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魔法学園の補欠合格者、不遇職召喚士でも【インスタント魔法】で無双し最強を目指す  作者: 椿紅颯
第四章

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第28話『賑やかな日常が、再び訪れる前に』

 どうしてそこまで話が回るのが速いのか。

 教室へ到着してからというものの、いつもの目線を向けられていることがわかる。

 そして様々な妬みの話があるわけだけど、その中には弁当の話まで含まれていた。


「というか、僕の席に集まるのやめない?」


 リーゼとアリシアは自席に鞄を置いてきたと思えば、さも当然のように僕の席へ再集合している。

 アリシアは納得したくないけど慣れてきている自分が怖くなるけど、リーゼに関しては理解できない。


「ほ、ほら。これからも仲良くしたいって話だったし、私も仲良くしてもらえると嬉しいと思って」

「主様ったら、令嬢であるわたしだけならず、お姫様まだ口説いてしまうなんて」


 さすがに、そのわざとらしさには苛立ちを隠せない。

 絶対にいつか仕返しをしてやるからな。


「で、集まって何を話すって言うんだ」


 幸いにも孤立している席だから、邪魔になっていないのがせめてもの救いか。

 どんな人間性だとしても、教室内で魔法をぶっ放せる校訓じゃなくてよかったと安堵するばかりではあるけど。


「言われてみれば、私は雑談というものをほとんどしたことがない。だから、何を話せばいいのかわからない」

「それを言われたら、わたしもほとんどないかも」

「おい、本当に何をするために来たんだよ」


 このお姫様とご令嬢は、とことん普通ではないな。

 周りの人間も、大なり小なり差はあれど似たような境遇だろうに天と地ほどの差だ。

 あれやこれやと雑談しているし、悪口は止まらないし、チラっと見ただけでも幅広そうな交友関係が伺えるぞ。


 はっ! やり返すなら今が絶好の機会なのでは!?


「じゃあ、恋愛事情を話し合おうじゃないか」

「れれれれんあいじじょう!?」

「面白そうな話題ね。でも残念。わたしは今まで誰にも恋をしたことがないし、挨拶の礼儀として行われる手への接吻すら許可したことがないわよ」


 くっ……どんだけ努力家で堅物なんだよ。

 今まで何人もの男性が玉砕し続けてきた居るのが容易に想像できてしまうな。

 悔しがって通り過ぎそうになったけど、リーゼは動揺しすぎじゃない?


「そ、そんな話を公然の場でするのはどうかと思う」

「そう?」

「いいや?」

「もしかして世間一般的には普通のことなの……?」

「まあ、大声で話をする内容ではないけど。そこまで珍しい話でもない気はする」

「そうね」


 さすがに初々しすぎない?

 友達が居なかった僕が言うのは的外れかもしれないけど、でも、飲食店で話をしているのは何度も耳にしていた。

 それに、モンスター討伐の依頼を進行している最中に話をしている人だっていた記憶がある。

 男性でもしている人は居たけど、比較的女性の方が多かった印象があったから、てっきりそういう話を好きな人が多いと思っていた。


「ちなみに僕も、そんな余裕はなかったよ。詳しく語らなくても、想像通り生きるのに必死だったから」

「わ、私だってなかったわよ」

「そうなの? 立場的に、今の状況を含めて想像しても沢山言い寄られてそうだけど」

「20人を超えてから数えるのをやめてたわ」

「す、すげえ」


 あまりにも規模感が違う領域の話で、全く想像できない。

 王族だの貴族階級だのって、文字通り住んでいる世界が違いすぎる。


「最初は私もドキドキしていたわよ。でも、誰も私を見ていないのだと気が付いてから全て愛想笑いで済ませる流れ作業でしかなくなった」

「まあ、いろいろあるだろうね」

「そして結局、相手を決めるのは私じゃなくてお父様やお母様だから。私の意思は尊重されないし、意見が通ることもない」

「ふと思ったんだけどさ。リーゼって、その件について両親と話をしたことはあるの?」

「……ないわ」

「楽観的な考えかもしれないけど、もしかしたらリーゼのことを想う一心で行動しているかもしれないかなって。案外、結婚を望んでいないって伝えてみたらあっさり快諾を得られたりして」


 昨日の様子を見る限り、リーゼは両親との対話を避けている。

 どんな理由があるのかわからないけど、自由を欲する心が、両親への反抗というかたちで現れているかもしれない。

 残念ながら僕には理解してあげられないけど、だからこそ突拍子もない助言が離れてしまった心を繋ぎとめる一助になる可能性だってある。


 でもなぁ……今も沈黙しちゃっているし、どうなるかわからないけど。


「でもそうね。まずはやってみるっていうのもありよね」

「お、その意気だ」

「もしも事が全て上手く運んだとして。今の婚約候補者をどうするか考えないといけないわね」

「あー、そういえば居たな」

「本当に厄介よ、あの人。昨日の夜だって食事に誘われたし。断ったら、『交友関係を見直すべきだ』『聖女との付き合いも相応しくない』だって。大きなお節介よ。私の意思を操ろうとしてくるあたり、鬱陶しいわ」

「まだ立場は対等ではないのに、随分と口を出してくるのね。命令して二度と顔を出さないようにしたら?」

「その手があったわね」


 おいおいおい、どんどん話が物騒な方向へと進み始めていないか?

 権力者同士の会話が怖い、怖すぎる。


「あ」

「ん?」

「どうかしたの?」

「トイレ」

「ちょっと、女性の前でなんてことを言い始めるのよ」

「じゃあわたしも一緒に」

「それは勝手に行ってくれ。後を追ってこようとするな」

「わたし、これでも一緒の部屋で生活できないことを毎日悔やんでいるのよ。それはもう夜な夜な枕を涙で濡らすほどに」

「授業まで時間がないんだから、さっさと行かせて」


 と、僕は2人に取り合わず立ち上がって教室を後にする。


 今はこんな感じであしらうことができているけど、これからどうしたものか。

 それと同じく、これからどうするか考えるがある。

 なぜなら教室から出てきた理由は、申し出たトイレを行くためではない。


 じゃあ何かと言うと、廊下から注がれ続けた異質な悪意を向けていた人の後を追っている。

 顔に覚えはないけど学生服を身にまとっているし、部外者ということではないと思う。

 そもそも幅広く顔を知っているわけではないから、断言することはできないけど。


「――それで、なんのようですか? 遅刻にはなりたくないのですが」

「よく来てくれた少年。いや、アキトという名だったか」

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