2.よろしく勇者くん
クラウスくんは勇者くんを連れて謁見の間に入った。ほー久々ー。あんまり変わってないなぁ。
「勇者よ。聖剣を無事にその手に…………そ、その剣は!!」
と王様は俺を見て目を見開く。そりゃそうっすよねー、封印してた魔剣を勇者くんが持ってるんだもんねー。
「お知りなんですね……この魔剣を。……教えて下さい勇者を呪いから解放する方法を」
と神妙なクラウスくん。
「……触ってしまったのか……ふむ……。それがのぅ……呪いを解く方法はないのじゃ……」
と王様は頭を抱える。
「そ、そんな……」
と泣きべそをかいてる勇者レオンくん。あーあー。
『国王陛下!俺は聖剣になりたいのです!どうかこのまま勇者と共に魔王討伐へ行かせて下さい!』
と下げれない頭を下げる。
「ふむ?その声は魔剣か?」
『はい!俺は聖剣になりたいのですっ!』
「ふーむ……真実か?誓えるのか?」
『はい!神に誓って!!』
王様が考える事しばし……。……頼みますぅ。勇者くんと魔王討伐に行かせてー。
「ふーむ……よし勇者!この魔剣と魔王を討伐してくるのじゃ。それしか神託を受けたおぬしが魔王討伐へ行ける方法がない。魔王は神託を受けた勇者のみが倒せるからのぉ……」
『おお……国王陛下……ありがたきお言葉……』
と俺は歓喜する。わーい!わーい!これで聖剣だー!!なんて理解のある素晴らしい王様なんだ!!
「勇者レオンよ……おぬしも……よいな?」
「は、はい……国王陛下……」
と勇者レオンは頭を下げる。まだ泣きべそをかいている。
「そんな……陛下……」
と食い下がるクラウスくん。王様相手に勇気あるねー。
「クラウスよ……もう決めた事なのじゃ……諦めよ」
「っ……は、はい、申し訳ありません」
とクラウスくんも頭を下げる。
「よい、では魔王討伐に行くのじゃ……健闘を祈る」
「「はい」」
と勇者くんとクラウスくんの声が重なった。
そして二人は俺を連れて、謁見の間を後にし、城からも出た。
その途中クラウスくんに鞘に入れと言われたので、鞘に入って勇者くんの腰へ収まった。
『勇者くん、これからどうするのかね?』
「お、おまっ!こんな所で喋るなよ」
と慌てるクラウスくん。
『あー。大丈夫大丈夫。魔術で君達二人しか聞こえない様になってるから』
「魔術も使えるの?」
と勇者くん。
『そりゃもちろんよ!俺ってば伝説の呪いの魔剣だぜぇー?……まあ直に伝説の聖剣になってやるけどな!で、これからどーすんの?』
「とりあえず宿屋で今日は休むよ……」
と何かお疲れな勇者くん。
『ふむ……そうかね……ゆっくり休むといい』
それから勇者くん達は宿屋へチェックインした。
今勇者くんは宿屋の一室にてベットで伸びている。
「聖剣と思ったら呪いの魔剣だったなんてー」
とまた泣きべそだ。
「お前が迂闊過ぎたんだ……このバカ……」
とクラウスくんは眉間を抑えている。頭痛か?
『そういえや、パーティはお二人さんだけ?』
「ううん……聖堂教会でヒーラーの子が待ってくれているよ」
とぐったりとと答えてくれる勇者くん。律儀だな。
『ふーむ……勇者に、魔道士、ヒーラー……とりあえずそれだけ居れば魔王討伐も行けるな』
「君本当に魔王討伐したいの?」
『もちろんだよ勇者くん!そして俺は聖剣になるのさ!』
「……信じていいの?」
『信じてほしいなぁ……出会いは騙したけど……魔王討伐したいのは本心だよ……本当に騙してごめんよ』
「悪いとは思ってるんだね?」
『そりゃもう良心が痛みまくりよ』
「……分かった信じるかはともかく君しか使えないんだ……これからよろしく」
と柄を握られらた。
『ゆ、勇者くーん!あ、ありがとう!!よろしくお願いしますっ!!』
と、歓喜の涙が流れそうだ。……剣だから出ないけど。
「どうなっても知らんぞ……」
とため息をつくクラウスくん。
『クラウスくんもよろしくねー』
「魔剣と馴れ合う気は無い」
とピシャリ。
『ううっ……クラウスくん冷たーい……ぐすん』
「あークラウスはこういう奴だから……」
と勇者くんが慰めてくれた……良い奴……。
『ありがとね、勇者くん。あっ!俺の事はアインザーと呼んでおくれ』
「うん、アインザー。…………ふぁあ」
と勇者くんは、大きく欠伸をする。
『勇者くーん。そろそろ寝た方がいいと思うなぁ』
と依り代の身体を心配する。
「うん……そーする」
ともぞもぞと布団を被った。
そうして俺の脱・宝物庫生活の一日目が終わったのだ。