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敗者の街 ― Requiem to the past ― ※旧版  作者: Roderick Anderson (訳:淡月悠生)
最終章 After Resounding Requiem
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74.「from: Robert」

レヴィくん、ああ見えて案外君のこと気に入ってるよ……と、カミーユさんが遺した手紙には書かれていた。フランス語には苦労したけど、話すよりは読む方が得意だし、なんとかなった。


大したことは書かれていない。

僕の恋心を見透かしたかのようなお節介すぎる言葉と、兄弟仲良くね……という言葉、あとは、ローザ姉さんに宛てての言葉。




君のサディズムは僕の求めるものとは少し違ったけど、アリだと思うしギブアンドテイクを尊重する態度には感動すら覚えたよ。ロジャーさんは複雑かもしれないけど、いつまでも死んだ夫を引きずらずに前を向く潔さとともに遺憾なく欲望を発露……うんぬんかんぬん。




「……分かってないわねアイツ。私はロジャーを忘れてもいないし、引きずってもいないわ。大切な記憶として、唯一無二の愛しい相手として共に生きているのよ」


むす、と不機嫌そうになるローザ姉さん。

……おかしくない? 何でどうでもいい性癖の話に大半の分量割かれてるの?もっと言うべきことあったんじゃないの? また泣いていいのか笑っていいのか分からなくなったよ……。

まあ……カミーユさんらしいと言えば、カミーユさんらしい。

満足して旅立ったのだと、優しいトーンの絵画が告げているように思えた。そよ風が、生乾きの絵の具をゆるやかに乾かしていく。


突如、手紙を読んだブライアンが泣き崩れた。

駆け寄ろうとする僕を、ローザ姉さんが止める。


「外野は黙っておくものよ」

「うん……」


ぐっと堪え、その場に留まる。グリゴリーと何かしらやり取りをしているのを見て、なんとなく安心できた。

……ただ、もうひとつ、かなり気になることがある。


机のそばに立ってる不審者は、アレ幽霊なのかな。ここに住んでる人とかだったら申し訳ないんだけど、話しかけていいのかな。

身長低いから子供……?サングラスとマスクで顔がわからないし肌の露出が全然ない。強盗だったりしない?でもローザ姉さんは指摘しないし、僕以外に見えてる人いないんじゃ?


『やぁイオリ。手紙に書いてあったとおり、ボクの魂を象ってくれたようだね』

「へぇー、カミーユさん素養ありそうって思ってたけど、やっぱりどこかしらの血、引いてんじゃないの?」


何を話しているんだろう。イオリちゃんと話してるってことは幽霊なのかな……?


『……イオリ、ボクもさすがに故郷に戻りたくなってきた。ああ、いや、正確には美和……妹に会いたくなったんだ。モナミくんと一緒に、連れていってくれるかい?』

「全然いいよー。いおも、今回の件だいぶ修行になったしぃ」


……言語すらわからないけれど、内容も、きっと、僕が理解できる範囲じゃない。

机の上の携帯電話を見る。……グリゴリーからのメールが、つい先程届いたとディスプレイに表示されている。


まだ、どこかに繋がる気がして、手に取った。


アドレス帳を開くと、わざわざ一番上にブックマークしてある名前に目がいく。


「Levi」


……届けたい思いがあった。たとえ、彼が不要だと言っても、僕は支えになりたかった。……それに、彼が強がりなのはもうわかってる。ロジャー兄さんや、ロー兄さ……アン姉さんみたいに、知らない間に壊れられたらたまったものじゃない。


『To Mr.Levi』


文字を打つ。届くように、願いを込めて。

指が震えて、ボタンが滑る。……それでも、綴った。




レヴィくん。僕は君を、愛してる。

性別がどうとか、そんなの関係なく、僕は君自身の生き様に、君の葛藤に惹かれたんだ。

だから、君の支えになりたい。茨の道を歩く君の、えーと……とにかくなんでもいいから、助けになりたい。

返事を待ってる。




『from:Robert』


祈るように、送信する。

……やけに長い時間、目を閉じていた気がする。届いて欲しいと天に祈るような気持ちで、細い、途切れそうな何かを手繰り寄せたような気がした。


着信音が響く。


泣き腫らした目のグリゴリーが、顔をタオルで拭いている途中のブライアンが、薬指のリングを撫でていたローザ姉さんが、その場にいる多くの視線が、僕の手元に集まった。




必要ない




その言葉が、初めに綴られていた。空白と文字化けが目立つけど、繰り返し、似たようなことを書いているのだとすぐに分かった。

……彼も、伝えようとしてくれている。




ロバート。……お前がその世界にいると知るだけで、そちらにも守る価値ができた。




……それだけ、僕の善性を信じてくれたってことなんだろう。




だから、もういい。それだけで充分だ。

……ありがとう、ロバート。




また会いたい、と送る。大往生した時にそう思っていたら考えてやる……と、返ってきた。




「……そっか。せめてレヴィくんの仕事を増やさないよう、生きないとな」

「あら、いいの? 死別になってしまうのよ?」


ローザ姉さんが心配そうに聞いてくるけど、そもそも僕の初恋の人は、600年近く前に死んだ人だ。たとえ僕の一生を経たって、あの初恋よりはずっと近い時間に彼は生きていたし、魂は、今だって生き続けている。


……その魂を、その叫びを、祈りにも似たあの呪詛を、僕は忘れない。……この胸の痛みだって、忘れたくない。

たとえ彼の選んだ場所に、僕の想いに、意味も、未来も、価値すらもなかったとしても、

僕達の道は、確かに重なったんだ。

title:Dear Levi

Rob117@eCalling.kom

2017/10/31 12:24


I Love you.

I'm waiting forever and ever for you.

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