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第八話 時は今 天が下知る 五月かな

2019/11/08修正実施

 三上龍之介改め、従三位権中納言藤原朝臣三上龍之介正圀は、京都の西部にある山の愛宕山神社の境内に立った状態で目が覚めた。


目が覚め、辺りを見回したあと衣服を確かめる龍之介。


服は中流公家としては、普通の物で頭には長烏帽子、腰には『童子切安綱の太刀』

公家なので小太刀は腰には無かったが、服の中に小太刀が隠されていた。

龍之介は確認すると、これまた名刀『正宗』の小太刀である。

さらに脇下にはホルスターに入った『357マグナム』が入っていた。

懐には、財布もあり金子がそれなりに入っている。

太刀、小太刀、拳銃、財布を確認する龍之介。


「ここは、本当に戦国時代なのか?」


と、一人呟くと、サポート用小型通信機が耳に装着されており、司録の声が聞こえた。


「はい、ご希望である戦国時代に転生されました」


閻魔ちゃんの秘書、司録と繋がっていた。


「ご希望通りあの林の中に、忍びも潜んでおります。正宗の小太刀は閻魔ちゃんからのプレゼントだそうです。他の装備品や今、必要無いものは、京都の屋敷に置いてあります。この通信機は必要があれば私と繋がりますのでご利用下さい。では、御武運を!」


龍之介は、辺りを見回し現状を把握する。

回りは、森林に囲まれた神社の境内である事を視認。

周囲には人影は確認できない。

静かに、小鳥が鳴く声が聞こえるだけ、境内に咲く躑躅(つつじ)や石楠花、水芭蕉の花が五月から六月であることが確認できた。

さらに童子切安綱を抜刀し手応えを確認し、何度か抜刀術の練習をした龍之介。

武人としては当然の行為、自身の獲物の長さを確認し、慣れないとならない。

正宗と拳銃も確認、拳銃は、いつでも撃てるよう弾が入っていた。


「357マグナム・・・・・・指定通りとは言え良い拳銃を用意してくれたなぁ。ライフル銃も詳細に指定しておけば良かったかの~さてさて、明智日向守光秀を探さねば。本能寺の変を止めねばならぬ」


「正圀様、明智光秀は本殿で占いをしております」


「その方が、私の家臣であるか?」


「はっ、漆黒の影鷹と申します」


漆黒の影鷹は、なんとも中性的な顔立ちと声、服装は、いかにもという忍び装束ではなく、公家の供回りの服装をし腰には太刀を備えていた。

まるで、「はがない」に出てくる幸村のような美少女?美男子?


「影鷹よ、確かめとくが、その方は男か?」


「は?もちろんでございますが、なにを今更」


龍之介は男色の趣味は無かったが、影鷹ならちょっと、イタヅラをしてみたいかもと思ってしまった。

その気持ちが表情に出ていないか心配をし、顔をこすり稜頬をパチンと叩いた。

心は100歳、体は20歳になり、下半身も現役復帰したため性欲も満々。

長いこと忘れていた性欲をなんとも喜ばしく感じていた。


「おっと、今はそれどころではない。明智日向守光秀を」


急ぎ本殿へ向かう龍之介。

すると、おみくじに熱中している一人の武将を見つけた。

その男が着ている陣羽織の背中には、桔梗の家紋が大きく描かれ、明智日向守光秀だと遠目からでも確認出来た。


ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、


龍之介の砂利の歩く音。

集中しながらもイライラとおみくじを引いている男に近づく。

大凶を引き続け苛立つ、光秀。

甲冑姿でいかにも戦に出向く装備をしているが、兜は被っておらず、金柑頭が赤くなっているのが伺えた。

そんな光秀にも、その足音は近づいてくるのが聞こえた。


「何者!今は鳥居から先、誰も入れぬよう人払いをしていたはず」


と、明智光秀は腰の太刀をすぐに抜けるよう柄に手をかけた。

龍之介は落ち着いて答える。


「それがしは、従三位権中納言藤原朝臣三上龍之介正圀と申す。織田家中の明智日向守光秀殿ですな?」


龍之介は、実は長い名前に憧れがありこの呼び方を一度で気に入った。


「いかにも、明智日向守光秀である。しかし、三上龍之介正圀と言えば帝の落し胤、そのような者がこの場にいるはずがない!さては、物怪もののけ、妖かし、忍びか?斬って捨てる」


龍之介の設定した自身の身分は、明智光秀が知っている事で、この世界が異世界の戦国時代であることを龍之介は確認した。

明智日向守光秀は、腰の太刀を抜こうとした瞬間、光秀の首には抜刀された龍之介の童子切安綱がすれすれのところで止められた。

龍之介の剣術の腕は、戦国武将すら凌駕する腕だった。

光秀は驚き身動き出来ず先程まで大凶を引き続け興奮して赤くなっていた顔は、一瞬にして真っ青に変わった。

平成の剣聖・龍之介は抜刀術もマスターしており、この瞬間、龍之介が戦国時代でも一流の剣の腕前、武将に太刀打ち出来る腕であるのが証明された瞬間でもあった。


「光秀殿、とりあえず話を聞いて貰えぬか?私は従三位権中納言藤原朝臣三上龍之介正圀、本人である!

話を聞かなくば、この場で首を落とすのみ」


身動きが出来ない光秀は、静かに太刀から手を離した。


それを確認した龍之介は、童子切安綱を鞘に納刀、納めた速さも速すぎて光秀には目に見えなかった。

まるで、先程まで首にあてられていた太刀が幻、幻想のように思えてしまうくらいの出来事。


「中納言様、話しとは?」


「率直に申す、信長様への謀反むほんは、やめられよ」


「なぜ、その事を!?」


「私は、陰陽道も心得ておる。光秀殿を誰にそそのかされたかは、聞くまい。今から起こそうとしている謀反は失敗に終わる。いや、信長様抹殺には成功するものの、その後の天王山の戦いで羽柴秀吉連合軍に負ける。それが、私の占いであり、今引いているおみくじ、愛宕大権現の御神託」


「なぜ、猿秀吉が!」


「秀吉は、毛利と対陣しながら、京や各地に忍びを放ち、情報を逐一集めておる。桶狭間の時のように情報を集めるのは、今も続けておる。そなたの動きなど筒抜け。謀反を察知し、毛利と停戦の準備を始めておる」


「・・・・・・」


黙り考え込む光秀。


「光秀殿、信長様と一度腹を和って語られよ。私が仲介するゆえ、軍は斎藤利三にでも任せて、毛利攻めの秀吉の援軍に向かわせよ」


「公家達と行った茶会での一句 「時は今 天が下知る 五月かな」を、御館様の耳に入っていたら・・・・・・もはや遅い。御館様の前に出たならば首を落とされるのは必定、決まったも同然」


「いや、信長様は裏切らなければ裏切らな。気性は激しいが裏切らない者に対しては寛大ではなかったか?それに一度の裏切りぐらいなら許してきた前例があるはず。領地目仕上げ、毛利領の中国切り取りしだいを光秀殿は勘違いをなされているのではないか?」


明智光秀が羽柴秀吉の援軍に向かう前、織田信長に、旧領は召し上げ、毛利領を切り取り次第好きなだけ領地にせよ、との命令が出されていた。


「ん!勘違いを?」


「やはり、そこを突かれて唆されたか・・・・・・」


「もし、それがしが首を縦に振らなかったら・・・・・・中納言殿の剣で首と胴体は離れ、首だけが御館様のもとに行くのですな・・・・・・わかりました。中納言殿にお任せします」


しばらく考え込む光秀。


「利三はおるか?」


「はっ!ここに!」


斎藤利三は少し離れた所に待機していた。


「利三はこのまま中国へ行き、秀吉の加勢をせよ」


「では、殿、京への進軍は?」


「せぬ!ここに居られる中納言殿と共に本能寺に宿泊されている信長様に拝謁してくる。毛利攻め委せたぞ!良いな。敵は毛利、中国にあり」


この時、時代が大きく変わった瞬間だった。

有名な『敵は本能寺にあり!』から『敵は毛利、中国にあり』に変わった。


「はっ、かしこまりまして御座います」


「では、中納言殿、お願いいたします」


「光秀殿の命、御預かり申した。任されよ」


光秀はかの有名な、『敵は本能寺にあり!』を叫ぶことなく、数人の配下を連れ京の都、本能寺に向かって山を下った。

【本能寺から始める信長との天下統一1巻】オーバーラップ文庫より好評発売中

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