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魔法学園の補欠合格者、不遇職召喚士でも【インスタント魔法】で無双し最強を目指す  作者: 椿紅颯
SS

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SS第2話『召喚士と友人は寮飯を食らう』

※この話は作品のネタバレが含まれているため、最低でも本編第5話『初めての寮生活、初めての男友達』を先にご一読いただくことを強く推奨します。


――――――――――――――――――――

「――わお」


 アキトは、想像していたよりも大きい寮の食堂につい声が漏れ出てしまう。


「一旦、ご飯の種類が全部乗ってる場所の前に行こうか」


 スレンに先導してもらい、軽く100人以上が腰を下ろせる椅子の数々と長机が並ぶ間を移動する。


 その間、アキトは思っていた以上に感じることのない目線にも驚く。


(教室のときみたいに、あれやこれやと言葉や目線を向けられると思っていたけど)


 一応、同学年の生徒からは懸念通りに侮蔑の目線などは注がれている。

 王女や聖女といった名立たる権力者が居ないというのに、『言葉』の方はなく、どちらかというと明るい雰囲気が漂い、それに伴い談笑が繰り広げられていた。


 それもそのはず、寮で生活している人は全員が食堂を利用することができ、その中には王女や聖女と同じような権力者の姿も。

 誰もが特別扱いされない学園だからこそ、そんな人たちも悠々自適に食事を楽しみたい気持ちを邪魔されたくはないと思っている。

 加えて風紀を守ろうとする正義感溢れる人も複数人居るため、抑えられない目線以外は統治され、あまりにも治安が良くなっているのだ。


「ここだよ」

「な、なんだこれは」


 でかでかと張り付けられている紙に、食堂のメニューがびっしり絵と一緒に並んでいる。

 数えきれない選択肢の中から自分の意思で決めなければならないわけだが、当然日替わり定食もある。

 ちなみに飲み物は隣の紙にあり、デザートはまた隣、単品サラダやサイドメニューもまた隣に。


 吟味していたら、あっという間に時間が過ぎてしまう状況に、とりあえずアキトは目線を外してスレンを頼ることにした。


「スレンと同じものを注文するよ」

「わかった」


 食事を提供される空間が視界の端に移り、目線を向けると、数人の料理人がなかなかに広い厨房を行き来している。

 そんな光景が広がる、何もかもが規格外な学園にアキトは固唾を吞む。


 スレンも迷っている時間を惜しみ、今回は日替わり定食を選択。

 待機時間はそれほどなく、提供箇所ですぐに料理を受け取り席へ移動した。


「す、凄い……」


 アキトは目の前に並ぶ料理に驚愕を露にせずはいられない。

 なぜなら、彼にとっては周りの人間が食べているものは初めてのものばかりだったからだ。

 ご飯にスープ、サラダにフルーツ。

 魚の煮たものにハンバーグ、ジュースに野菜の和えもの。


 日替わり定食に豪華な品は並んでいないが、素朴なラインナップであってもアキトが新鮮な気持ちになることは変わらない。


「――さあ、食べよう」


 このときスレンは、正面に座るアキトを見て何かを察した。


(もしかして、今まで過酷な環境で生活していたのかな……)


 流れ的には「こんな料理が珍しいの?」とツッコミを入れてもおかしくはない状況。

 いや、周りに居る男子が近くに居たら間違いなく発せられる言葉だが、スレンは様々な可能性を考慮した。


(何か事情があるのかもしれない。だったら、楽しいご飯の時間を台無しにしたくはないから余計なことは言わないようにしよう)


 食事が始まり、スレンは気配りしつつ、観察するような目線を送らないことを決める。


「ガッツすぎだよ」

「美味しくって」

「学園の中にも食堂があるんだよ。あっちはあっちで種類豊富だから楽しみだね」

「な、なんだって」


 スレンは、あくまでも自然な会話を目指す。

 しかし時折入ってくる、食事にありつくアキトを見て思うことはある。


(世の中には、僕らみたいに恵まれた環境で育つことができない人の存在を、ボクは知っている。偽善だとはわかっていても――いいや、違うか)


 スレンは、アキトと部屋で出会ったときのことを思い出す。


(ボクはアキトと同室であり、友達になったんだ。こんなボクの目を曇りのない眼差しで真っすぐ見て、偽りを感じさせない言葉で。だったら、ボクだって誠意には誠意で返すだけだ)

「そうだ、ご飯を食べ終わったらどうする? お風呂は大浴場もあるけど」

「――まあ、僕は部屋ので大丈夫」

「わかった。じゃあボクもそうするよ」


 さすがにスレンもアキト同様、周りの目線などには気づいている。

 そして会話の途中で生まれた若干の間は、アキトがした配慮であり、スレンはそれにすぐ気が付いた。


「じゃあ、どっちが先に入るか部屋に戻ったら何かで勝負して決めよう」

「先にスレンが入っていいよ」

「いやいや、ボクたちは同室なんだから譲り合いじゃなく平等に決めよう」

「――わかった。その勝負を受けて立とうじゃないか」


 アキトは軽く笑い、スレンもつられて口角を上げる。


「でもまずは、ゆっくりと食べようね」

「お、おう」

「姿勢をピンと伸ばして、お皿を持つ」

「マナーの指導とか勘弁してほしいんだけど」

「いいや? これは必要なことだよ。もしも誰かとご飯を食べに行くことだってあるかもしれないんだし」

「まさか。僕が学園でどう思われているか想像できるでしょ」

「世の中には物好きって言われる人が居てね。まあそれだけじゃないけど、緊急っていうのは緊急のときにしか起こらないんだよ」

「そのときに備えておけと?」

「そういうこと」


 アキトは当然「そんなことあるわけない」と、教室での扱いを思い浮かべながら心の中で呟く。

 自身がどんな扱いを受けるのか、どう思われているのか、どう蔑まれているのか――当の本人はそこまで気にしていないわけだが。


「さあ、次は一気におかずとご飯を食べず、バランスよく交互に食べよう」

「わかりましたよ、先生(・・)


 アキトは語尾を強調し、若干不貞腐れながら指示に従うのであった。

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