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005 能力の検証

 盗賊団の規模はかなりのものだった。頭目の下に組頭(くみがしら)が5人、その組頭(くみがしら)の下にそれぞれ5~6人の部下がいるようだ。

 総勢は28人。なかなかの大集団である。

 なぜ騎士による討伐隊が編成され、駆逐されないのだろう?

 その理由は夕食のときに判明した。

「我が団はある貴族の庇護下(ひごか)にあるのさ。上納金を納めなきゃならんのは業腹(ごうはら)だが、まぁ仕方ない」

 なるほど。やはりこの国は腐っているようだ。貴族全員を皆殺しにすることをあらためて決意したアリエルであった。


 夜中、寝たふりをしていたアリエルは静かに身体を起こした。

 トイレに行くかのように、フラフラと寝ぼけた様子を偽装して、男たちの寝室となっている洞窟奥の部屋へと向かった。

 なお、アリエルは大広間の一角で一枚の布をかぶって寝ていた(寝たふりをしていた)。新参者なので、まだ寝床が用意されていなかったのだ。

 彼女は考えていた。とりあえす、人数を減らしておくか…と。

 さすがに28人は実験体として多すぎる。不測の事態を避けるためにも、10人程度に減らしておこう…と。


 戦闘力の高そうな人間を優先的に殺しておくことにする。したがって、5人の組頭(くみがしら)は最優先目標だ。

 ただし、頭目だけは除外する。彼には貴族との繋がりを吐いてもらわないといけないので。

 組頭(くみがしら)たちには小さいけれど個室が用意されていた。もっとも扉などは無いのだが…。

 空気塞栓(そくせん)症による殺人ではあるが、自然死にも見えるだろう。突然、心臓麻痺で死亡ってやつだ。

 さらに、その過程で様々な実験を(おこな)った。


〇 能力の到達範囲は半径5mの円内である。

〇 空気を生み出す地点に意識を集中すると、その付近の詳細な状況を透視できる。これによりクモ膜下や大動脈内への空気生成が可能となるのだ。

〇 対象との間に障害物があっても能力を発揮できる。たとえ壁越しであっても…。

〇 空気の成分の中で、特定の成分のみ生成できるかを実験してみたところ、窒素、酸素、二酸化炭素等、空気中に元々存在する気体ならば生成可能である。

〇 ただし、空気中に存在する割合の少ない元素については、ある程度の量を生み出す際、かなり疲労する(例えば、二酸化炭素)。

〇 一酸化炭素のような特殊な気体は生成不可だった。

〇 アルゴンは生成可能だが、ネオンやヘリウムは生成不可。これは空気中に存在する割合が余りにも微量であるためと思われる。

〇 窒素の生成は極めて容易であり、それにより(酸素供給の途絶による)消火を行うことができる。

〇 逆に酸素を生成することで、より一層燃え上がらせることも可能。


 なお、一度に生成可能な空気量については検証していない。一時的にでも能力が枯渇するのを恐れたためだ。

 しかし、10ml(ミリリットル)を少し超えるくらいの量があればそれで十分なのだ。それこそが空気塞栓症の致死量なので…。


 翌朝の騒動は見物(みもの)だった。

 18人もの人間が一度に死んでいたのだ。しかも、戦闘力に優れる組頭(くみがしら)たちもその全員が死んでいたので、単なる暗殺者の仕業とも思えない。

 前日と異なる点は小汚い小僧を仲間に加えたことくらいだ。


 大広間には頭目を始めとする10人が集合し、アリエルと対峙している。つまりは裁判である。いや、容疑者に対する尋問か。

「おい、小僧。まさかとは思うが、てめぇが夜中に仲間たちを殺しまくったんじゃねぇだろうな?」

 彼女は無言で頭目の脊椎(せきつい)付近に空気を生成した。突然、生じた空気の圧力によって背骨は上下二つに分断され、下半身へと続く神経が切断された。

 頭目は立っていることができなくなり、へなへなと地面に崩れ落ちた。

「なっ、何をしやがった!」


 残りの9人についても同様の処置を(ほどこ)していったアリエル。

 内心でこれは使えると思っていた。敵を殺さずに無力化できる良い方法ではないか…と。

 これで、あとはゆっくりと能力の検証ができる。ニヤリと笑ったアリエルの顔を見た男たちは、そこに悪魔を幻視したことだろう。

 蹂躙劇の始まりであった。


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