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魔法学園の補欠合格者、不遇職召喚士でも【インスタント魔法】で無双し最強を目指す  作者: 椿紅颯
第五章

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第35話『最強の七魔聖になるための道のり』

「――さて、と」


 気合十分、体力十分。

 今日から始める放課後の練習をするために、朝にも使用している練習場で準備体操を終えた。


「じゃあジョギングをして体を温めよう」

「そうだね」


 僕とスレンは、練習場の舗装された道を軽めに走り始める。


「いろいろありがとうスレン」

「約束したからね。それを果たしたまでさ」

「あの合図には驚いたけど」

「あれね。どうしようか迷ったけど、2人からの提案で剣を飛ばすことになったんだ」

「まさか、あの人に刺さったら良かった的な?」

「随分と物騒な発想だね。全然違う。背中を押したい、応援したいって提案だったよ」

「なるほど。ぶっ飛ばせって意味が込められていたのか」

「言葉を素直に受け取ってもらいたいけど、でも2人のことだ、たぶん合っていると思うよ」


 だろうな。

 状況的に敗北した後だったし、血気盛んな状況だったのだろう。

 普段の凛とした姿だったり、清楚な感じが目立つ2人だけど戦っている姿を見たら想像するのは簡単だ。

 まあ、土で汚れても立ち向かい続ける勇ましい姿が似合っているのもあるし。


「それにしても、遠くから見ていたけど【アーティファクト】との戦い――あれは凄い、としか言えないね」

「どうしても強力な魔法を使用すると規模感が大きくなってしまうからな。でも避難が間に合ってよかった」

「だね。あの戦いに巻き込まれていたら、全員が死んでいたと思う。後、黒い魔法を始めてみたけど規格外という言葉では収まらないものだね」

「完全に制御できていないから、まだまだだけどね。最近は、そもそもこういうものじゃないかって思い始めている」


 誰もが知っていて、誰もが気にしていない事件。

 あれをやった本人だけど、もしもあの魔法に人間が巻き込んでしまったら間違いなく殺してしまう。

 自分の実力不足を、心の底から反省し続けて魔力制御の鍛錬をしなければならない。

 こんな状態じゃ、もしも現状で【七魔聖】になったとしても動く大災害になってしまうだけだ。


「でもさ、練習した結果があの大事件なわけなんでしょ?」

「……そうなんだよな。実際に今回も、ほぼ同じ状況になってしまったし」

「だよね。遠くから見ていても、本能が命の危機を知らせて『逃げる』以外の選択肢を与えてくれなかったからね」

「これじゃあ、最強の魔法士より――災害の魔法士って言われる方が似合っているとまで思ってしまうな」

「笑えないけど、笑える」


 それはそれとして。


「スレン、移動補助の魔法を使いこなせるようになってるなんて凄いじゃないか」

「さすがにぶっつけ本番は避けたかったからね。授業中でも密かに練習し続けていたんだ」

「さすがだ。でも3人分も1日でできるようにするなんて、スレンも人のことは言えないな」

「少し惜しいよ。2人には魔法を発動させたけど、ボクは自力で走ってたんだ」

「おぉ、なるほど」


 やっぱりトレーニングの成果、体力は裏切らないということだ。


「でも走っていただけなのに、リーゼさんからアキトと一緒ねって言われたよ。また何かしたの?」

「いいや、リーゼが言っているのは初めて言葉を交わしたときのことを言っているんだろう。そういや初対面は凄いツンツンしてたな」

「言われてみたらそうだよね。孤高の姫様って感じだったのに、アキトと絡むようになって女の子って感じになったかな」

「なんだよその言い方。僕との出会いが悪い方向に進む原因みたいな」

「ちなみに加えるなら、アリシアさんもそうだよ」

「何が?」

「清楚な高嶺の花なアリシアさんは、今も前も全員に平等かつやさしく接していて、常に冷静沈着って印象だった。でもアキトとかかわるようになって――というより契約してから、人らしい感情が表に出始めたって感じかな」

「スレンはアリシアに詰め寄られていたって話だったしな」


 言い寄られていたのならわからなくもないのに、詰め寄られていたって話だから、外向け顔をするはずの学園で眉間に皺でも寄せていたのだろう。

 しかもクラスメイトが居る中、リーゼと口論をしていたという話でもあったし、計算高く料理が致命的という意外な一面も知ることができたから一理あるな。


 あ、思い出した。


「そういえば、今日の昼休み逃げただろ」

「いやいやいや、約束を果たしたし、ちゃんと役割を務めたでしょ。さすがに、あんな乙女の空間とグサグサと刺さり続ける、悪意と殺意に満ちた視線を浴び続けることはできないって」

「言い分は十分に理解できるが、その逃げた場所に取り残される僕はどうなるんだよ。2人で分け合うという選択肢もあったと思うが」

「無茶を言わないでよ――【加速の補助】」


 逃げたなスレン――だったら。

 魔力を1滴右手から落とし、左手のひらへ落として魔法陣を展開。


 ――発動するのは。


「【インスタント魔法】」


 宣言するのは。


限界突破(リミットオフ)


 召喚するのは――。


「【加速の補助】」


 最大限の風魔法を使用し、逃走を図るスレンへ追いつく。


「うわっ! それ卑怯だって」

「これが、頂へ至るために導き出した最強だ」

「だからこそ、練習中にそれを使うのは卑怯だって言ってるんだって! 気軽に最強を使わないでよ。てか、どうやって走りながら魔法を召喚したの」

「言ってなかったか? 魔法陣を展開させるのは、別に毎回地面じゃなくていいんだ」

「何それ初耳だよ」

「よーし、見て覚えてくれスレン。お先に」

「ちょっ! 速すぎるってば――」


 最後の方は何を言っているのか聞き取れなかったけど、たぶん文句だろう。


 それにしても、学園に入学することができて人生の流れが変わったような気がする。

 毎日が生きるためだけに依頼を受けたり、モンスターや人と戦い続けて常に死と隣り合わせの生活を送り続けてきた。

 過酷な生活が始まったあの日から、それが日常で、残飯を食らう日もあれば獣を狩っては焼いて食って腹を壊し続けた日もあった。

 人間関係もそうだ。

 今まで優しくしてもらって裏切られた回数なんて、数えることを諦めるぐらい経験し続けてきた。

 依頼を同行した人たちに囮役として見捨てられたり、酷いときは集団で痛めつけられるときもあった。


 それが今は、同室であり友達のスレンと笑い合ったりトレーニングを一緒にしたり、と楽しい時間を共有している。

 入学前の自分が、この光景を見たら『絶対に訪れることのない未来』と、簡単に片づけられてしまうだろうな。


「楽しい時間、か」


 リーゼとアリシアと出会ってもいろいろと変わったな。

 まだまだ未知数かつ恐ろしい権力者2人だけど、一緒に居て楽しいと思えている自分が居るのは確かだ。

 そういえば、3人には重く受け止めてくれているであろう、両親についてだったりの境遇を気にしていないという件、いつ伝えた方がいいだろうか。

 僕以外にとっては重い話なんだろうけど、本人である僕は強がりとか関係なしで気にしていない。

 なんだったら、誤解されているとも言える。


 まあ、すぐに伝えても信用してもらえないだろうからな、時間がかかりそうだ。


「――」


 お父さん、お母さん。

 最強の七魔聖になる目標は、まだ達成できそうにない。

 2人を恨んだことは1度もないし、それはこれからもそうだ。

 楽しかった時間の記憶はあって、微笑んで話してくれた記憶もあって、優しく抱いて包んでくれた温もりも憶えている。

 だから、誓いを果たすまであのときみたいに優しく見守っていた欲しい。


 僕は必ず、初代七魔聖にして最強の魔法士【アルネス・ノーマファス】をも超える、最強の七魔聖になってみせるから――。

ここまで読み進めていただき、本当にありがとうございます!


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