぶ区画へ進んでいく。その間多くの村人に囲まれたり、話しかけられたりした。勇者の旅頑張ってね!って……プレゼントの作物付きで。村人に愛されてるなぁ……。


 そしてとある畑で勇者くんはある女性の元へと駆けて行った。


「母さんっ!!」


「……?……レオン……レオン!」

 と勇者くんによく似た茶色の髪の女性は勇者くんを抱きしめて、その優しい緑の目で勇者くんを見つめる。微笑ましい光景だ。


「母さん……元気にしてた?畑仕事一人で大丈夫?」


「私は元気よ、畑仕事はね村の皆が手伝ってくれているから大丈夫よ。……レオンこそ元気にしていたの?怪我は?どうしてここへ帰ってきたの?」


「そっか良かった……。僕も元気だよ怪我も大丈夫!この先へ用があるからちょっと寄ったんだ」


「そう……なら直ぐに立ってしまうの?」


『勇者くーん、お母さんに久しぶりに会えたんだ、今日はここで一泊していったら?』

 と勇者くんにだけ聞こえる声で話しかける。


「……泊まって……良いのかな……」


『いいんでないの?クラウスくんも賛成してくれるさ故郷は大事だぜー?』


「分かった……。母さん……今日は久しぶりに母さんの手料理が食べたいな……それで明日立つよ」


「分かったわ……腕によりを掛けなきゃね!」

 とサーシャさんは嬉しそうだ。


『クラウスくんには俺が連絡つけとくねー』


「ありがとうアインザー」


 それから魔術でクラウスくんに今日はここへ一泊することを伝えた。クラウスくんも快く了承してくれた。やっぱりクラウスくんも久しぶりの故郷が嬉しいんだね。


 二人共まだ、十六歳の少年だもんねぇー。そりゃお母さんと故郷が恋しい筈だわ。


 そういや……俺の故郷……何処だっけ?……忘れちゃったー。


 それから夕方まで勇者くんは慣れた手つきでサーシャさんの畑仕事を手伝った。畑仕事をしている勇者くんは生き生きとしていた。その姿は完璧に勇者に見えない。ただの農民だ。


 そして、勇者くんの家へ帰った。こじんまりとした質素な一軒家だった。


「久々で疲れたでしょう?晩御飯まで休んでいてね」

 とサーシャさんは台所で料理を作る。


「大丈夫だよ、鍛えてるからね!でも僕料理出来ないから見てるね」

 と勇者くんは台所が見える場所へ座った。


 サーシャさんは料理をしつつ勇者くんにこれまでの旅路を聞いた。


 勇者くんには俺……魔剣の事は伏せるように言っておいた。余計な心配は掛けない方が良いでしょ?


 そして、勇者くんは俺の事は伏せつつサーシャさんに今までの旅路を話していった。


 そうしているうちに夕食が完成した様だ。夕食はクリームシチューにポテトサラダとかだった。どうやら勇者くんの好物らしい。


 夕食を食べつつも、それからも勇者くんとサーシャさんのお話は続いた。


「……やっぱり勇者としての旅は大変なのね……」

 とため息をこぼす。


「大丈夫だよ!心強い仲間も剣もいてくれるからね!」


「まあ、クラウス君がいてくれたら安心かしら?……レオンはそそっかしいものね」

 と微笑む。


「むぅ……まあ、そういう事!大丈夫だから!心配なんていらないからね!魔王も直ぐに倒して戻ってくるから!」


「そうね……たいへんでしょうけど頑張ってね。でもね、心配なものは心配なのよ、だから……絶対生きて帰ってきなさいね……」


「うん!」


 それからまたしばらく話し込んで、深夜に勇者くん達は眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ