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敗者の街 ― Requiem to the past ― ※旧版  作者: Roderick Anderson (訳:淡月悠生)
序章 迷い蛾
10/83

10. 幕間

An additional information from me.【HN:Rod】

date:9/18 13:41

返信が来なさすぎるので、こちらの情報を追記しておく。



俺は普段作家をしているので、当然ながらこんな状況でも仕事はある。……で、今後のことを考えて早めに原稿を送っといたわけだが、編集者から確認の電話が来た……と思ったら弟からの電話だった。

気を引き締め、ついでにちょっと沈む。巻き込んじまった事態が厄介事すぎて、どうすりゃいいのかまだこれっぽっちも分からない。


「あ、ロッド兄さん、送ってくれた原稿読んだよ」


……いきなり編集者みたいな台詞で始めやがった。ロデリックの愛称で「ロッド」。まあ、身内からは呼ばれ慣れた名前だ。

パソコン画面から目を離して、煙草を吸い殻の溜まりに溜まった灰皿に押し付ける。


「読んでて思ったけどさ、キース性格悪すぎない?」

「そりゃあお前がモデルだから……」

「どういう意味!?」

「そのまんまだよ」


俺は一応小説家だが、今回みたいな仕事は初めてだ。ノンフィクション風のフィクション……とも言いがたいのに、ドキュメンタリーとも言いがたい。

あとロバート、こいつ自分の状況ちゃんとわかってんのか?


「警察官にしてはアドルフに舐められ過ぎだよね」

「警察の制度調べるのだるかった」

「そんな理由なんだ……」

「後年齢はお前の童顔さ考えて引き下げた」

「童顔なのは変えてくれない辺り流石はロッド兄さんだよね!」


頼む、いい加減気づけ。こちとら気が気じゃねぇんだよ。

相談は特になく、失礼な文句ばかり出てくるが、まあロバートはそんな奴だしそこらは慣れた。


「後さ、サーラって誰?」

「お前がいつも言ってる女への愛をイメージして出した」

「僕ジャンヌに対してこんなに気持ち悪いかな!?」

「正直もっとキモい」

「やっぱり交遊関係の狭さは世間をどう見るかに出るんだね……」

「殴んぞ」


ちっちゃいとこにしか文句が出ないあたり、内容にはさほど気にすることがないらしい。……ただ、記憶は混乱しまくっている。

……とりあえず、こちらも本題に入った。


「カミーユさんは何て?」


接触してるなら、よく話してそうだと思った名前を伝える。……ちなみに、そいつともメールで付き合いがある。


「来ると思った……。あのね、『流石はお兄さんだね。粘着質かつ世間知らずなのに口だけいっちょ前なあたり、特徴が完璧!』……だって。腹立つ」

「いちいち言われたこと覚えてるから粘着質って言われんだろ」


ロバートの居場所は、まだ検討もつかない。死ぬなよとは言ったが、どうなるもんか……。

……正直、下手に触るわけにもいかねぇし。下手に動いたら危険だってことぐらい分かる。


「……あ、ロー兄さんが呼んでる。またね」


……行けたのか、あの人。

それとも……元から行ける人だったのか。


「おう。あ、この前貸した本読んだか?」

「クロード・ブラン訳の『咲いた花~』かな?」


いや、それお前が好きな本だけどな。

話合わせとくか。


「それ。英訳はジョージ・ハーネスのが先だけどな」

「まだ冒頭だけど、王と賢者の子供っぽいとことか無神経なとことかちゃんと書いてて面白い」


おい、お前レポート書いてただろ。しっかりしろよ。


「あー、あいつ確かに無神経だよな」

「ロー兄さん待たせるしここらへんで。『旅鳥の唄』もちゃんと読んでよ!」


……まあ、ちょっと昔に比べて、だいぶ仲は良好になったとは思う。ガキの頃と変わらない憎まれ口が懐かしかった。

とりあえず、積んだ本の山をかき分けて本棚に向かう。……なるべく自然に合わせておくに越したことはない。


……と、背後でメールの着信音が鳴り響く。

差出人は不明。

タイトルは、また、

「ある罪人の記憶」

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