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魔法学園の補欠合格者、不遇職召喚士でも【インスタント魔法】で無双し最強を目指す  作者: 椿紅颯
SS

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SS第4話『わちゃわちゃな料理の時間!』

※この話は作品のネタバレが含まれているため、最低でも本編第25話『焦り投げかけられる、残酷な失言』を先にご一読いただくことを強く推奨します。


――――――――――――――――――――


 アリシアはリーゼへ「謝罪する意志があるのなら、誠意と行動で示しなさい」、という言葉をかけた。

 しかし、すぐには自分がどうすることが正解なのかわからず、放ってしまった失言の残酷さが頭から離れるわけがない。

 過ちを悔い、苛まれているからこそ、リーゼの気持ちはアリシアの助言を素直に受け取れずにいる。


「アキトを想っているからこそ、落ち込んでいるのでしょう?」

「……うん……」

「本当、見ていられないわよ。アロフォレット・ラロール・リーゼ――隣国のお姫様が、いつまで暗い顔をしているつもりよ」

「今、その話題は不適切でしょ」

「いいえ。誇り高き一族が惨めな姿を晒し続けるわけにはいかないでしょ。初代七魔聖の後継子孫なのだから」

「……だったら、初代様に失望されてしまったわね。相手の気持ちを軽んじた報いを受けなければ」

「あーもう、あまりにもらしくない。歯を食いしばりなさい」

「えっ――」


 アリシアは、萎れてしまった花のようなリーゼの胸ぐらを鷲掴み、今度は平手で頬を叩く。


「いい加減にしなさい」

「今の私は殴る価値もないのね」

「はぁ……! もうめんどくさい!」

「ごめんね」


 もはやされるがままに脱力までし始める始末に、アリシアも苛立ちが積もっていく。


「ハッキリ言うわ。わたしの主様は、あなたの発言を本気で気にしていないわよ」

「そんなはずがないわ。家族を失って、不幸続きの人生で……」

「アキトを憐れんでいるあなたは何様よ。彼はね、そんな困難も壁も全部ぶっ壊して今があるのよ。強靭な精神どころの話じゃない。実力だって尋常じゃない」

「……」

「リーゼ、ちゃんとアキトの表情を見ていないでしょ」

「そ、そんなことは――」

「ちゃんと見ていたらわかるわよ。だって、クラスメイトから悪意を向けられたり言葉を投げかけられていて、微塵も気にしていない顔よ、あれ。さっきだって、もう笑っちゃうぐらい気にしていなかったのよ」


 リーゼは思い出す。

 今の今までちゃんと目線を合わせて話をしていたはずなのに、表情がわからない。

 何をするにしても、アキトの生い立ちや背景だけを見てばかりで、全てが善意の押し付けであった。


「じゃあなんで殴ったのよ」

「あなたがかわいそうだったから」

「……言い訳できないぐらいに納得できちゃう理由ね」

「わかったのならいいのよ。さあ、行くわよ」




「――ねえ、本当にやるの?」

「もちろん」


 2人は女子寮へ移動し、学生用の調理室で食材を前に作戦会議を始める。


「私、料理を作ったことがないの」

「でしょうね。わたしに任せなさい。得意というわけじゃないけど、教えてもらったことを活かせるわ」

「でも謝罪の気持ちを込めてお弁当というのは……適切だとしても、料理初心者が作るのは逆効果じゃ?」

「お黙りなさい。つべこべ言わずに始めるわよ。本番は明日の朝。それまでに食べられるものを作るわよ」


 アリシアは、まず初めに、と卵を1個手に取る。


「ご飯は寮のをいただけるから大丈夫として。初歩的な卵料理といきましょう」

「う、うん」

「まさか卵すら持ったことがないなんて、さすがはお姫様」

「悪かったわね」

「恐る恐る持っている感じが笑えるけど、卵を割ってボウルに入れるのよ。ほら、こうやって」


 得意気な表情で、卵をボウルの縁に当てて割り、パカっと中身を落とす。


「なるほど。こう、かしら」

「あら上手じゃない。でも偶然。わたしはかなり練習したわよ。練習できても4回ぐらいね。食べるのも自分たちだから」

「わかったわ。こう、よね。こんな感じで――このまま片手でも大丈夫みたい。こういうことね」

(ちょ、ちょっと……これだから才能あふれる天才は好きじゃないのよ。わたし、それができるようになるまで卵を100個は割ったのよ?)


 真剣に取り組んでいるリーゼの横顔を見てアリシアは、嫉妬心を抱かずにはいられなかった。


「できるようになったわね。じゃあ、菜箸を使って卵をかき混ぜて」

「こ、こう?」

「まずは逆手持ちをやめて、普通に持つ。そして、ボウルを傾けながら」

「こうかしら」

「そうね」


 タッタッタッという音を立て――いざ、次の工程へ。


「で、できるかしら」

「できるかどうかではなく、やるしかないのよ」


 魔工技術によって開発された、調理方法は実に画期的である。

 以前までは火を原始的に扱ったり、魔法で発現させたりしていたが、発火指示が刻印されている個所に触れると――。


「火の上にフライパンを置いて、食物油を注ぐ」

「これぐらい?」

「ちょ、ちょー! 入れすぎよ!」

「え!? どどどどどうしたら?!」

「とりあえず火を消して!」


 着火の隣にある消火と記載されている個所を触れる。


「半分はこっちで使うから」

「ありがとう」

「まあ、どう考えてもまだ多いけど大丈夫でしょう」

「ねえそれ本当に大丈夫なの?」

「ええ」


 自身の感覚を疑っていないアリシアは表情を変えないため、リーゼは安心して指示に従う。


「さて、火を点けて卵を入れる。別の卵料理を作る予定だけど、卵を崩して食べるやつを作って火加減の練習をするわよ」

「アレね」

「とりあえず一気に卵を入れず、半分ぐらい入れて」

「わかっ――わあ! 跳ねる! 熱い!」

「あら、やっぱり――熱い!」

「これが料理なのね! 頑張って耐えるわ!」

「そ、そうよ! これが料理!」


 彼女たちは、真面目に料理をしているのである。

 しかしリーゼにとっては不運でしかない。

 なぜならアリシアは、事実メイドに料理を教えてもらっていたが……分量などは把握しておらず、薄すぎる記憶を頼りに指導している。

 卵を割る、火を通す、包丁で切る、煮込む――といった基本的なことはできるが、料理を完成させる技術は習得していなかった。


 だが謎の自信があるアシリアは焦りの表情を見せないため、リーゼは全てが初めてだから疑うことを知らない。


 明日の朝に完成形ができればいいのは事実であり、まだまだ時間があるとはいえ……果たして、提供できるほどの料理ができるのか……。

 お弁当の行く末はどうなってしまうのか!?

 そして、それを食べることが確定しているアキトの運命はいったいどうなってしまうんだ……――!!

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