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敗者の街 ― Requiem to the past ― ※旧版  作者: Roderick Anderson (訳:淡月悠生)
第3章 Link at the Lights
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49. ある咎人の懺悔

人の気持ちなんざ、結局は誰も理解できやしねぇ。

……だがよ、それは見てくれなんざより……下手すりゃ本人が思ってるよりずっとデカく深ぇもんだよ。


知り合いに、クソ真面目な正義漢がいた。

アイツの正義は歪んだが、そりゃあ当たり前だ。アイツはいつも上っ面しか見てなかったからな。

エネルギーが善意や正義だったら自分は悪行を働いていいってのはなぁ……。……いや、ちっと俺の名前にもなったクソ野郎を思い出しただけだ。


……同じくクソ真面目な奴がいた

生まれ持ったあれそれと、それで寄せ付けたモンに悩んでたが……アイツはとにかく必死に生きてた。立派なもんだと思ってたよ。俺なら耐えられねぇからな。


ああ、普通にゃ耐えられねぇもんなんだよ。

だから想像もできねぇんだよ、俺らにはな。




その憎しみがどれだけ積もったか


どんなふうに耐えてきたのか


……どんなふうに弾け飛ぶのか




忘れんなよ、ロバート。

奴さんは一度も味方になんざなっちゃいねぇ。

いや、そもそも味方になる気すらねぇ。


……絶対に同情すんな。それは、アイツが一番忌み嫌う行為だ。


俺ァそろそろ抜け出してぇんだよ。

……情けねぇ話だが、アンタ以外は頼れそうにないんでな。




ああ、それと、……いや、これはここじゃ言えない。

今夜、また連絡する。




***




医院に向かってる途中に、こんなメールが来た。

アドルフの心の声だろうけど……何となくわかってはいる。

僕達はあくまで協力者であって、僕だって信頼されているわけでもない。


……だけど、僕は助けたいんだ。このままにはできない。

彼が復讐心に囚われているのなら、それこそ哀れだ。


──哀れ?


ピシッと、空間が凍る。

その声はどこから?


──哀れだって

──ああ、怒るよ

──彼はそういうモノが大嫌イだカら


何?この、歪な、ひび割れた声。


──復讐ではない


その声に聞き覚えがある。


──ロバート、俺は救われる気もなければ、救う気もない


その声は……


──罪人に罰を。悪には報いを。……その先にこそ、未来はある


あまりにも真っ直ぐで、あまりにもしっかりとしていて、


──安心しろ、お前の敵ではない


そうか、僕の目的も過去に向き合って、それで未来へ向かうことで……




──だがな、気を付けろ


それは、確かな怨嗟。


──領分を弁えろ、ロバート・ハリス


それは、確かな苦悩。


──道を違えるな。貴様が救うべきは俺ではない


それは、確かな拒絶。


──俺も、罪人のひとりなのだから




「……ロバート、どうした」

「えっ、あ、いや……何でもない……」


隣を歩く「彼」の翡翠の瞳に、昏い影が差したように見えた。

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