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神の花嫁ー運命の時ー  作者: 和路(わんじ)
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神の花嫁ー運命の時ー

桜が満開に咲き誇り、桜の花の香りが色濃く香る中を美巫は歩いていた。

ただただ、綺麗だと桜に見惚れながら歩いていた。

そんな美巫の前に黒髪の目元は華夜月の尊に似ている男性が現れた。

「やっとこうして会えた。この時を待っていた・・・」

「えっ?」

「そなたは知らず、気付かずであったな・・・」

「そう・・・。初めて見掛けたのはそなたがよく行く神社であったな」

「涙を流しながら、どうか助けてくださいと、どうしてこんな目ばかり

に会うのですか?もう、限界です」

「そう、神に祈り話しかけていた時、私は別の神の遣いでその神社を訪れていた」

「そして、そなたのその姿と、魂の美しさに私は一瞬で魅了されてしまった」

「しかし、そなたは神々を視れる力はその時はなく、どうしてあげる事も

出来なかった」

「そしてそなたが神社を去る時にもう二度と会えない、何もしてあげられない

そう思った時、そなたの魂の光りに引き寄せられ、そなたの魂に取り込まれ

てしまったのだ」

「取り込まれた事は、予想外であったが、そなたと共にいられる事が心から

嬉しかった」

「しかし、そなたは運命の下、ツイン・レイとの出会い、関わりを持ち天の意志も

味方にして、あっという間に契りを交わしてしまった」

「そなたの魂の中で、こんな思いをするのなら出会わなければ良かった。どうして

そなたと契りを交わすのが、自分では無いのだろうと思った」

「辛くて悲しくて、それでもそなたには気付いても貰えない。そんな中、不幸中の

幸いなのか、ツイン・レイと契りを交わして、霊力が上がった為、やっとこうして

存在を示し、そなたに伝える事が出来た」

「我は桜の木の神の一人、(せん)と申す。春を告げる神の遣いで神社を訪れていた」

「そしてそなたも我と同じ春を・・・いや・・・春の風を感じる」

「春の風?」

「そうだ、暖かく包み込む癒しの風だ」

「ああ、やはり辛い・・・。もう遅いのか・・・」

「ごめんなさい、私の事をそんなに思って下さっているのに、その思いには

答える事が出来ません」

「そうである事は分かっていた。そんなそなただから我は愛したのだ」

「しかし、そなたの魂の中から出られぬ状態で、神としての寿命を待つのはとても

耐えられそうに無いし、嫉妬で壊れるかも知れぬ」

「何とか、私の魂からは離れる事は出来ないのですか?」

「もう、無理なのだ。そなたに魅了され一緒に居たいと願った想いが強過ぎた為に

我の神としての力が自分に働き、魂と共にある事になってしまった」

「それ程に強い力には、同じかそれ以上にそなたの事を憎しみ嫌わねば覆えす事は

出来ないし、そんな事は永遠に無理な話だ」

「後はそなたの幸せの為、我の神としての全ての力をそなたの魂に注ぎ込み、我が

無に帰るしか、もう我は救われない」

「だから、どうかせめて我の神としての全ての力を受け取り、我を楽にしてくれ」

「そなたの魂の中で眠りに付くのなら本望と言うものだ。神の力としてそなたと共にある

事が出来るからな」

「お願い!私の為にそんな事はしないで、何とか方法を探しましょう」

「やはり優しいの・・・。しかしもう、方法など我が言ったことしかないのだよ」

「そんな・・・」

「ああ、もう時間が無い。美巫よ、どうか幸せになってくれ・・・。いつか、我の様な

神がいたと思い出してくれると嬉しいよ」

「実は、もう春を告げる神に頼んでいたのだ。もう直ぐ我は光りの玉となり神の力の

塊だけになり、我は眠りに付く」

「だからその前に、最後にそなたと話をして、この想いを伝えておきたかった」

「すまない、それ程にもう、我は限界を迎えていたのだ」

「せめて最後はそなたの役に立ち、幸せになってもらう為なのだ」

「やめてください・・・。私なんかの為にどうか死なないで・・・」

「どうしたらいいの・・・」

「もう良いのだ、我はそれで満足なのだ。どうか我をもう、楽にして欲しい」

「さあ、時間だ・・・。仙よ、本当に良いのだな」

「はい、春を告げる神よ、ではお願いします」

「では、始める・・・」

そう、春を告げる神が告げると、仙の身体全体が光り出した。

「だめ・・・。お願いやめて・・・。私の為に死なないで・・・」

美巫はもう、止めどもなく溢れ出す涙で言葉が詰まり、嗚咽をあげた。

「ありがとう。我の為に泣いてくれて・・・。最後にそなたと話を出来て想いを

伝えれて良かった・・・。我の最初で最後に愛した春の優しい我の女神」

「そなたの幸せを祈っているよ。我の神の力の塊が少しでも役立てれば嬉しい」

そう言うと、仙の身体全体が眩いばかりの光りの塊に変わると、美巫の身体全体に

降り注ぎながら吸い込まれる様にして消えていった。

「どうして・・・。どうして私なんかの為に・・・。ごめんなさいごめんなさい」

美巫は泣きじゃくりながら、同じ言葉を言い続けた。

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