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魔法学園の補欠合格者、不遇職召喚士でも【インスタント魔法】で無双し最強を目指す  作者: 椿紅颯
第四章

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第25話『焦り投げかけられる、残酷な失言』

 ということで放課後、朝練を行っている訓練場に集合している。

 相も変わらず、誰も居ないことに妙な安心感を覚えてしまった。


「へえ、男子寮の近くにこんな場所があったのね」

「もしかして、アキトはここで練習を?」

「毎朝、スレンと一緒にトレーニングをしているんだ。あ、そうだスレン。もしよかったら、夕方も一緒にトレーニングしないか?」

「いいね。環境や生活にも慣れてきたし」

「じゃあこの後、話が終わったらやっていくか」

「随分と仲睦まじい様子を見せつけてくれてありがとう。それ、わたしも混ざりたいのだけれど」

「スレンさえよければ」

「いいと……思います」


 いつもの感覚でスレンに話を振ってしまったけど、こんな質問を拒否できるわけがなかった。

 しかも、どこか目線が怖い感じるし。


「私も参加したいけど、用事があって無理そう」


 さて、逸れた話はここまでにして。


「じゃあ早速本題だけど――」


 ここからの内容は、スレンやリーゼ、学園長に伝えたものと一緒。

 それぞれが、それぞれの反応を示したけど、アリシアはスレン同様に動揺を露にせず話を聞き終えてくれた。

 開口初めにどんなことを言われるかと思ったが、最初の言葉は「そうだったのね」だけ。


 と思いきや、リーゼやスレンへ体を向け、深々と頭を下げた。


「リーゼ、そしてスレンくん。確かに、このような内容を人前で言うことはできなかったわね。加えて、本人以外が口外するなんて言語道断だわ。わたしは、疎外感を覚えて強引になってしまったわ。ごめんなさい」

「私の言ったことを理解してくれて嬉しいわ。でも、アリシアのそういうところは見習いたいわね」

「ボクも全然大丈夫ですよ」

「2人ともありがとう。あと、スレンくん。どうかわたしもアキト同様に接してもらえると助かる。これから長い付き合いになることだし」


 スレンは即答せず、僕の方へパッと目線を向けた。

 それは助けを求めているものだとわかったけど、僕は軽く口角を上げるしかできない。

 判断するのは本人の自由だし、気まずくて仕方がない心境も多少は理解できる。


「だったら私もお願いしたい。どうか頼む」


 一瞬だけリーゼの方へ目線を向けたと思ったら、すぐに僕の方へ目線を戻すスレン。

 今度は助けを求めているというより、もはや怯えて救援を切望しているようにしか見えない。

 ほんのり瞳に涙が浮かびあっているような感じもするし、口元を高速でビクビクと動かして「あばばばばばばばばばば」と言っているようにも見える。


 だが僕はあえて助け舟を出さずに、顎をクイッと彼女たちへ差し出し『自分で返答するんだ』と突き放す。


「……正直、恐れ多いのですが……い、いや! よ、よろしくお願いします! いや、よろしく!」

「ありがとうスレンくん」

「主が認めた友と親交を深めることができ、物凄く嬉しいわ」


 スレン、大変だろうけど慣れていってほしい。

 リーゼは関わる機会が減っていくと思うが、アリシアに関しては間違いなく長い付き合いになるから。


「話は終わったけど、この際だからリーゼに聞いてみたいことがある」

「何かしら?」

「あのいけ好かない婚約候補者について」

「あぁ……あの人は代々魔剣士の魔力ではなく剣技に磨きをかけ続けて富を築いてきた名家なの。数代にも続くうちに強力な権力も手に入れて、今では国の方針にも口を出せるほどまでになっていた」

「なるほど。たしかにそれは婚約者候補にもなるか。でもまさか、本人には剣の実力がないとか面白い話が待ってたり?」

「いいえ、残念ながら本人には類い稀な剣技の才能があるの。ちなみに私は1度も勝ったことがないわ」

「付け加えるなら、わたしも剣だけなら1本も取れないかもしれない」

「そんなにか」


 僕からしたら、リーゼとアリシアの剣技は素晴らしいものだった。

 ほとんど練習したことがない立場で恐縮だけど、天性の才に加えて努力の賜物と素直に認めることができるほど。

 それを上回るほどの剣の技術というのは、正直想像するのが難しい。


「僕は身分が凄い人たちのことはわからないけど、あの性格は置いておいて、そんな家系だったら引く手数多なんじゃないか?」

「実際にその通りよ。私に婚約候補者が居るように、あちらには愛人候補者が居るようだし」

「価値観が全くわからない」

「大丈夫、ボクも理解するのが苦しいから」

「――でも、あなたはどうしたいの? 国の命運がかかっている、という大袈裟な話ではないでしょうに。だから候補者から進展させていないのでしょう?」


 ん? でも、あのときの話だと。


「交換条件を提示されていて。『婚約を果たし次期国王の地位を賜るのなら、家の財産半分に加え、そう遠くない未来に発表される研究発表で得られる全ての収益を献上する』、と」

「……それ、現国王が引退するまではこの上ない話だけど、それ以降は自分自身のものになるだけじゃない」

「そうね。でも、お父様がご健在であるうちは国民のためになる事実は変わらないわ」


 リーゼとアリシアは、なんとも難しい話をしている。

 たぶん政治とか経済的な話なんだろうけど、まったくわからない。

 自分の勉強不足を信じたくなく、スレンへチラっと目線を向けるも同じ困惑顔をしていたから勝手に安堵してしまう。


 でも、少しだけ思うことはある。


「それって、現国王とリーゼたちが頑張ったらどうにかならないものなのか?」

「それは……」


 小難しい話をしているところに、能天気な言葉を挟んでしまったのは理解できている。

 そして、僕みたいな一般市民には想像できないほどの苦労が、上級社会みたいな場所にはあるのだろう。


 リーゼの表情が暗くなっているのを見れば伝わってくる。


「私も、アキトみたいな生き方が羨ましいと、心の底から思ってしまった。そして、『自分の力で夢を諦めず必死に生き延びてきた』『自分の人生を他人に委ねることはしなかった』、その言葉を聞いて胸を打たれたし、耳が痛かった」

「だとしたら、家族でしっかりと話し合って今後の課題を対策するべきなんじゃないの?」

「……そんなに簡単なことではないのよ。家族が居ないあなたにはわからないでしょうけど」

「リー――」

「!?」


 僕は気にしていないけど、スレンが声を大きく――するのを遮るように、アシリアが無言でリーゼの頬を拳で殴った。


「ごめんなさいアキト! 今のは完全に失言だったわ。本当にごめんなさい」


 リーゼは殴られたことよりも、発現の意味をすぐに理解し、僕へ深々と頭を下げる。


「ちょっとアリシアやりすぎだって」

「いいえ、主を侮辱されて黙っている騎士がどこに居るのよ。すぐに失言だと自覚していようが、発したこと言葉は消えない。訂正し謝っても、その事実だけは絶対に消えない」

「本当にごめんなさい……」

「大丈夫。たしかにリーゼの言う通りで、僕には家族のことで悩むことすらできない。なんせ、話すことや顔を見ることすらできないから」

「……」

「僕は何度でも同じことしか言えないけど。辿り着きたい未来があるのなら明日を見るより“今何をやるか”が大事だと思う。とりあえず、僕は気にしていないから顔を上げて」


 目線を下げたまま申し訳なさそうに顔を上げたリーゼ。

 本心から気にしていない、と伝えても、この状況では意味がないだろう。

 こういう展開になる予感がしていたから、気にしていないし隠してない。

 でも、面倒なことになりそうだから情報が広がるのを避けたかったんだ。


「場の空気を悪くしてしまってごめんなさい。私は先に帰るわね」

「リーゼ、明日も話そう」

「気を遣ってありがとう」


 それだけを言い終えると、ずっと目線を下げ続けているリーゼは逃げるように足早で去っていった。


「アリシア、僕の代わりに怒ってくれてありがとう」

「当然のことをしたまでよ」

「でも、さすがに平手打ちだったんじゃない?」

「いいえ。今のリーゼには拳をねじ込まなくちゃ気が済まなかったもの」

「随分と物騒な発言するじゃん。でもさアリシアだったら、いや、アリシアだけが、今のリーゼが抱えている悩みを理解してあげられるんじゃない?」

「友人が居ないという条件ではそうかも」

「違うでしょ。リーゼとアリシアは元々仲が良かったんじゃない?」

「……わたしも人のことを言えた立場ではないわ。アキトの言う通り、わたしにとっても最初にできた友達だった」


 まあそうだよね。

 アリシアがリーゼに対する態度は、数回ほど言葉を交わした程度のものではなかったし、対等に話ができる唯一の存在な雰囲気があった。

 それはどちらか一方にではなく、お互いに。


「僕が口を出すべきじゃないことなんだろうけどさ。友達が苦しんでいるなら、少しぐらいは寄り添ってあげてもいいんじゃない?」

「……はぁ。わたしの主様は、他人に興味がないと思ったら同室の友達ができたって聞いて驚いたし、今度は人の交友関係に口を出すし。とんだお人好しね」

「それ逆に、僕の第一印象どうなってるの?」

「どうあれ主様の頼み事を断ることはできないわ。久しぶりに友人同士で話してみるわ」

「ああ、頼んだ」

「せっかく一緒に鍛錬できると思っていたのに、残念。またの機会を楽しみにしているわね」


 アリシアがそう言い終えて振り返りそうになったとき、ふと思い出す。


「アリシア、剣技も凄かった。そしてあの魔法、綺麗だったし威力も申し分なく出ていた。ちゃんと練習の成果が出ていたよ」

「ふふっ。主様に褒められちゃって、嬉しいわ。でも、次は容姿とかも褒めてくれると嬉しいのだけれど」

「善処します」


 と、だけ言い残し満面の笑みでスタスタと小走りで去っていった。

 それを見送り、隣へ目線を向けるとスレンが盛大に息を吐いて胸を撫で下ろしている。


「――はぁ……やっと気が抜けたよ」

「これからたぶん、あんな感じのが続くから慣れてくれ」

「だよねー。慣れるまでは心臓がいくつあっても足りなさそうだよ」

「そしてさっき、そんな状態でも言葉を発しようとしてくれてありがとう」

「いいって。アリシアさんほどじゃないけど、友達のためだから」

「くぅー! ありがとうスレン! 今日も明日もこれからもトレーニングを一緒にやろう!」


 スレンとの友情を感じ、慣れない感情が押し寄せてきて制御できなくなった僕は「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」と叫びながら走り出す。

 学園に入学してまだ4日目だけど、試験を受けようと思って本当によかった。


 お父さん、お母さん。

 僕は今、楽しく学園生活を送れています。

 だからどうか見守っていてください。

 小さい頃のあの日に「最強の七魔聖になる!」――という約束を、必ず実現させてみせるから。

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