マシューズ・マリネン 06 護衛戦闘
しかしある場所で馬車隊が止まった。
マシューズたちがどうしたのかと思っていると、護衛隊長のゴパーが駆け込んでくる。
「あんた方に頼みたい事が出来たんだが?」
「どうしました?」
「この先にフラーモベアがいるんだ。
しかも1匹なら俺たちで始末するんだが、3匹もいやがる。
さすがにアレが3匹となると、俺たちも無傷ではすまない。
念の為にあんたたちにも戦闘に参加して欲しい」
それを聞いてサイラスがうなずく。
「フラーモベアですか・・・」
フラーモベアは熊型の魔物でレベルは80ほどだ。
熊型だけに格闘能力も高く、その名の通り、火炎呪文も使う。
確かに三級の組合員たちでは少々手に余るだろう。
それが3匹ともなれば尚更だ。
サイラスがマシューズに質問をする。
「マシューズさん、ソーニャはフラーモベアと戦った事はありますか?」
サイラスの質問にソーニャが答える。
「はい、過去に何度かございます」
「ではうちのリリアンに戦わせていただいてよろしいですか?
リリアンはフラーモベアとは戦った事がないので、経験を積ませたいのですが?」
「ああ、全然構わないよ」
マシューズがうなずいて返事をすると、サイラスがゴパーに話す。
「ではゴパー隊長さん、このうちのリリアンがフラーモベアの相手をさせていただきます」
「それは構わないが、そりゃそのジャベック一体で戦うって事かい?」
「ええ、その通りです」
「相手はフラーモベア3匹だが、それでいいのかい?」
「ええ、大丈夫です。
初めての相手ですが、戦闘経験を積ませるのには丁度良い相手でしょう」
「そうか?では任せた」
「では、リリアン、行きなさい」
普通のジャベックであれば、もっと具体的に命令をしなければ行動を起こせないが、ホンザ賢者製作のリリアンは状況判断にも優れていて、今の会話で自分の成すべき事を理解する。
「はい、承知いたしました」
サイラスに命令されたリリアンは馬車を降りると、すぐさま魔物に向かって走り始める。
そして数歩走ると、そこからは航空魔法で空を飛び、相手に向かって行く。
魔物に近づくとリリアンは氷結魔法で攻撃を始め、空から攻撃を続ける。
相手もリリアンに対して火炎を放ってくるが、リリアンは優雅に避けて反撃をする。
ある程度相手が弱ってくると剣を抜き、魔物に襲いかかる。
弱っていた魔物は次々とリリアンに倒され、ほどなく魔物たちは全滅する。
それはまさに馬車隊が追いついて皆が見ているうちに見る見る間に起こり、全てのフラーモベアを倒すのに1分もかからないほどだった。
それを見ていたゴパーが呆れ返ったように叫ぶ。
「何だありゃ?あのジャベックはあんな強かったのか?
フラーモベア3匹をあんなにあっさりと倒すなんてよ!」
「ええ、でもそちらにいるソーニャはもっと強いですよ」
「何てこった!こりゃ護衛の俺たちも形無しだな!」
「いえいえ、護衛の皆さんが守ってくださるので、我々も安心して旅が出来るのです。
頼りにしていますよ」
サイラスがそう言うとゴパーも豪快に笑って答える。
「ははっ!こりゃ全くどっちが頼られているんだかわからねぇが、まあ残りの旅も安心だな!
とりあえず雑魚は俺たちが片っ端から退治するから、あんたたちは休んでいてくれ」
「ええ、よろしくお願いします」
その後は順調だったが、いよいよ明日はサザンへ到着するという日に、突然馬車が止まると、叫び声が上がる!
「ぐわっ!」
「うぎゃ!」
マシューズとサイラスが何事かと外を覗くと、山賊らしき者たちが先頭の馬車を襲っている。
「これは・・」
どうやら護衛の何人かがやられたようだ。
それを確認した山賊の頭らしき者が得意げに馬車隊に通告する。
「がっはっは!
どうやら俺たちの先制攻撃が効いたようだな?
こっちは20人、そっちの護衛はこれで10人って所か?
降伏するなら命だけは助けてやるぞ?」
その山賊頭の言葉を聞いて、マシューズとサイラスはお互いに無言でうなずくと馬車を降りる。
マシューズとサイラス、ソーニャとリリアンは山賊たちに立ちふさがる。
そしてマシューズとサイラスが山賊たちに言い放つ。
「大口を叩くのはそこまでにしておいた方がいいぞ!」
「ええ、あなた方は運が悪いですね」
その二人の姿を見て山賊頭が動揺する。
「何だ!貴様らは?魔道士か?」
「そうだよ」
「覚悟するんですね」
「はっ!魔道士がどれほどのモンだってんだ!
こっちにはこれがいるんだぜ?」
そう言って山賊頭がジャベックを二体出す。
そこには身長2メルはあろうかという煉瓦型のジャベックが二体出てきた。
「こいつらはレベル130の戦闘ジャベックだ!
いくら魔道士と言えども、こいつらには敵うまい!」
それを見たサイラスがマシューズに話す。
「マシューズさん、こっちのジャベックはリリアンが相手をするので、そちらのジャベックはソーニャが、残りの山賊どもは私達が相手で良いですか?」
「ああ、それで良いよ」
「では参りましょう」
「ああ、ソーニャ、あのジャベックを倒せ!」
「はい」
「リリアンはこっちのジャベックです」
「かしこまりました」
マシューズとサイラスの命令により、直ちにソーニャとリリアンは攻撃に移る。
そして魔道士の二人は使役物体魔法の呪文を唱える。
「さて、ではアニーミ・クヴィンデク・エスト!」
「アニーミ・クヴィンデク・エスト!」
数がいる山賊の場合は基本的にタロス魔法が最も有効だ。
しかもこの二人は正規の魔道士の上にレベルもマシューズは100、サイラスは80を超えているので、出した戦闘タロスもレベル60以上で数も50体だった。
合計100体の戦闘タロスが山賊たちを囲む。
その状況に怯んだ山賊たちにサイラスとマシューズが話しかける。
「さ、降伏するなら今のうちですよ?」
「ああ、痛い目に会う前にな」
「な、な・・・ええい!かかれ!者ども」
「おお~」
山賊たちはタロスに襲いかかるが、二人の出したタロスの方がレベルでも数でも圧倒的に上だった。
そして山賊たちの頼りのジャベック2体はまたたくまにソーニャとリリアンによって破壊された。
「そ、そんな・・・」
あっという間に山賊たちは壊滅し、降伏する。
それを見ていた護衛隊長のゴパーが笑いながら話す。
「やれやれ、一時はどうなるかと思ったが、あんた方がいてくれたおかげでたすかったよ」
「いえいえ、後の護送はお願いしますよ」
「ああ、任せてくれ・・・と言いたい所だが、ちょいと数が多すぎるな?
さて、どうするか・・・
ああ、それとすまないが、うちの奴らを治療してくれないか?」
「ええ、もちろんですよ」
サイラスとマシューズが矢傷に倒れた者たちを治療魔法で治す。
幸いな事に重症な者はいなかった。
その間に山賊たちはタロスに押さえつけられて、護衛隊の組合員たちにキリキリと縛られて並べられていた。
その輸送と扱いに関して馬車隊長と護衛隊長と副護衛隊長、そしてサイラスとマシューズの5人が話し合う事になった。
「さて、この連中はどうしましょうか?」
「まあ、馬車に乗せる訳にもいかないし、縄で縛ったまま歩かせるしかないが・・・」
「でもそうすると、それに合わせると馬車の速度が遅くなりますよ?」
「いっその事引きずっていくか?」
「しかしここからサザンの町までは悪路だ。
町に到着するまではこいつらも全員持つまい」
「そうだな、そうすると護衛隊を二つに分けて、護衛と護送に分けるしかないか?」
「それも護衛が半減するからな・・・
もし、この後で魔物や盗賊が出た時の事を考えるとあまり良くないな」
「やはり引きずっていくか?
別にこんな奴ら町に着くまでに死んでしまっても構うまい」
みんなで相談をしていると、サイラスがある案を出す。
「どうでしょう?私が大きな橇型のタロスを作りますよ。
それを馬型タロスで引くのはどうでしょう?」
「ああ、それがいいよ。
それで見張りにソーニャとリリアンをつけよう」
「ではそうしましょう」
サイラスが大型の橇型のタロスを作り、そこへ山賊どもを放り込む。
そしてその連中の見張りに周囲にタロスたちをつける。
それをマシューズの作った馬型タロスが引っ張る。
お世辞にも乗り心地が良いとは言えないが、単に運ぶのが目的で、相手は山賊なので問題はない。
「さて、では行くか?」
「ええ」
こうしてマシューズたちの乗った馬車隊は山賊たちを連行してサザンの町へと向かった。
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