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魔法学園の補欠合格者、不遇職召喚士でも【インスタント魔法】で無双し最強を目指す  作者: 椿紅颯
第四章

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第23話『アーティファクト窃盗事件と布石』

「お昼休みは、あとどれぐらい残っていますか?」

「残り20分だね」


 やっと呼吸が整ったであろう学園長は、腕時計を確認してくれた。


「長くなりますが、生い立ちが関係していまして――」


 リーゼとスレンに話した内容を偽りなく伝える。

 そして、今の今まで積み重ね続けてきた鍛錬と試行錯誤を加えて。


「――なるほど。そんな過去が……キミは十分に立派だ。よく今まで頑張った」

「ありがとうございます。自分でも、よく今まで生きることができたなと思っています」

「だがしかし、あの苦痛に今も耐え続けているというのか――いや、今のキミにはもう苦痛ではないのだろうが」

「そうですね。ちなみに学園長は、欠落者がどうして透明な魔力操作しかできないかはご存じですか」

「体が属性に適応することができないからだろう?」

「ええまあ、そうです。だから空気中に漂っている魔力をそのまま扱うことしかできない。ですが、該当者だから試せることがありました」


 生まれながらにして背負ったハンデを受け入れ、魔力操作の鍛錬を重ねていくうちに辿り着いた答え。

 説明に加え視覚的な情報で伝えるため、7つの魔力線を出現させる。


「な、なんだそれは」

「透明なのは既にご存じの通り。火、水、光、雷、風、闇――と、常識通りに適正はありませんし変換することができません」

「じゃあ、どうやって6つの属性を扱っているのだね」

「僕は試行錯誤を重ねていくうちに、とある仮説を立ててみました」


 そう、これこそが欠落者である、稀にしか生まれない人間だけができること。


「漂っている魔力は透明であり、魔法使用者の体内に魔力変換の起点がある――これが世界の常識です。ですが、漂っている魔力事態に属性があり、適応している魔法使用者は無自覚に属性魔力を抜き取っているのではないか、と」

「……」


 学園長は眉を細め、思考を巡らせている。

 それはそうだ。

 僕は今、世界の常識を覆す発言をしていて、それを肯定するのであれば定説となっている常識を疑わなければならないのだから。


「……であるなら、欠落者は透明な魔力を選び取って扱っているにすぎず、逆に言うならば全属性を選び取ることもできる。そういうことかね」

「凄いですね。まさにその通りです」

「ぜひとも違うと言ってほしいのだが――全属性の魔力を混ぜたら黒い魔力になり、先ほど見せてくれた魔法は形状だけを炎に寄せた――ということはあったりするのかな」

「本当に凄いですね。ご明察通りです」


 僕は冗談抜きで瀕死で必死に考えて辿り着いた答えだというのに、学園長は頭の回転が速いとかいう話じゃない。


「そして全属性の魔力を体内に貯めこみ、魔法を召喚する際は漂っている全属性の魔力を巻き込む――ああなるほど、だから先ほど魔法は先に発動させておいた方がいいと警告してくれたのか」

「そこまで理解が及ぶのなら、僕の説明は不要そうですね」

「思考が追い付いたとしても……あまりにも凄まじい話だ。だが、キミの覚悟は余すことなく伝わったよ。本当に、伝説の魔法士を超えるのだね」

「はい。でも残念なことに、既に亡き当人と力比べが叶わないのですけど。だからこそ、最強の七魔聖になることが目標なのです」

「――……夢を壊すようで悪いのだが、今のキミなら明日にでも叶うと思うのだが。現に、初代七魔聖であり伝説の魔法士はキミと同じ召喚士であり、代々空席なのだから」


 やはり、実質的に六魔聖が続いているという噂は本当だったようだ。

 あまりにも強大な魔力を扱え、誇張なしに他の追随を許さないほど圧倒的な実力を誇っていたから、別の枠は初代の弟子が席に着いたものの、召喚士だけは常に空席と聞いていた。

 それもそのはずで、そもそも弟子をとることがなかったようだし、今の僕みたいな鍛錬を最初に編み出した人なんだから、弟子が居たとしても脱落者続出だったと思う。


「もしそうだったとしても、ポッと出てきた16歳の学生がその座に就いたとして。反感を買うならまだしも、敵を多く作りすぎますから」

「それはその通りだね」

「だから僕は実績が欲しいのです」

「……これは運命のいたずらかもしれない」

「はい?」

「機密情報だから、学園内で把握している人間は数少ない。だが、有事のときを考えたらキミに伝えておくべきと判断した」


 学園長は眉を細め、空気間がキリッと切り替わる。


「つい半年前、実はアーティファクトが窃盗される事件が起きてね」

「え? アーティファクトって、初代七魔聖が作ったあの?」

「ああそれだ。厳重に管理され、移動をするということがない代物だから警備管理者か管理関係者の内部的犯行だと言われている」

「でもそれって、かなりの出来事じゃないですか。盗まれた件もそうですが、それら関係者って権力者などの家系が担当してるのですよね」

「そうだね、国の政策にも直接口を出せるような権力者だったり、各国を代表するような実力者だったり。だからこそ表立って話が出回らなかったり、明らかに捜査が難航している……というより、意図的な遅延行為や証拠隠蔽が行われているという話だ」


 あまりにも横暴で職権乱用な話だ。

 半年もの前の事件が明るみになっていないということは、既に事実は闇に中に葬られている可能性が高い。

 他国とも共同で保護対象になっているアーティファクトがその様子だと、学園の秩序同様に国の腐敗も相当なものだと伺える。

 だとすれば、今すぐ七魔聖にならないという選択はあながち間違いではなかった。


「だが、キミにとっては他でもない絶好の機会ということでもあるようだね」

「その言い方ですと、学園に脅威が迫ったら対処を任せてもらえるということですか?」

「したいのだろう? 力比べを」


 学園長は、本当に僕をよく観察している。

 いいや少し違うか。

 どちらかと言えば、学園長は自分と同類を見つけたような笑みを浮かべている。


「はい、是非ともよろしくお願いします」

「あとは私が全力を出して学園を結界で守ることぐらいか」

「その際は頼りにさせていただきます」

「まあまあ、そもそも学園にアーティファクトが持ち運ばれる危険が訪れないに越したことはないのだがね。生徒を守る身としては」

「たしかに」

「さて、そろそろ戻らないと次の授業に遅れてしまうね」

「わかりました。ちなみに残り何分ぐらいですか?」

「あー、残り5分だね」

「え」

「さあさあ、将来の夢を追いかける少年よ。明るい未来のために走れ走れ」

「わかってますって。それでは失礼します」


 随分と他人事で僕を送り出す学園長に、何かを言い返せる時間がないのが悔しい。

 僕は走り出し、走って走って走って。

 自分では時間を確認できないもどかしさを噛み締めながら、ただひたすらに教室へ向かって必死に駆ける。

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