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餞別と

城を出て半日後、日がすっかり落ちて暗くなった頃、僕らはジェラールに着いた。正確にはジェラール王国の入り口、正門の前にいた。


正門の前には、僕らと同じように入国を希望する者が列をなしている。


第3王子ことルイスは馬車から降りると、僕もそれに従い馬車から降りた。


「案外早く着くもんだな!」


「そうですね」


僕がポツリとそう返すと、ルイスは片眉を僅かに上げて、さも愉快だという顔をつくり、僕を見た。


「お?なんだ、レオナルド坊や。もう機嫌は直ったのか?」


「直るも何も、僕は別に…」


「そうだ、イヴァン」


唐突にルイスは僕の話を遮ると、御車のイヴァンに声をかけた。


「ここまでご苦労。これ、餞別だ。受け取れッ!」


そう言うと、国を出るときに持たされた金の約半分程をイヴァンに手渡した。





え?


半分!?


「ちょ、ちょっと待ってくださいルイス様、じゃなくてルイスさん!!!そんな、いきなり半分も渡しちゃって、これから先どうするんですか!?それにイヴァンさんもいなくなってしまっては、今後の足もなくなりますし」


「レオナルド、お前、イヴァンの話聞いてなかったのか?」


イヴァンの話。ああ、聞いたとも。僕が黙っている間、ルイスとイヴァンが何やら夢がどうのこうのとかって話していた。


「イヴァンは御者の仕事で金を貯めたら、故郷に帰って学校を建てるのが夢なんだ。」


「それはわかりますが、はっきり言ってお金は大事です。ルイスさんはずっと城内で育ってきたボンボンですから、お金の有り難みがわからないかもしれませんが、今この一時の感情で浪費するようではーー」


「ああ、金の有り難みなんて知らない。けど、俺は浪費だなんて思ってない。俺はイヴァンにの夢にかけてるんだよ。だいたい、自分が金持ちかどうかなんただの運で決まるようなもんだろ。イヴァンはとびきり運が良かったんだ。だって俺に会えたんだからな。」


僕が何か言おうと口を開きかけたところで、イヴァンがおずおずと手を開げた。


「あのぅ。すみません。私のことはお気になさらないで下さい…。お金を頂こうなんて、、、そんな、、、。私はただの御者ですから…」


するとルイスさんは、イヴァンの手を掴んで無理やり金を握らせた。


「いいから。受けとれよ。イヴァン。それから、敬語も禁止だっての」


「わかった。ありがとう、ルイス」


そう言って2人はがっちりと固く握手をした。僕はその様子をみて、呼び捨てだと仲良くなると言った意味がわかった気がした。



「それからこれはー」

おもむろにルイスは、半分になった金を僕に渡した。


半分にはなったものの、以外にズシリと重みを感じる。


これはーー何?



ルイスがグラス様に重なって見える。





餞別






そうか、僕はルイスさんにも必要ない人間ーー



「それからこれはお前が持っとけ。俺が持つよりずっと安全だろ。何しろ俺は武闘はからっきしダメだからなぁ。」


「・・・」


「?おい、レオナルド?おーい??おいって!」


ルイスは、僕の顔の前で手をブンブン振ってくる


「…もし僕がお金を持ち逃げでもしたらあなた無一文ですよ」


「無一もん?うーん。うん。いいなぁ。それ」


「はい?」


「だから、その無一文、いいじゃないか!」


ルイスは大きな瞳をキラキラと輝かせて、いかにも、ワクワク、といった表情をしている。


「なにがいいのかさっぱりわからないのですが。」


「むふふ。面白ろそうだろ!無一文っ!」


「いや、だから何が面白いンですか。わけがわかりません。」


「ふふふ。いいさ別に、わからなくて。レオナルドのような凡人平民にはわかるまい!」


ルイスはいかにも偉そうにふんぞり返ってみせた。


「…言っておきますけど、僕は無一文は嫌ですからね。このお金もしっかり管理させていただきます」


僕はそう言って、ずっしりと重たい大金を荷物に突っ込んだ。


僕とルイスはここでイヴァンと別れ、ジェラールへ入国するべく、入国手続きの列に並んだ。


列に並んでいる間、ルイスは空気になってしまう程おとなしくしていた。沈黙に耐えきれなくなった僕は、ちらりとルイスの様子を伺ってから声をかけてみる。


「あの、入国手続きって何か書類が、身分証明書みたいなものが必要なのですか?」


ルイスはそっぽを向いたまま、知らない。と答えた。


「僕は国を出るとき、そういった、身分証明書をもらっていないのですが、大丈夫でしょうか。。。」


またしても、さあね。というような素っ気ない返事が返ってきた。


「さあねって…。ルイスさんは、身分証明書はどうするのですか?」


「え?身分しょーめイショ?何それ。」


「何ってだから、入国の手続きで使うかもしれないじゃないですか」


何を言ってるか分からないというように、ルイスが首を傾げたところで、僕らは列の先頭になった。










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