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063 聖光

 エルザは自らの能力(ギフト)についての説明(かなり推測を含むが…)をアリエルたちに対して(おこな)った。そしてこの能力(ギフト)の有無こそが教会から『聖女』と認定された理由であることも…。

「なるほどな。まぁ、お前が助かりたいがための嘘八百という可能性も大いにあるが、やりたいのならやってみろ。だが、それによって減刑されるとは思うなよ」

「もちろんです。それでは発動します」

 エルザの『聖光』が発動し、周囲が柔らかな光で満たされた。眼を刺すような鋭い光ではなく、十分に明るいのに(まぶ)しくないという不思議な光だった。


 ところが、光が治まったあとのエルザの表情が曇っていたのはなぜだろう。

「黒い(もや)が取り切れません。もっと長時間、限界を超えて発動しないとダメかも…」

「ふっ、やはり嘘か…。誰にも見えない黒い(もや)とは考えたものだ。いくらでも誤魔化せるからな」

 アリエルはエルザのことを馬鹿にしたように嘲笑(あざわら)ったのだが、それも当然だろう。元々(教会が喧伝(けんでん)している)『聖女』の能力など一切信じていなかったからである。


 エルザは顔を(うつむ)かせて数秒考え込んだあと、すっと顔を上げて、何かを決意したかのような表情でこう言った。

「ドラド警部。もしかしたら私は命を落とすかもしれません。そのときは処刑の手間が(はぶ)けたとでも思ってくださいませ」

 この言葉のあと、すぐに再び『聖光』が発動されたのだが、先ほどよりも光量が強く、かつ時間も長かった。エルザの表情も一回目のときとは異なり、かなり苦しそうにしていた。

 その後、光が治まってからエルザの姿を見たアリエルとエルビスは絶句することになる。明るいピンクブロンドだったエルザの髪が老婆のような白髪に変わっていたからだ。


「はぁ、はぁ、せ、成功しました。全ての(けが)れは間違いなく消え()せましたので、ご安心ください。良かった…」

 この言葉を発したあと、エルザは気絶した。

 アリエルとエルビスは無言で顔を見合わせるしかなかった。黒い(もや)(エルザによれば『(けが)れ』らしい)を見ることができないので、何も実感がわかなかったためである。ただ、彼女が白髪になるほどの力を使ったことだけは確かだった。


 …


 翌日の朝食後、再び全員がアリエルの部屋の中に集合した。

 なお、昨夜失神したエルザはそのままアリエルの部屋のベッドの上へと運ばれた。もちろん、床に倒れたエルザを抱えてベッドまで運んだのはエルビスである。不埒(ふらち)なことをしないようにアリエルの監視下だったが…。

 ちなみに、アリエルはケイトと同じベッドで寝ることとなった。また、エルザの分の朝食についても追加で用意されたのは言うまでもない。


 今日の会議はアリエルの次の発言から始まった。

「エルザよ。今朝の私に黒い(もや)は見えるか?」

「いえ、全くございません。ローレン警部補には少し()いてますけど、その程度であればすぐに浄化できますよ」

「だったら、ここでもう一度『聖光』を発動してくれるか?」

「はい」

 エルザが『聖光』を発動しようとしたはずだったが、なぜか何も起こらなかった。エルザ本人も不審な顔になっていたので、意図して発動しないというわけでもないらしい。

「あれ?変ですね。もしかしたら能力が枯渇したのかも…。永続的なものなのか、一時的なものなのかは分かりませんけど…」


「髪色に関係しているのかもしれないな。白髪からピンクに色が戻れば復活するかもしれん。まぁ、単なる仮説だけどな」

 そう言ったアリエルに向かってエルビスが不思議そうな顔で問いかけた。

「エル君、昨日は信じていなかったみたいだけど、今日は違うみたいだね。いったいどうしたの?」

「いや、ここしばらく頭痛に悩まされていたんだけど、それがきれいさっぱり無くなったんだよね。あと極めつけとして、毎日のように見ていた悪夢が昨夜は出てこなかったってことが大きいかな。久しぶりにぐっすり眠れたよ」

「つまり『聖光』によって(けが)れが(はら)われたってことになるのかな?」

「うん、多分ね。さすがに信じざるを得ないかなって…」

 昨日、『聖光』発動の現場にいなかったラルフとケイトがよく分からないって顔になっていたため、エルビスがその二人に昨日の経緯を説明した。そう、情報共有は重要なことなのだ。


「はぁ~、なるほどなぁ。警部殿がめちゃくちゃ恨みを買っていたってのは納得できる話だぜ。できれば俺のも(はら)ってくれるとありがたいんだけどな」

 ラルフの言葉に困り顔になるエルザだった。もしも能力が回復しなければ、実質的に『聖女』は死んだということになるのかもしれない。この世界、悪いモノを(はら)える人間が彼女以外に居るのかどうかも不明である。


「それで警部殿。彼女の処遇はどうするんですかい?」

「うん、決めたよ。この女には死んでもらう」

「「「はぁ~?!」」」

 エルザ本人は覚悟を決めた表情になっていたが、ラルフとスペード兄妹(きょうだい)はあまりにも予想外の発言に驚きの声を上げることになった。この話の流れであれば、当然助けるという方向へ進むのだと思っていたからだ。

 しかし、アリエルとしてはエルザを殺すつもりなど全く無かった。『殺す』ではなく『死んでもらう』という表現が何を意味しているのか、その真意がこのあと語られることになる。


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