第二話 閻魔大王は美少女コスプレイヤー?
「ようこそ、天界閻魔の間へ、生涯を終えた事、御苦労さまでした」
ニコニコしながら明るい表情で部屋に入ってきた美少女、案内人と思わしき人物に見える。
龍之介は、「こっちは死んだばかりなのに」と、少し複雑な気持ちがあった。
家族と永久の別れをしたばかりなのだから当然だ。
このころ現世では龍之介の葬式が終わり、遺体は荼毘に付されていた。
「あの世の水先案内人ですか?」
「私が閻魔ちゃんよ」
閻魔大王様と言うより、その美少女の微笑みは天使の表現のほうが合うだろう。
腰まであるロングの黒髪、服は鮮やかな曼珠沙華が描かれた着物に陣羽織みたいなのを羽織っている。
20歳になったかな?くらいの美少女、身長は低め幼くも見える。
しかし、頭には閻魔と書かれた王冠みたいなのを被り、手には笏を持っている。
まるで美少女コスプレイヤーだ。
「えっ!あなたが閻魔大王様?本当に?これはこれは想像と違うものですね。閻魔大王が、あなたみたいな美少女とは。アニメに出てくるような夢のような美少女なのに」
「美少女とは嬉しいですが、龍之介ちゃんも恐い鬼のような形相の髭がもじゃもじゃした、おっちゃんだと思っていたのでしょ?」
口を尖らせて怒っている美少女は閻魔大王と言う神様に到底見えない。
天使に見えてしまうほど、怒った顔もまた、可愛かった。
龍之介にとっては、女性として可愛いと言うより、孫が可愛いと言う類での可愛いだ。
「閻魔大王って職業のことで、今年からは私がたまたま配属されたのよ!ちなみに、私は茨城県担当閻魔大王よ。そう言えば栃木県担当閻魔大王は、髭もじゃのおっちゃんだったはず。群馬県は、おばあちゃんだったはずよ」
龍之介は柔軟である若者文化、特に秋葉原文化も孫を通して知っていた。
むしろ、それにハマってしまい、平成の剣豪の二つ名を持っているオタクだ。
この為、死後の世界は二次元世界のごとくか、ライトノベルのごとくかと納得して難なく受け入れた。
江戸時代に確立されたと言われる死後の世界の世界観、平成の世で進化していても、なんら不思議はない。
「あの~質問なんですが、閻魔大王って何人もいるのですか?それと三途の川とかは?」
「あ~、やっぱり記憶がないのね。死んだショックで放心状態のうちに渡っちゃうのが殆どなのよ。
三途の川は、利根川の渡し船みたいなのに乗って渡ったのよ。介助者がちゃんといるから、放心状態でも乗れるのよ。閻魔大王は天界での役職の一つよ。閻魔大王が一人だったら一日どれだけの死者の対応を
しないとならないのよ?無理に決まっているでしょ。365日24時間死者対応って流行のブラック企業よりひどいじゃない。私だって寝たいし、食事だってするし、休みたいわよ。閻魔大王が過労で死んだらシャレにならないじゃない」
「なるほどなるほど、それはそうですよね、ブラック天界って地獄ですよね。納得いたしました。いきなりこのような室内だったのも納得です」
「たまに若者とかが、生死を彷徨う時に少し覗いちゃうみたいだけどね。それが生死の狭間から生還した者たちが話して、噂を流すから、お花畑とかみんなが知る存在になっちゃったんだけどね」
「なるほど・・・・・・私みたいに眠るように死んだ者は、いつの間にか渡ってしまうんですね」
「そんなものなのよ。ちなみに、三途の川の渡し賃の六文銭なんかは昔の話で、今はキャッシュフリーどころか、タダよタダ。みんな平等に渡し船には乗れるけど、たまに、泳いで渡る元気な死人もいるのよね。それに地獄の沙汰も金次第も嘘よ。現世のお金が天界で使えるわけないじゃない。それに、そんなので買収されてたら、平等に裁かないとならない閻魔大王が不正の温床になるでしょ?」
「それは不思議に思っていたんですよ・・・・・・これまた納得しました。死んでもなお学べる事に驚きです」
「納得すると言うか、受け入れるの早いわね龍之介ちゃんは。この場にまで来て、だだをこねる死者もいるのだけど、聞き訳がいい死者は好きよ、大好き」
なんとも、ラフでざっくばらんな閻魔大王の閻魔ちゃん。
想像していた閻魔大王のイメージとはかけ離れていた。