表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗者の街 ― Requiem to the past ― ※旧版  作者: Roderick Anderson (訳:淡月悠生)
第1章 Rain of Hail
33/83

32. ある罪人の記憶

「愛しているわ、カミーユ」

「僕もだよ」


嘘つき。


「あなたが一番素敵よ」

「そっか、嬉しいな」


嘘つき。


「あなたは、とても素晴らしい人ね」

「君も、とても魅力的だよ」


嘘つき。


君が好きだったのは、僕じゃないよ。

君が愛したのは、僕の作品(Sang)。僕自身じゃない。


あなたが愛したのは、わたしじゃないわ。

あなたが見ていたのはずっと、ずっとずっとずうっと……あなたの芸術に惹かれたエレーヌ(わたし)




永遠に、許さない。逃がさないわ。

描き続ければいい。気が狂ってもあなたは描き続ける。

それを、望んだのはあなたよ。




「……カミーユ、ボクは確かに協力者だ。だからこそ、伝える義務がある」


知ってるよ、サワ。


「キミに取り憑いてる霊は、ノエルとボク、そして「我が友」……3人だけだ。もう1人なんて、ボクには感じられない」


……分かってる。それでも、いるんだよ。


「エレーヌの声が聞こえるというのなら、きっと、それは幻聴。ゆっくり休みなさいな。そうしたらいつか消えるわ!」


……エレーヌは、いるんだよ。

そこで、僕を見ているんだ。


彼女は決して僕を逃がしはしない。

彼女がいる限り、僕は、芸術から逃げられはしない。


「カミーユ。それはね、エレーヌじゃないよ」


…………彼女は、エレーヌは、


僕を誑かした悪魔であり、僕を導いた女神であり、僕の、罪そのものだ。


『カミーユ。最も愛し、憎んだ男。あなたは神も悪魔も信じなかったわね。なら、救われる手立てもないわ。ずっと「Sang」に苦しめられればいい。永久に呪ってやる!死ぬまで芸術に囚われてしまえ!!』


……ノートに書き殴られた呪詛。

その呪いこそ、最高の祝福だよ、エレーヌ。


「…………そう。貴方は、愛されていたかったのね」


刻一刻と消えていく、彼女の声、姿、記憶。


だから、描いた。君の姿を、忘れないうちに。

愛しい寝顔(あくま)も、心を切り刻む死に顔(めがみ)も!


さあ、また会いに来て。

背後から抱きしめて、そして、ナイフを首に突きつけて、


──あなたとなんか、出会わなければ良かったわ


僕の心を、何度も何度も何度も何度も殺して……!

それが、「Sang」の糧になる。その苦痛が、その悦楽が、僕を狂わせる。その刹那に、その深層に、至上の美が確かに……!!


「……エレーヌは、もういないよ」


……そんなこと、僕が一番知ってるさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ