【14話】キングオーガ
メンバーの死に真っ先に反応を見せたのは、赤髪の魔法使い――レティ。
「このおおおおお! よくもバークを!!」
怒声を張り上げながら攻撃魔法を次々に放っていく。
狙いは正確で、すべて体に命中している。
もし相手がアークオーガだったら、とっくに死んでいる頃だろう。
でも、足りない。
キングオーガは、まるでダメージを受けていなかった。
相手はとてつもない強さを誇るモンスター。アークオーガとは格が違う。
レティの魔法では火力不足。ダメージを与えることができない。
「死ね! 死ねえええええ!」
それでもレティは攻撃をやめない。
意味がないのにも関わらず、火属性魔法を撃ち続けていく。
キングオーガは腰を屈めると、おもむろにバークの顔面を指先でつまんだ。
いったいなにをし始めたかと思えば、なんと、レティ目掛けてそれをぶん投げた。
風を切り裂きながら、目にもとまらぬ速さで飛んでいく。
「――!?」
その攻撃は予想外だったのだろう。
レティは対応ができない。
防御も回避も間に合わず、剛速球で飛んできたバークの顔面がモロに体に当たった。
レティの体が吹き飛ばされる。
「お姉様!!」
地面に横たわるレティのもとへ、シアンは急いで駆け寄った。
泣きながら、必死になって回復魔法をかける。
「すぐに治しますから!」
しかし手遅れ。
先の一撃を食らったことで、レティは既に息絶えていた。
「いやだよ! うわあああああん!!」
レティの体に覆いかぶさるようにして、シアンが泣きじゃくる。
悲痛な叫び声が上がる。
戦っている相手が人間だったら、シアンの声に感化されて次の攻撃をためらっていたかもしれない。
しかし相手はモンスター。
そんな感情など持っていなかった。
キングオーガは近くにあった大岩を軽々と持ち上げ、それを投げつけた。
狙いは泣きじゃくっているシアンだ。
しかし覆いかぶさっているシアンは、飛んでくる大岩に気づかない。
レティとシアンの体が、大岩に押しつぶされた。
あっという間に銀鏡の牙の三人は死亡。
残るはリーダーのアレンだけとなった。
アレンは仲間想いのリーダーとして知られている。
討たれた仲間たちの仇を討つのかと思ったが、
「こんな相手に勝てっこないじゃないか!!」
逃亡を図った。
泣きべそをかきながら、必死になって足を動かしていく。
冒険者ギルドでアンジェに見せたあの自信たっぷりだった彼は、もうどこにもいなかった。
しかしキングオーガは、アレンを見逃さなかった。
八本ある腕のうちの一つを振り下ろす。
逃げるのに必死になっていたアレンは上から降ってくる攻撃に気づかず、声を上げる間もなく潰された。
こうして、Sランク冒険者パーティー銀鏡の牙は、四人全員が全滅。
戦闘が始まってから五分と経っていないうちの出来事だった。
「次は私の出番ね」
銀鏡の牙が全滅したことで、当初の約束通りアンジェが依頼を引き継ぐことに。
「さぁて、楽しい殺し合いをしましょうか」
アンジェが前に出ていくと、キングオーガは大きな叫び声を上げた。