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敗者の街 ― Requiem to the past ― ※旧版  作者: Roderick Anderson (訳:淡月悠生)
序章 迷い蛾
3/83

3. 2016年春 part2

title:Spring 2016 part2

from:Keith〈Keith-BPB@GGmail.kom〉

2016/11/23 16:16

街の噂は数多くある。どこにでもある都市伝説ばかりでも、マイナスイメージのものばかりだと土地柄を疑問に思いたくなるというもので……足取りはひたすら重たかった。




新しい職場の建物は、外観からしてやる気がなかった。ツタぐらいは取り除いた方がいいと思う。

玄関に入ると、警備員のやる気がなかった。僕はそこそこ上役として来たはずなのに……。

出迎えた警察官が……とても、堅気の雰囲気とは思えなかった。


「どうも。アドルフ・グルーベです」


プラチナブロンドの髪、サングラス、強面。そして……片腕。どこの組織から抜けてきたんだろう。声にもあまりやる気が感じられない。


「……サリンジャーさんは?」


怪訝そうな声で聞かれる。……何となく、予想はついていた。


「僕が、キース・サリンジャーです」

「……ああ、なるほど……」


明らかに哀れんだ声だったけれど、まあこれくらいは慣れている。


「……30でしたっけ?」

「30です」

「……そっすか」


童顔なのは知っているから、あまり年齢については触れないでほしい。後、凝視する視線が怖い。品定めをされているような気分だ。


ちらりと鏡を一瞥する。整えてきた金髪。明るめの茶色い瞳。小ぎれいな服装。既に浮いているのが分かったが、それでも、少し楽しみでもあった。……不謹慎かもしれないが、「せっかく来たからには何かを変えてみたい」という気持ちもあった。

たとえ、命の危険が迫る選択だったとしても。


「一応、俺が担当というか色々教えろって言われてます」

「そうなんですね」


舐められると分かっていても、思わず口調が丁寧になってしまう。雰囲気というものは恐ろしい。


「まあ、片腕で暇なんで」


ひらひらと、本来なら右腕があるはずの片袖が揺れる。

……やはり舐められていたようだ。相槌も打てなかったが、次の言葉で固まった。


「後、俺が一番……アンタにしてもらいたいことがあるんです」


どこからか、漂う冷気。

思わず唾を飲んだ。ただ……どれほど嫌な予感しかしなくとも、逃げようとは不思議と思えなかった。


そうだ。()()()、僕は、正義を貫いてみせる。

……。ん?今度こそ?

そういえば、これは何回目だったっけ……。……まあ、いいさ。伝えられればそれでいい。僕が、正しいと証明できれば……それでいい。

メル友に弟が憑かれて笑うしかない【HN:Rod】 投稿日時9/16 2:56


続く沈黙にビビりつつ、声をかけてみた。


「ロバート、どうした?」

「……君に伝えたいことがあるんだ。書き留めてほしい」

「……なぁ、ロバート?」

「僕は殺されてしまったから、君が頼りだ」


電話先から届く声音は、全く別人の響きに変わっていた。

あの野郎、速攻でやられやがった。

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