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第四話 待ち望んだ再会、そして――


 北暦149年 4月29日 マリアヘラ海 豪華客船ペスカ

 パーティーホール 午後8時21分



 パーティーホールには裏社会の重鎮達や

 その家族が集まっていた。

 一見、どの人物も笑顔ではあるが、

 心ではどうやってより良い関係を築くかを考えていた。



 「これはドン・モントーヤ、お噂は聞いておりますぞ。

 何でも麻薬で大儲けしたとか?」


 「流石はモトラッド氏、お耳が早い。

 実は販売方法に一工夫しましてな」


 「一工夫……ですか?」


 「えぇ。……本当ならば教えることはないのですが、

 モトラッド氏には日頃お世話になっていますゆえ

 特別にお教えしましょう」


 「おぉっ!それはありがたい!

 ドン・モントーヤ、感謝しますぞ!」


 モトラッドが深々と頭を下げるが、

 モントーヤは気にすることはないとおおらかに笑う。

 その時、照明が全て消え、パーティーホールが

 暗闇に包まれた。

 突然のことにパーティーホールに居る

 人々が騒ぎ始める。



 「何事だ!?」


 「まぁ、落ち着きたまえ。きっと照明装置の

 不具合だろう。すぐに直るはずだ」



 モントーヤは、突然のことに混乱する

 モトラッドを冷静に宥める。

 数多くの修羅場を潜り抜けてきた彼にとって、

 この程度のトラブルに驚くほどの軟弱な

 精神はしていなかった。

 モトラッドを宥めた直後、照明が再びつき

 パーティーホールを明るく照らす。

 人々の顔に安堵が浮かんだ。



 「おぉ……ドン・モントーヤに仰る通りでしたな」


 「この程度のことで取り乱しては周りから

 侮られてしまいますぞ?

 常にどっしりと構えて何事にも動じぬように

 しなければな」


 「いやいや耳が痛い話だ」



 モントーヤの言葉に何か感じる物があったのか、

 モトラッドは何度も頷く。

 その直後、モトラッドは突然床に両膝を突く。

 そして血を吐き、前のめりに床に倒れた。

 突然のことに驚きながらも、助けを呼ぼうと口を開く。

 だが--



 「だ……か……」



 --声が出ない。それだけではなく視界が歪み、

 膝がガクガクと震える。

 一体自分の体に何が起きているのか?

 それを理解するのにそう時間はかからなかった。



 「ど……く……(おのれ、毒ガスか)」



 自分の状態を確認してすぐに毒ガスによって

 命の危機に瀕していることを理解し、

 同時にもう助からないであろうことも理解した。





 復讐の刃~その瞳に宿るのは憎しみか、

 それとも悲しみか~


 第四話 待ち望んだ再会、そして--



 同日 マリアヘラ海 豪華客船ペスカ

 ブリッジ 午後8時30分



 食料倉庫で装備を回収し、ブリッジを制圧して

 海路を変更した私は、毒ガスによって死んでいく

 乗客達の姿をモニターから見ていた。

 それは正に地獄絵図。

 もがき苦しみ、血ヘドを吐いて死んでいく。

 常人ならこの光景に耐えられず、

 胃の中の物を全てぶちまけるだろう。

 精神が破壊され、発狂する者も居るはずだ。

 だが……私はこの凄惨な光景を見ても

 何も感じることは無かった。



 「何処だアルバス、姿を見せろ……」



 船内のカメラを操作してアルバスを捜す。

 甲板・廊下・レクリエーションルームなど

 次々に映像が映り替わり、もう一度パーティホールを

 映した時、毒ガスが充満したパーティホールに人影を見つけた。



 「っ!」



 思わず息を飲む。ありえない、あの毒ガスは

 僅か十秒で人間を死に至らしめるほどの猛毒だ。

 それを吸い込んで生きているだと?

 心臓の鼓動が激しくなっていくのを感じながら

 カメラをズームさせていく。人影の正体、それは……



 「アルバス……ッ!」



 我が仇敵アルバスだった。

 アルバスはガスマスクも着けずにその場に佇んでいる。

 それを見て私は歯軋りした。

 何故だ……何故死なずにいる?この八年で

 奴は化け物になったとでもいうのか?



 「クッ……」



 毒ガスなどで殺そうとした私が甘かった。

 やはり自らの手で殺すしかない。

 私は武器を携えブリッジから飛び出した。

 カメラを見て笑っているアルバスには気付かぬまま……





 ホールの扉を蹴破り、スプリングフィールド1903を

 構えながら慎重に中に入る。

 当然ながら生きている人間は見当たらない。

 ……だが、アルバスは未だ生きている。

 あの化け物め、まさか毒ガスが効かないとはな。

 こうなれば私自らの手で奴を殺すしかない。

 チッ……余計な手間がかかるな。



 「……」



 私は周りを警戒しながら、ゆっくりと進む。

 ホールは毒ガスが充満してかなり視界が悪い。

 奴が本当に生きているのなら、虎視眈々と

 私の隙を伺っているはずだ。

 少したりとも油断は出来ない。

 気を引き締め、さらに奥に進もうとしたその時――



 「ようやく来たか。待ちわびたぞ」



 奴の声と共に、一発の銃声が響いた。



 「っ!?」



 私は反射的に飛び退き、テーブルの影に隠れる。

 それを見てアルバスは愉快そうに笑った。



 「ハッハッハッそう慌てるな。今のは貴様を狙ってはいない」


 「今のはだろう?」


 「フッその通りだ」



 言葉を交えながら相手の隙を窺う。



 「遂にこうして再会出来たが……気分はどうかね?

 私を殺したくてたまらないだろう?」


 「あぁ、そうだな。貴様の声を聞く度に貴様を

 殺したいという気持ちが増してくる」


 「フッフッそれは何よりだ」


 「今すぐ私に殺されろ」


 「まぁ、そう焦るな。因縁の対決がこのような

 無粋極まりない場所では納得できまい?

 甲板にて決着を着けようではないか」


 「それを聞き入れるつもりはない。

 ……テメェは今ここでアタシに殺されろっ!」



 テーブルの影から飛び出しスプリングフィールドを構える。

 そして引き金を――



 シュッ



 「あ?」



 ブシャアァァァァッ!!



 「愚かな」



 引くことは出来なかった。



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