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【13話】Sランクパーティー


 一行はモンスターフォレストにやってきた。

 

 太陽に照らされた深緑の森を歩いていく。

 目的であるキングオーガは、ここの最奥にいるらしい。

 

 先頭を歩くのは剣士のアレンと、武道家のバーク。

 後ろには、魔法使いのレティとシアン。

 そして少し間を開けて、アンジェとリラという隊列で移動している。

 

「みんな止まれ!」


 足を止めたバークが、隣にいるアレンへ顔を向けた。

 

「前方にアークオーガがいるぞ。どうするアレン。迂回するか?」

「いいや。こいつは倒していこう。本番前のウォーミングアップだ」


 アレンの言葉に銀鏡の牙のメンバーは、そろって頷いた。

 

「という風にしたいのですが……よろしいですか?」


 アレンの問いかけはアンジェに向けてのものだった。


(……なんでいちいち私に聞くのよ)


 どうぞご勝手に、と気だるい声を上げた。


「ありがとうございます。……さぁみんな。狩りの時間だよ」


 近距離アタッカーのアレンとバークが駆け出した。

 素早い動きで、アークオーガへと近づいていく。

 

「【戦神の加護】」

 

 魔法使いのシアンが付与魔法を発動。

 パーティーメンバー四人の攻撃力と防御力を上昇させる。

 

「【ジャイアントファイアボール】」

 

 もう一人の魔法使いレティは、大きな火の玉を放った。

 燃え盛る火の玉は、アークオーガの胸部へ直撃する。

 

「オオオオ!!」


 【ジャイアントファイアボール】を受けて、アークオーガを叫び声を上げた。

 痛みに滲んだ声だ。大きなダメージを受けている。

 

「ナイスだレティ! いくぜデカブツ!」


 地面を蹴ったバークが跳び上がった。

 ダメージを受けている胸部へ拳を叩き込む。

 

 よろめいたアークオーガがバランスを崩す。

 両足の膝を地面について、膝立ちとなった。

 

「これで終わりだ!」


 二人の攻撃によって大きく損傷している胸部に、アレンが剣を斜めに斬り上げる。

 

 その一撃はアークオーガの堅牢な肉体を断ち切った。

 真っ赤な血が噴き出る。

 

「オオ……オ……」


 うめき声を上げて、オーガは地面に倒れた。

 

 四人のコンビネーションを活かした戦術で、銀鏡の牙はアークオーガを討った。

 反撃のスキを与えない、一方的な戦闘だった。

 

「お見事でした!」

 

 アレンとバークが戻って来るなり、リラは銀鏡の牙へ賞賛の言葉を送った。

 

「ありがとう。それでブラッディマスクさんは、どうでしたか?」

「いいんじゃない」


 どうでもよかったので思ったことをそのまま答えると、

 

「よっしゃ!! SSランク冒険者に褒められたぞ!!」


 アレンはガッツポーズ。大喜びした。

 

 他のメンバーも、アレンに続くようにして喜びの声を上げる。

 

(あー、うざ。早く先に進んでくれないかしら)


 浮かれている銀鏡の牙の四人を、アンジェは冷めた目で見ていた。



 一行はモンスターフォレスト最深部に到達した。

 いつキングオーガが出てきてもおかしくない。

 

 緊迫した雰囲気で足を進めていく……アンジェ以外は。

 

(キングオーガ! どんなモンスターなのかしら!)


 やっと強敵が見られる、ということでアンジェだけはウキウキ。

 遠足気分だった。

 

「……止まってくれ」


 緊張で震えているバークの声に、一行は動きを止めた。


「いたぞ。やつだ……キングオーガだ」


 一行の前方には、鬼の顔をした人型モンスターが立っていた。


 体躯はアークオーガと同じくらいだが、筋肉量が段違いに多い。

 それを覆うの金色に光る分厚い皮膚。火力の高い攻撃でないと、ダメージを与えるのは難しいだろう。

 腕は八本もあり、それぞれがうねうねと動いていた。

 

 ついにあのキングオーガと対峙した。

 銀鏡の牙のメンバーは顔を強張らせる。

 

 それでもリーダーのアレンだけは違った。

 笑みを浮かべていた。

 

「今からあいつを僕たちが倒してきます。ちゃんと見ていてくださいね、ブラッディマスクさん」

「私の出番がないことを祈っているわ」

「みんな……行くぞ! こいつに勝って僕たちの実力を証明してやるんだ!」


 アレンの激励が、怖気づいていた銀鏡の牙のメンバーの表情を変えた。

 

「やってやるぜ!」

「必ず勝つわよ!」

「私たちのパーティーが最強ってことを見せてやります!」


 銀鏡の牙の四人は、先ほどのアークオーガのときと同じ戦略を取った。

 

 アレンとバークがキングオーガへ向かっていく。

 

 シアンは、【戦神の加護】を発動。

 パーティーメンバーのステータスを強化した。


「【ジャイアントファイアボール・クワトロバースト】」


 レティが大きな火の玉を放った――その数四つ。

 狙いはキングオーガの胸部だ。

 

 爆音とともに着弾。

 四つすべて直撃した。

 

「やりぃ!」


 レティはガッツポーズする。

 

「いいぞレティ! 次は俺の番だ!!」


 キングオーガの右の足元にいるバークが、胸部めがけて跳び上がろうとした、そのとき。

 

 キングオーガが右足を上げた。

 

「逃げろバーク! ヤツはお前を踏みつける気だ!」

 

 アレンがそう言った直後、バークに向けて右足が振り下ろされる。

 恐るべきスピードだ。

 

 バークは回避しようとしたが、範囲外に逃れられたのは首から上だけ。

 それ以外は間に合わず、踏みつぶされてしまった。

 

 突然の惨事に銀鏡の牙の三人は言葉を失う。

 驚愕としていた。

 

 キングオーガの足と地面の隙間から、血が流れ出ていく。

 千切れた首から上が、地面をコロコロと転がった。

 

 それがバークの死を、銀鏡の牙の残った三人に強く突きつけた。

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