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28.挑発そして、手がかり


 翌日も王都の外で勇者くんとクラウスくんは手合わせをしている。


 ……今日も姫様からお誘いがあったけど、勇者くんは姫様の部屋に行って頑張って修行の事を説明したのだ。


 姫様もしばらく勇者くんとイチャコラ出来ない事を寂しそうにしながらも了承してくれた。


 でも、修行がひと段落したら必ず一緒に過ごしましょうね!と約束を取り付けて。愛されてますなぁ勇者くーん。……多分両思いなんだろうけど……勇者くんは気付いてないだろうな……腑抜けられちゃ困るのでまだ教えてあげないけどねーん。ふひっ。


 っと思考をしていると勇者くんの手からまた俺は弾き飛ばされた。いやーん、泥まみれになっちゃうー。……まあ泥なんて魔力で弾くけど。


『勇者くーん……もっと腰を入れないとー』

 と勇者くんに回収されながらもアドバイスをする。


「うん……腰だね……腰……」


「さあ、レオン……もう一回だ」

 と剣を構える。


『……ちょっと待ってー。何か魔物が変な感じで囲んで来てるよ!』

 と感知した異変を告げる。……本当に変な感じで遠くから囲んで来ているのだ、統率が取れすぎている。それにこの辺には出ない魔物もいる……明らかにおかしい。


「何っ?」


「えっ?」


『魔王の配下が仕向けて来たのかも……?』

 と推測を述べる。


「配下が居るの?」


『いやー。多分そんな強い魔力は感じないから焦れて挑発にでも来たのかも?』


「ちっ……まどろっこしいな……」


『とにかくさぁー結構ヤバイのもいるから取り漏らしが無いように頑張っておくれよー。王都まで行かれると大変だー』

 と警告は忘れない。……ミノタウロスとかめんどくさいのがいるんだなぁこれが……。


 まあ、多分敵さんの狙いは勇者くん達だから王都は勇者くん達が倒されない限り大丈夫だと思うけどねー。


「……見えた!あれだね……」

 と勇者くんは息を呑む。そりゃそうだ……ミノタウロスとかキマイラとかヤバそーなのが混ざった大群が見えたのだから。しかも広く囲まれてるし。


「とりあえずこれ以上包囲網が狭まらないうちに仕掛けるぞ!」

 とクラウスくんは魔力の剣を構え、前へ駆けて行った。


 ……うーん。俺の分体持ってないけど……暗黒魔法剣士になったクラウスくんなら大丈夫だろう。任せよう。


『さあさあ!勇者くんも前の魔物を蹴散らそう!クラウスくんとはぐれちゃだめだぜ?』


「うん……行くよ!アインザー!!」

 と勇者くんは前へ駆けていく。


 先に駆けて行ったクラウスくんはもう魔物と対峙している。雑魚を片付けつつ順調に魔力を溜め込んでいるようだ。


『勇者くん、勇者くーん。アレやろうか?』

 と魔物と対峙し始めた勇者くんに声をかける。


「あれって?」


『ヴァイスの時使った魔力の斬撃だよーん。アレなら広範囲を蹴散らせるっしょ?』


「そうか!やるよっ!」

 と勇者くんは俺を握る力を強くする。


 そして目の前の大群に強力な魔力の斬撃を放った。……次々と魔物が瘴気へ還っていく。


 が、ミノタウロスとキマイラは重傷ながらも生き残った。ちっ。


『勇者くん!反撃の隙も与えないぐらいにドンドコ斬撃放っちゃえ!』


「えっ、でも魔力とか大丈夫なの?」

 とミノタウロスの必死の攻撃をヒラリと躱して反撃している。


『うーん……それがねぇ……勇者くんの魔力って測定不能な程あるんだよぇ……流石勇者と言うか……。だからね、撃ちまくっても大丈夫!俺のお墨付きっ!』


「へー。分かったよ。魔力を気にせずドンドン攻めれば良いんだね?」


『そゆことー』


 そして勇者くんは魔力残量なんて気にせずにドンドコ魔力の斬撃で攻めていった。ドンドン魔物の数が減っていく。素晴らしいよ勇者くんっ!


 クラウスくんとの手合わせとかで勇者くんの基礎体力やスキルが底上げされて斬撃も強力になったんだろうねー。むふっ。


 ドンドン順調に魔物の数が減っていき、魔物の隊列も崩れてきた。


 そして勇者くん達は前面の包囲網を突破した。


『よーし!これで囲まれる心配は無くなったねー後はガンガン攻めちゃえっ!』


「うん!」


「ああ!」

 とクラウスくんは何重にも満タンに溜め込んだ魔力を放出して攻撃していく。ドンドン魔物が減りますわー。凄いぃ。


 勇者くんもそれに負けじと魔力の斬撃をドンドン放っていく。


 勇者くんが魔物の右翼を、クラウスくんが魔物の左翼を攻める。


 いやー……ミノタウロスにもちっと苦戦するかと思ったが、勇者くん達やるねぇー。ミノタウロスが形無しですな。キマイラもか。


 でも、魔力の斬撃以外ではどーかな?ほら斬撃で取り漏らしたミノタウロスがやって来ましたよー。


「っ!」

 と勇者くんはミノタウロスの大斧を避けた。そして反撃しようとする。


『勇者くーん。そろそろ魔力の斬撃じゃなくてちょっと純粋な剣術で倒そうと頑張ってみない?特訓の成果を試そうぜー?』


「……分かった……やってみるよ……」

 と勇者くんはグッと俺を握りしめる。


 そしてミノタウロスへと斬りかかっていく。が、ミノタウロスは硬い。直ぐに弾かれてしまう。


 それでも勇者くんは諦めない。ミノタウロスの攻撃を上手く避けつつ攻撃していく。


 少しずつミノタウロスに剣戟が通り、ダメージが蓄積されていく。


 ちなみにこの間勇者くんに寄ってきている魔物は俺の障壁で弾いている。弾くだけで倒すのは勇者くんの仕事である。今回は勇者くんに任せるよー。


 そして勇者くんの剣戟がバテてきて機動力が落ちたミノタウロスの首を素早く刎ねた。


 おお!勇者くんやるじゃーん。ミノタウロス自分の力で倒せたね!!わーい!


『勇者くーん、おめでとー。さあ、後はドンドン削っていこう!!』


「うんっ!」


 そして勇者くんとクラウスくんが頑張ることしばらく……残りはミノタウロス一体となった。


「……こいつで最後だな……」

 とクラウスくんは魔力の剣を構える。


「……うん」

 と勇者くんも反対側からミノタウロスを挟む。


 二人がミノタウロスを倒そうと動き出す直前だった、ミノタウロスが濃い瘴気に包まれた。


「えっ?何?」


「何だ?」


 ……これはミノタウロスは移転でもして逃げようとしているか、飼い主が呼び戻しているかだな……でも……ここは黙ってて泳がそう。


 そして濃い瘴気が消えるとミノタウロスも消えてしまった。


「おい、アインザー……どうなっている?」

 とクラウスくんの顔は険しい。


『大丈夫だよクラウスくん。今のミノタウロスが配下からの招待状だったみたい』


「招待状ってどういうこと?」

 と勇者くんは首を傾げる。


『今のミノタウロスの気配を辿ると大きな魔力に辿り着いたんだ。そいつが多分次の配下だと思うよー』


「つまり配下の居場所が分かったってこと?」


『イエス、イエース。流石俺っては高性能っしょ?』


「……そう分かったから見逃したな……」

 とクラウスくんに睨まれた。ひいぃ。


『まあ、そうなりますなぁ……とりあえず配下の居場所が分かったからいいじゃん!』


「そうだね」


「ちっ……で、どこだ配下は?」


『地図プリーズ』

 と言うと、勇者くんが地図を広げてくれた。俺は光の魔力で地図上のある一点を光らせる。


「僕達の村のまだ先だね……」


「ド田舎だな……」


『とりあえず持ち主……つまり勇者くんの知っている範囲までは移動術で移動出来るから明日には出発しようかー?今日は疲れたでしょ?それに王様に報告とかしないとだしー』


「うん、そうだね。じゃあ城へ帰ろう」


「ああ、そうだな」


『んじゃあ帰りますかー』

 と移動陣を出現させる。


 そして城へと帰った。


 それから勇者くんは王様へ報告して、明日立つことになった。

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