第三話 迫る再会の刻
笑い無しのシリアスを書いてる時が一番楽しいぜ……
最近、自分の命が砂のように溢れ落ちていく
感覚をよく感じるようになった
それを感じる度、私はもう長くはないのだと実感する
それと同時にどうしようもない恐怖を感じてしまう
まだ死にたくない!!もっと生きたい!!
ともう一人の私が泣き叫ぶのだ
だが……それでも私は復讐を果たすために人を殺す
自らの弱いココロをひた隠しにして……
ユイカ・ウェルソンの手記 第12P
『弱きココロ』から抜粋
復讐の刃~その瞳に宿るのは憎しみか、
それとも悲しみか~
第三話 迫る再会の刻
北暦149年 4月29日 カザル帝国ベオシティ
ホテルアピーナ 午後4時53分
奴の情報を掴んだ六日後、私はロイホの
北西に位置に存在する海に面したリゾート都市、
ベオシティに訪れていた。
回収した書類によると、今日の午後8時00分に
ベオシティ港に寄港している豪華客船ペスカで
裏社会の大御所達が集まるパーティー行われるらしく、
そこにアルバスが姿を現すようなのだ。
奴を殺すチャンスがようやく巡ってきた。
それをむざむざと見逃すつもりはない。
「……そろそろ行くか」
ペスカに潜入するため、椅子から立ち上がった。
その瞬間--
「……っ!!」
胸に激痛が走った。
立っていられず、床に膝を突く。
その直後、盛大に血を吐き出した。
「ゲホッ……!!ゲホッゲホッゲホッ!!」
吐き出された血によって床に赤い水溜まりが出来てゆく。
それでも尚、吐き出される血が減ることはない。
しばらくの間、私は血を吐き出し続けた。
「ゲホッ!!……ハ……ァ……くす……り……」
そして血を吐き出す量が少しだけ減り、
何とか片腕を動かすことが出来るようになった私は
懐から大量の錠剤を取り出し、一気に飲み込んだ。
荒くなっていた息は次第に穏やかになっていき、
胸の痛みも和らいでいった。
「ハァ……ハァ……クソ……」
何とか発作は抑えられたが、体力をかなり
消耗してしまった。これではしばらくは動けない。
休息を取るしかないだろう。
……最近、発作の間隔が著しく短くなっている。
最初は週に一度だったのが、今では数時間に一度
発作が起きてしまう。
それだけ私の死期が迫っているということなのか?
だとするのなら、これ以上時間を
かけるわけにはいかない。
今日で奴との因縁に決着をつける……!!
同日 カザル帝国ベオシティ
豪華客船ペスカ エンジンルーム 午後6時28分
「これでよし……」
十分な休息を取った私は、メカニックに成り済まして
ペスカに潜入、船のダクトや機関部に
爆弾や毒ガス注入装置をセットしていた。
巡回している者は多いが所詮は素人。
爆弾をセットすることに苦労はしなかった。
「これで全てだな。次はブリッジの確保……
の前に装備を整えなければな」
そう言って立ち上がり、エンジンルームから出て
食材倉庫に向かう。
潜入する際、食材の中に服や武器などを
食材の中に隠したため、装備を整えるためには
食材倉庫に向かわなければならない。
……今更ではあるが、何故私は食材の中に
装備を隠したのだろうか?
あの時は名案だと思ったのだが、
よくよく考えてみると食材倉庫よりも
装備を隠すことに適した場所はいくらでも
あったと言うのに……
まぁ、巧妙にカモフラージュしてあるため
見つかることはないだろうが……
念のため、急いだ方が良さそうだな。
同日 マリアヘラ海 豪華客船ペスカ
甲板 午後6時57分
豪華客船ペスカは予定の時間よりも早く
ベオシティ港から出港した。
とはいえ、五分ほど早まっただけであったため
気に留める者は殆ど居無かったのだが、
ただ一人だけ愉快そうに笑みを浮かべている
男が甲板に居た。
「クククッやはり来たか……そうだよなぁ。
お前にとって私は憎い仇だもんなぁ」
男--アルバスは煙草を吹かしながら、
愉しげに顔を歪める。
アルバスは、ユイカがペスカに潜入していることに
既に気がついており、予定よりも早く
ペスカが出港したことが、
ユイカの仕業であることにも感づいていた。
「さて……奴はどんな手を使って私を殺しに来るかな?
この船ごと私を海底へと沈めるか?
船内に毒ガスを注入し、毒殺するか?
それとも馬鹿正直に自らの手で殺しに来るか?」
だが、彼はそれを誰にも話していなかった。
何故なら彼は、ユイカと再び相見えることを
楽しみにしていたからだ。
その為、彼は自分の部下にもそれを伝えることなく、
一人こうしてユイカの行動を予測しているのだった。
「楽しみだ……ただの修羅に成り果てたか?
あの時よりも強く、美しい女になったのか?
私の期待を裏切ってくれるなよ……」
二人が再会するまで、あと僅か……




