対価と改変
プロローグ
俺は見送っていた。
昨日まで俺の持っている知識と技術等の生きる為に必要な物全てを教えた少年を・・・
「お前に託す。必ずこのループを終わらせてくれ」
そう言って俺はこの世界から消滅した・・・
第一巻 一章 動き出す運命
ここはドラゴニール大陸
この大陸は四つの大国が我こそ統一するに相応しいと争っていた。
そんな大国四つ全てに囲まれた中心部の村に一人の男の子は生まれた。
その男の子が後の大陸大虐殺の当事者で永き運命の改竄をする為の旅をする者とはその時は誰も知るよしも無かった・・・
「産まれたとは本当か!!」
一人の男が扉を壊す勢いで入ってきた。
男はこの不知火村の長である。
「先ほど立派な男の子が産まれました。ですが奥さまは・・・」
そう言って移した視線の先の女性を悲しそうな表情で見つめる。
その女性は村長の妻である。
「そうか、やはり耐えきれなかったか・・・」
そう子供を授かった時出産は母子どちらかが死ぬかもしれない事が分かっていたのだ。
特に母体である自分はほぼ100%死ぬと分っていて出産したのだ。
勿論村長始め村人全員が今回は諦めるよう説得したが凛として産むと言い出産したのだ。
「俺はこの息子を立派に育てると亡き妻に龍の神に誓って約束する!!」
そして時は過ぎその時の赤子は成長し七歳になっていた。
「あら、火龍ちゃん今からお稽古?」
「おう、火龍これ食って立派な戦士になれよ」
「火龍」「火龍ちゃん」「かーくん」
少年こと火龍がいつものように稽古場に向かう道すがら色々な人が声をかけていた。
火龍は母の温もりは知らない。
何故なら母は火龍を産むと同時に火龍を見ることも抱くこともなく亡くなったのだ。
しかし火龍はその事を悲しんではいなかった。
村長の父親は厳しいが火龍を大切にしてくれている事も村の人達も火龍を大切に思ってくれている事も幼いながら知っていたのだから。
そうこれがずっと続くと信じていたのだ。
あの日までは・・・
不知火村の北に在る国朱雀国では国王と重臣達が話していた。
「不知火村に産まれた子供がこの大陸を左右すると御告げが出ました」
そう言ったのはこの国いやこの大陸で唯一の予言者である男だった。
「ならば何としても我が国に取り込まなければならんな」
予言者の言葉を聞きそう言ったのはこの国の王である朱翼だ。
「ですがあの村の者達が素直に差し出すとは思えないのですが?」
そう大臣が意見している。
「確かに、その子供は村長の息子だからな。」
そう言って柱の影から男が現れた。
その男を見て重臣達は王を守ろうと立ち塞がっている。
「おいおい、警戒するなよ?
俺は雷牙、あんたらにいい話持ってきたんだよ。」
そう言って敵意がないと両手を挙げて近づいて行く。
そして雷牙の一言が火龍の永い永い運命の歯車を動かすのであった。