神の花嫁ー運命の時ー
第三章 ー偽りの神と神界決戦ー
五柱の神の一人に変幻している鬼を滅する為、一行はまず人間界の
出雲の国へと向かった。
丁度、出雲では年に一回の神々の集まる会議の真っ最中である上に
会議の後は、天、すなわち神々の住まう神界で、神々達が戻った後
もう一度神々が集まり、無事に会議が終わった事を祝い、お祭りが
開かれるのが通例であり、どちらにも重要な役職である五柱の神は
参加するのは決まっていた。
だからまず出雲の会議の様子を見て五柱の神の一人に変幻している
鬼を確認して見つけ出す事から始める事にしていた。
神に変幻して、神々に紛れる事の出来る程の力を持った鬼である上
唐突に乗り込んだとしても、他の神々が信じてくれる可能性も低く
確実に逃さず、他の神々との波風を立てない為にも、皆と相談して
決まった事だった。
出雲に到着した一行は、他の者に気付かれない様に姿隠しの結界を
張り、会議の様子を覗いた。
「しかし、何故ここ最近、こうも幸のエネルギーが足りなくなって
いるのだろうか?」
「こうして、管理をしてくれている五柱の神が揃っておるのに何故
人間界には届いておらぬのだ・・・」
「そう言えば、五柱の神の一人はいつからか、姿が見えずに行方が
分からぬと騒ぎになっておらなんだか?」
「いや、それは解決したと聞いた。それに現にあそこに五柱の神は
揃っておるではないか」
「確かに揃っておるな・・・」
「何やら少し、頭がぼーとしてきた。いかんな、会議中なのだから
集中せねばな」
神々の話しを耳にした一行は、その話題となっている、五柱の神の
いる方を見た。
そこには確かに五柱の神達が並んで鎮座し、出雲の神と話しをして
いる姿が見える中、あの亡くなったはずの神がそこにはいた。
驚いた一行だが、すぐに探している鬼が変幻した姿だと納得した。
そして、もうひとつ一行は気付いた事があった。
それは、鬼を中心として幻惑の澱んだ力が放たれていた。
だからこそ、神々を惑わし、思考回路も麻痺して鬼としての存在を
隠して、紛れ込めていたのだった。
「どうする?かなり厄介な事になっているな・・・」
月凰神が神妙な面持ちで一声を放った。
「我に考えがある。神々を愚弄する鬼をこれ以上のさばらせない」
光陽神が怒りを滲ませた静かな声で言った。
「この後、会議が終わった神々が天の神界へ戻ってくる時、清めの
花を一人ずつ渡して行く」
「五柱の神は、出雲の神といつも幸のエネルギーの分配調整の話し
を決めて戻ってくるから、神界へは最後になるはずだからその前に
他の神々の穢れを払い、洗脳を解く」
「そして、五柱の神の欠如を認識してもらい、我が五柱の神の一人
に立候補する」
それを聞いていた華夜月の尊は、不安を口にした。
「確かに清めで洗脳を解くのは良い考えとは思うが、鬼もそのまま
大人しくしているとは思えない」
「分かっている。我を誰だと思っている?太陽神の一人だ」
「鬼が又、洗脳の力を使うことも百も承知。その時、美巫の祈りの
力と我の太陽神の力で、神々の前で正体を暴く」
「そうすれば、神々の洗脳は完全に解けるし、奴を倒せる」
「出来るだけ多くの神々の目の前で明かす事が勝因になるはずだ」
「なるほど・・・。分かった」
「さあ、この太陽神と共に鬼退治を始めるぞ」
そして、計画は動き始めた。




