マシューズ・マリネン 05 リリカ共和国への旅
この3年間、マシューズは魔道士になったらまずは1番にしようと考えていた事があった。
それはホンザ賢者の国を訪ねる事だった。
マシューズはその目的をサイラスに話した。
「ホンザ賢者の国を訪ねてみるよ。
実は魔道士になったのも、そこへ行くのが目的だったんだ」
「なるほど、リリカ共和国ですね?
それは興味深いですね」
「うん、ちょっと個人的な事情があってね。
以前から行ってみたかったんだ」
その言葉にしばし考えるとサイラスが申し出る。
「・・・どうでしょう?マシューズさん、
私も一緒に行っても良いでしょうか?」
「え?サイラスも?」
「ええ、私もあの国には以前から興味があって是非行ってみたかったのですが、今まで機会がなかったのですよ。
それに一人で行くのはどうにも気が進まなくてね。
しかしマシューズさんと一緒なら旅も楽しくなりそうです。
いかがでしょうか?」
「うん、僕もサイラスが一緒なら楽しくなりそうだから別に構わないよ」
「それはありがたいです。
いつごろ立つ予定なのですか?」
「そうだね、まだ旅支度をしていないから2・3日後ってとこかな?」
「それは丁度良かったです。
私も支度にはそれ位はかかりそうですから」
「じゃあ、3日後って事で良いかな?」
「ええ、ですが旅はどうやって行くつもりですか?
飛んで行きますか?
それとも馬車か徒歩で?」
マシューズもそうだがサイラスも正規の魔道士だ。
魔道士同士ならば航空魔法で空を飛んで行く事が可能だ。
「う~ん、そうだね。
別に急いでいる訳じゃないんで、出来れば僕は馬車でゆっくりと途中の町なんかも楽しみながら行きたいんだけど・・・それでいいかな?」
「ええ、別に構いませんよ。
むしろ私もその案に賛成です。
私も見聞を広げるために常日頃他の町を見てみたいと考えてましたからね」
「じゃあ、三日後に」
「はい」
三日後にマシューズとサイラスは旅に出る事となった。
ロナバールから直接リリカ共和国行きの馬車はなかったので、途中のサザンの町で乗り換える事となった。
そこまでは2週間の日程だ。
馬車の席は三日前にサイラスが取っておいてくれた。
マシューズたちを目に留めた駅馬車隊の隊長が話しかけてくる。
「おや?兄さんたちは魔法使いかい?」
今回の旅はのんびりと楽しみながら行く予定で、余計な摩擦をさけるために、二人とも魔道士章や組合登録証はつけていないが、服装がマシューズは戦魔士のような格好、サイラスはもろに旅の魔道士の格好をしているので、そう思われても仕方がない。
質問を受けたサイラスが素直に答える。
「ええ、二人とも正規の魔道士ですよ」
「ほう?魔道士かい?
そりゃ良かった。
正規の魔道士だったら護衛割引が利くがどうする?
魔道士だったら馬車代が無料になるぜ?」
護衛割引というのは、魔法使いやレベルの高い組合員などが私用で旅馬車などを使う場合、いざと言う時に護衛の役目も果たす代わりに馬車代が割引になる事だ。
普通は半額程度だが、この馬車隊の場合、正規の魔道士は無料になるようだ。
「護衛発生の条件は?」
護衛割引には条件がある。
魔物が出れば、即戦うという訳ではなく、魔物の種類や相手によって戦う条件があるのだ。
「正規の魔道士なら、この馬車隊で手に負えない魔物が出た場合と、盗賊が出た場合は相手によらず必ずだ。
それと戦闘で負傷した者の治療だな」
「ではルーポやアプロ辺りは相手をしなくても良いですね?」
「ああ、グラートやゴブリンチーフだって無視していいぜ。
今回の護衛隊は、その程度は物ともしない連中だからな」
グラートと言うのは大きな蜘蛛の魔物でレベルは20ほどだ。
その程度まで護衛隊が退治してくれるのならば、道中ほとんどの魔物は相手をしなくて良い事になる。
自分たちが必要になるのは盗賊が出た時か、よほどの魔物が出た時だけだろう。
そう考えたサイラスはマシューズに尋ねる。
「そうですね・・・せっかくだからそうしますか?
マシューズさん?」
「ああ、そうだね。
無料になるんだし、そうしようか?」
「わかりました。
ジャベックの馬車代はどうなりますか?」
二人は1体ずつジャベックを連れていた。
マシューズはソーニャを、サイラスはマシューズから買ったリリアンと名づけたジャベックだ、
他のジャベックは二人ともグラーノ化して持っていたが、この二体だけは旅の間も旅の仲間として連れて行く予定だ。
そして本来だったらジャベックも一人分の金額を取られる。
そのジャベックたちを見ながら隊長が尋ねる。
「そいつは戦闘用かい?」
隊長に聞かれてサイラスがうなずいて答える。
「ええ、汎用ですからもちろん戦闘も出来ますよ」
「なら、そいつらも無料でいいさ。
食い扶持が増える訳じゃないしな。
多少場所を取る程度なら構わないさ。
今回は馬車3台でそんなに客もいないしな。
いざという時は頼りになりそうだ」
「ええ、うちのジャベックたちは強いですよ」
サイラスがそう答えると、隊長も笑って答える。
「ああ、期待しているよ」
こうしてソーニャたちジャベックも無料となった。
マシューズとサイラスが馬車に乗り込むと、今度は護衛隊の隊長らしき人間が挨拶に来た。
「いよう!魔道士の客ってのは、あんたたちかい?」
「ええ、そうですよ」
「俺はこの馬車隊を護衛する戦団「ブラックウルフ」の団長で、ゴパーというもんだ。
一応、あんたらも護衛部隊になるかも知れないんで挨拶をしておこうと思ってね」
「それは御丁寧に」
「二人とも正規の魔道士だって?」
「ええ、そうです」
「ひょっとして組合員なのかい?」
「ええ、まあ」
「何級なんだい?」
「二人とも2級です」
組合員も2級ともなれば数は少ない。
何しろ中級組合員の最上位で、レベルは90以上だ。
これより上は1級以上の上級者しかいないのだ。
マシューズの答えに護衛隊長が驚いたように答える。
「おいおい、護衛隊長の俺が3級なのに、客のあんた方が2級かよ?
まあ、いざという時には頼りになりそうで助かるがよ。
それじゃ、雑魚は俺たちに任してくんな」
「ええ、お願いします」
旅は順調に進んだ。
日中は進み、夜は大抵は村や町の馬車置き場付きの宿に泊まった。
もっとも金のある者は、その宿屋に泊まったが、金のない者や節約したい者は、そのまま馬車泊りだ。
馬車の中に泊まる分には無料だからだ。
マシューズたちは特に金に困っている訳でもないので、普通に宿に泊まっていた。
途中、大した魔物は出ずに、その全てを護衛部隊のゴパーたちが倒していた。
ゴパーたちブラックウルフは三級のゴパーを隊長に、四級が二名、五級、六球が六人ずつの構成で、15人の戦団だった。
大抵は定期馬車隊の護衛をやっているそうで、魔物退治は慣れたものだった。
その手際の良さにマシューズたちも安心して旅を続けていた。
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