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敗者の街 ― Requiem to the past ― ※旧版  作者: Roderick Anderson (訳:淡月悠生)
序章 迷い蛾
15/83

15. 2016年春 part?

そろそろ夏も近づき、季節の変わり目だからか街の空気は余計に荒れている。

かくいう僕も例外でなく、焦りと、理由もはっきりしない恐怖感に取り憑かれていた。


どんよりとした空気は、確かに気のせいじゃない。足元に絡みつき、肩にものしかかる。

この街は、やはり何かがおかしい。


そんな時、何度も見かけていた自称芸術家に声を掛けられた。こちらから話をしようとしても、不機嫌そうにどこかへ行くことが多いのに。


「……何?」

「あはは、嫌そうな顔」


何故か機嫌がいい。その割にはどことなく落ち着いているようにも見える。というか暗く重い雰囲気を纏いながら、優しく穏やかな微笑みをたたえて……

やけに、ゾッとする。


「警戒してるなら立ち話でもいいんだけどさ、君……何で人を殺しちゃいけないと思う?」

「……は?」


相手は、整った美貌に胡散臭い笑顔を浮かべたまま僕の返事を待っている。

この絵描きとは、実は嫌味の応酬でなら話しやすい。……今のように暗い海の底のような瞳で見つめられると、思わず身がすくんでしまうけど。

答えなければいけないとはわかっていても




「……罰があるから、じゃない?」


僕にも持論があった。


「……へぇ」


……どうやら、僕は、彼の興味を引いてしまったらしい。いや、いずれそうしないといけないとは思ってたんだけど。


「具体的には?」

「歴史的観点から見るに、人は闘争本能を制御できずに大義名分を求める。けど、逆に言えば「身を守る大義名分」を得ることも簡単。それが時に宗教であり、法律であり……「正義」という価値観なんだと思う」


手汗が止まらない。何となく、「Sang」の絵を思い出したけれど、年齢からして違うはずだよね。そうだよね。……たぶん。


「……君、キースって名前似合わないね」


低く、冷たい声が背筋を凍らせる。


「でも、概ね同意かな。一つ付け加えるなら……」


口角が、歪むように釣り上がる。


「殺しちゃいけない理由を、ややこしくああだこうだと説明し出したせいで人間は「生物的な本能」から目を背けだしたのさ。だからこそ、法律の隙間から人を殺し出す」


完全犯罪、という言葉が頭をよぎった。


「そして、その罪は決して可視化されない。死体が積み上がっていたとしてもね?」

「……え、何で」


勿体ぶった、大げさな喋り方をするくせが彼にはある。舞台の上に無意識のまま引きずり込まれてしまうのは、彼の浮世離れした容貌だけが原因だとは思えない。


「簡単だよ、自殺や病死、衰弱死は他殺と見なされないからさ」


彼が一歩近づく。後ずさりは出来ない。


「この世界は、完全犯罪だらけだよ」


一瞬で笑顔が消え、真顔になる。

引きずり込むような瞳に目が逸らせない。


「キースなら、考えた挙げ句「そんなの殺しちゃいけないのが当たり前」とかほざいてたね。……ロバート・ハリス君……だっけ?」


唾と疑問の言葉を飲み込み、思考を回転させる。

ロッド兄さんの言葉を思い出した。


「RかAのつく名前には気をつけろ」


身元は普通に調べられたし、洗礼名を含めてもカミーユ=クリスチャン・バルビエは確かに掠りもしない。でもこの人……もしかして偽名とかじゃ……


「簡単に信じないところを見ると、君はまだ長生きできそう」


マニキュアの塗られた手が差し出される。


「あはは、気が早いよノエル」


苦笑して……左手に語りかけている。

……差し出されていない方の右手にはマニキュアが塗られていない。

あっ、この人やばい人だ。


「……君、何者?」

「それは、関わってからのお楽しみ、かな?」


優美に笑った彼の口から、違う声色が飛び出した。


「そんな悠長なこと言ってる場合なの!? いい加減人間的なコミュニケーション能力磨きなさいな!」


……空気がピシッと凍る。


「……ごめん、ちょっとこの辺りに身投げできる建物ないかな?」

「え、あっ……ご愁傷さま?それともドンマイ?」


キース・サリンジャーの足跡を辿る役目を請け負ったことを 、心の底から後悔した。




「ロッド兄さん!!カミーユって人頭おかしい!!」

「ノエル・フランセルとはメル友だ。カミーユさんの左腕が主に依り代らしい」

「待って、何で平然としてるの!?」

「……お前もジャンヌダルクが恋人だろ」

「僕はジャンヌより素晴らしい女性がいたらその人と付き合うよ!!」

なにこれ【HN:Rod】 投稿日時9/20 0:29


途中まで書いて席離してたら、変なデータが書き込まれてやがる……。

本当いつまで続くんだよこれ……。

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