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関白殿下の1623宇宙の旅・食事

パカルが退室するとほどなくして等身大からくり人形みたいな機械がとことことお盆に載せて食事を運んできた。

流暢に動き食事の準備をするのかと龍之介は思ったが、超科学の塊であるはずの宇宙船の中にも関わらず思ったほどのロボットではなかった。

若干不思議に思う龍之介ではあるが、今は運んでこられた食べ物に目が行っていた。

宇宙食とはどのような物かと言う興味。

変わったものを食べるのが何より大好きな龍之介にとってはロボットの事よりも重要である。

見たこともない食べ物ならなおさらなのではあるが、運ばれてきた料理は、麺の上にツブツブと荒く潰されたペースト状の鮮やかな気緑色の物が乗って湯気が立っていた。

どことなく見覚えがある料理。

龍之介、春、エリリはこれとよく似た食べ物を知っていたがまさか宇宙船で出されるとは思っておらずきっと似ているものだと思い言葉には出さなかった。漂う匂いも嗅ぎ覚えのある。

料理を運んできた等身大からくり人形は運んできただけでテーブルに乗せてくれるわけではなく、


「リョウリ ハコンデキマシタ。オウケトリクダサイ。」


エリリがお盆ごと受取るとロボットは、正面を向いたまま後ろに後退して退室していった。

テーブル乗せ各席に配膳した。


「では、いただこう。」


「いただきます。」


ホ-クと箸が用意されていたがホ-クでクルクルと巻き取り食べる。


「ん?」


「ん?殿下・・・・・・」


「こ、これはズンダ・・・・・・」


「これは、伊達政宗お気に入りのズンダパスタに間違いないな、久しく食べていなかったから懐かしい、まさかこの様なとこで再び食べるとは、しかも中々美味いではないか。」


コンコン


「失礼いします。いかがですか?」


「美味しいですが、これは我が国の一部地域で愛好されている大豆をすりつぶしたズンダパスタよく似ているのですが。」


「知っております。私も地球を調査している際に知って驚きました。大豆はス-パ-フ-ド、栄養素が高く家畜などよりコストも抑えられ畑で栽培が可能、協定惑星の多くは栽培しております。」


「なるほど、大豆は地球でもいろいろと活用されています。私は発酵させた納豆が大好きですが。」


「お~発酵食品ですか?良いですね、私、発酵食品大好きなんですよ。発酵食品のあの腐敗臭がたまらなく、口に運ぶ前から漂う匂い、口に入れた瞬間の匂い、口に含んで鼻から息を吐いた時の匂い、あれを楽しむのが大好きなんですよ。」


「なんと、パカル殿も発酵食品愛好家でしたか、これは気が合う。」


「ぜひとも我が星に到着しましたら、発酵食品ばかり集めたレストランがありますのでご案内いたします。」


「行きたいぜひとも行きたい、絶対に行きたい、これは楽しみが出来ました。」


龍之介は口の中に広がる唾液が出てこないように手で押さえながら目をギラギラして答えた。

龍之介とは裏腹に、その会話を春とエリリは眉間にしわを寄せ聞き顔色が変わり始めていた。


「まさか、異臭珍味堂の再来・・・・・・」


「それが、宇宙世界の物って・・・・・・」


言葉を失う二人は見つめ合い不安を目で訴えていた。


「宇宙船の中では流石に匂いの強い食べ物は自粛していますが、できる限り温かい食べ物が御出し出来るようにしております。全てがお口に合えば良いのですが」


「温かい食べ物は何物よりも御馳走、ありがたいもので御座いますよ。これでお酒があれば。」


「すみみません、お酒はこの船には積んでいないもので、嗜好品の積載権は船長にゆだねられております。

うちの船長は、お酒で船内の秩序が乱れると言って、少々まじめすぎるので。」


「いやいや、我慢できないほどではないので良いんですよ。我がままでした。」


「あっ、代わりと言っては何ですが私の大好きな、ウコンアルジ-ルを飲みませんか?」


「なんでもいただきますよ、食べた事のないものは何でも食べてみたい。」


龍之介がそう答えると、壁に設置されていた冷蔵庫から金属でできた容器、缶と透明なグラスを取り出しテ-ブルに置き缶を開けると人数分に注いだ。

コップに注がれた液体は、ドロッとする黄色の液体で、ドロッとしながらもプツプツと泡立っている。


「さあどうぞ。」


龍之助がスッとコップを取るが、


「殿下、お待ちください。まずは、私が毒見を致します。」


「春、もうそう言うのを気にする必要はない。もし、毒だとしても即死でなければ陰陽力で無効化出来る。」


「しかし、得体のしれない物。」


そんな会話をしているとパカルがグラスを取り、


「では、お先に失礼いたします。」


ゴクゴクゴク、


「くわ~美味しい、久々のウコンアルジ-ルやっぱ美味しい。」


春とエリリが、ゴクゴクゴク


「うっ・・・・・・生臭い・・・・・・ま・・・・・・ず」


続いて龍之介が、


ゴクゴクゴク、


「ん~・・・・・・こ、これは・・・・・・鮟鱇汁を甘い炭酸で割ったような味わい、しかし、これは茨城の鮟鱇鍋と違ってやたら生臭い、このドロッとした飲み心地のあとに後から来る炭酸が胃からこみ上げてきてさらに広がるこの匂い、どことなく懐かしいこの味は、病みつきになりそうな味で、美味い。」


司録は手を付けなかった。


「龍之介様のお口にはおあいしたみたいで良かったです。私の一番お気に入りのジュ-スなんですよ。コラ-ゲンが豊富で肌にもよくて。」


肌に良いと聞いた春とエリリは鼻を指でつまみ一気に飲んだ。

しかし、こみ上げてくる生臭いゲップに苦しめられていた。

それなりの年齢であった二人は肌の老化が気になる。


「このジュ-スは私の私物ですがいっぱいありますのでよかったら飲んでくださいね。こちらに冷やしてありますから。」


開けられた冷蔵庫には、ぎっしりと詰まっていた。



「そろそろ、冥王星の大母艦とドッキング致しますが居住空間はこちらのこちらの船内なので何も変わりませんのでこちらでおくつろぎください。」


「この部屋には不満はないのですが、大母艦を覗いてみたいですね」


「大母艦は、銀河を移動するための推進装置なので、操縦室とその操縦士の居住スぺ-スしかないので見どころはありませんよ。ほら、見てください。見えてきましたよ。」


外を見てみると、銀色の円柱形のとてつもなく大きな物がそこにはあり、龍之介達が現在乗っている同型の鯱型の宇宙船が周りにくっつていた。鯱型宇宙船は形が一緒ではあったが色は皆違ったのであった。


「最後が私達みたいですね、あの大母艦に十隻がドッキングできるようになっています。」


カンカンカンカンカンカン


半鐘みたいな警報音が鳴り響く。


「これよりドッキングを開始する、衝撃に備えよ。」


船内放送がされると、小さな揺れと共にゴンと床が軽く突き上げられる衝撃が一回鳴った。


「船長は真面目なうえに慎重な人なので。」


「何人もの命を預かる船長はそのくらいでなければならないと思いますよ。」


「ドッキング完了、これより銀河移動モ-ドに突入する」


またまた船内放送が流れる。


「銀河移動モ-ドと言っても特段変わらないのですが、外の景色は流れるのが早くなりますので、見ていると酔うと思いますのでシャッターを降ろしておいたほうが良いと思いますよ、では、ゆっくりとお休みください」


そう言って、パカルは出ていく。


春とエリリは冷蔵庫からウコンアルジ-ルを取り出し鼻をつまんで険しい顔でグビグビと飲んでいた。





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