マシューズ・マリネン 04 ロナバールでの生活
ソーニャに従い、仮の主人となったマシューズはまずはカトーインスローへと行った。
ケット・シーに囲まれるのはマシューズにとっても初めての事だったが、そこでケット・シーたちに歓迎されてマシューズは一安心をした。
「いらっしゃいニャー」
「カトーインスローへようこそなのニャ~」
コルプトユージャントをするまでもなく、ケット・シーたちはマシューズに友好的だった。
ケット・シーに歓迎されたマシューズを見て、ソーニャも満足そうに言った。
「私の要望を受け入れてくださってありがとうございます。
これより私たち4名はマシューズ様をホンザ二世様と認め、生涯御仕えしたいと思います」
そう言ってソーニャ以下4体のジャベックが深々とマシューズに頭を下げる。
「ああ、こちらこそよろしく」
こうしてマシューズは正式にホンザ二世としてソーニャたちの主人となったのだった。
ソーニャたちを手に入れたマシューズはまずは自分のレベル上げをした。
ソーニャのレベルが250という尋常ではないレベルだったために、上げ屋として利用すれば、自分のレベルが大幅に上がる事がわかったからだ。
まずは近くの迷宮で自分のレベルを100まで上げて、組合員2級となった。
そして2級になると故郷に別れを告げて、古都ロナバールへ向かう事とした。
自分の町の近くにある迷宮ではこれ以上のレベル上げは難しいと判断したからだ。
ロナバールには有名な迷宮が2つもあるし、何と言ってもアースフィア広域総合組合の総本部がある場所だ。
初等訓練所や中級訓練所へ入所した時には行った事があるが、今度はしばらくそこに腰を落ち着けて自分を鍛えなおすつもりだった。
父や兄たちは便利なマシューズが町からいなくなるのを残念がったが、マシューズは自分の代わりにとレベル100の使空魔法士級ジャベックを三体と、母にもレベル50の汎用ジャベックも2体置いていったので、文句は言われなかった。
ロナバールに着いたマシューズはまずは自分を迷宮で鍛えた。
ソーニャたちにレベルは上げてもらったものの、それは単にレベルが上がっただけで、十分な鍛錬はしていなかったので、迷宮で実戦をやって鍛えた。
またマシューズはここでサイラスという友人に出会った。
彼もマシューズと同じく2級になったばかりで、マシューズと同じくジャベックを多数つれていたので、気が合った。
マシューズはそれまで人と組んで戦う事はなかったが、サイラスとは何回か組んで迷宮に行ってみた。
サイラスはのんびり屋ではあったが、実に気が利く友人で、一緒に迷宮に行っても気兼ねがなかったので、マシューズはそれまでやった事のなかった、商隊護衛なども一緒にやってみた。
二人とも魔法使いの上にジャベックを多数所持していたので、商隊護衛は問題もなく終わった。
やはり気心が知れる仲間と言うのは良い物だとマシューズは思った。
そしてそのサイラスに連れられて行ったロナバールのゴーレム街にマシューズは驚いた。
自分の町にもゴーレム屋はある程度固まった場所にはあったが、この町のゴーレム街の規模と大きさはマシューズの想像を超えていた。
マシューズはそこを気に入り、たびたびそこへ行くようになった。
ある時、マシューズは信用できる友人となったサイラスにこっそりとある事を打ち明けた。
「ねえ、実は僕は使ってないジャベックをいくつか持っているので売りたいのだけど、どこか良い場所はないかな?」
一応自分もゴーレム街に通っているために、ある程度の店は知っているが、自分よりも遥かにゴーレムに詳しいサイラスに聞いてみたのだった。
「そうですね。
当てのある店はいくつかありますが、どのようなジャベックを売りたいのですか?」
「うん、実はレベルが145の魔道士級ジャベックとレベル100の使空魔法士級ジャベックを売りたいんだけど、どれ位で売れるかな?」
そのマシューズの説明にサイラスが驚く。
「え?そんな高レベルのジャベックをですか?
そうですね・・・実際に見てみないと何とも言えない部分はありますが、それならば買う場合は、レベル145の魔道士級ならば金貨350枚前後、レベル100の使空魔法士級なら金貨200枚前後で売っているでしょうから、売るとなれば、それぞれ金貨250枚から300枚前後と、金貨130枚前後という所でしょうかね?」
その金額にマシューズは少々驚いた。
「え?そんなに高く売れるの?」
「ええ、もちろんジャベックの状態や他の性能にもよりますがね。
使空魔法士級ジャベックでも珍しいですが、レベル145もある魔道士級ジャベックなど非常に珍しいですからね。
まともな店で売れば、それ位の金額では売れるでしょう」
「そうなんだ?」
「ええ、正直な話、私が買いたいくらいですよ。
もし現物を見て、納得がいったならその金額で良いならば本当に私が買いますよ?」
「じゃあ実際に見てみる?」
「ええ」
マシューズはその場でジャベックを見せた。
レベル145の魔道士級ジャベックとレベル100の使空魔法士級ジャベックだ。
そのジャベックを見たサイラスが驚く。
「これは素晴らしい出来栄えのジャベックですね?
鑑定してみても良いですか?」
「うん、むしろして欲しい」
マシューズに乞われてサイラスは鑑定する。
サイラスは正規の魔道士な上に、鑑定魔法も習得していた。
「なるほど、確かにレベル145の魔道士級なのは間違いないですね・・・
もう一つの方も間違いなくレベル100で使空魔法士級ですね・・・
しかもこれは・・・」
「どうしたの?」
「これはひょっとしたらホンザ賢者の作品ではありませんか?」
そのサイラスの推測にマシューズも驚いた。
「え?わかるの?」
「やはりそうですか?
いくつか私が知っている特徴があったので・・・
それに実は以前から気になっていたのですが、ソーニャたちもそうなのではないですか?」
「うん、実はそうなんだ。
サイラスはホンザ賢者を知っているの?」
「ええ、私は自分でジャベックを作れるようになるのが目標ですからね。
有名なジャベック作りの名人は色々と調べて存じているのですよ。
過去現在を問わずにね。
例えばノーザンシティのユーリウス氏、名工バッカン氏など・・・
ソウイッチ・ホンザ賢者もその一人です」
「そうなんだ・・・」
「マシューズさんはこれをどうして手に入れたのですか?
差し支えなければ教えていただきたいのですが・・・」
「うん・・・実は僕の町のジャベック屋で偶然見つけて買ったのだけれど・・・」
「え?ではそこにはまだ同じ物が売っていますか?
それならば私も是非買取たいのですが?」
「いや、僕が買ったので全部だったからもう売っていないよ」
別に嘘を言っている訳ではない。
ソーニャを買った時はブリック状態だったし、それでホンザ賢者のジャベックは終わりだった。
他のジャベックは全てソーニャが持っていただけだ。
「そうですか・・・それは残念です。
これほど優秀なジャベックならば、私も是非購入したかったのですが・・・」
残念そうに話すサイラスを見てマシューズが話す。
「う~ん、実はこのジャベックはもう何体かずつ持っているので、一体サイラスに売っても良いんだけど・・・」
「え?本当ですか?」
「うん、本当だよ」
「それは是非売っていただきたいです。
このジャベック自体の能力もさる事ながらホンザ賢者の作品であれば、私の研究にも欲しいですからね」
「なるほど・・・」
「それでいくら位で売っていただけますか?」
再生産できないソーニャたち四体と違って、時間さえあれば生産可能なこのジャベックであるならば、サイラスならばただで上げても良い位だが、さすがにそうも行かないだろう。
「え~と、こっちの魔道士級はいくら位で売れると言ったっけ?」
「そうですね、先ほども言った通り、この能力なら金貨250枚から300枚ほど、使空魔法士級は130枚前後で売れるでしょうね・・・ただし」
「但し?」
「私のようなジャベックの研究をしている知り合いに売れば、もう少し高く、魔道士級が金貨320枚、使空魔法士級が150枚前後で売れるかと思います」
「え?そんなに高く?」
「ええ、今話した通り、賢者ソウイッチ・ホンザと言えば研究者の間では有名ですからね。
研究用に欲しがる魔道士はそれなりにいると思いますよ」
「そうなんだ・・・」
「ええ、そうですね」
「じゃあサイラスにはこの魔道士級を金貨100枚、使空魔法士級を金貨50枚で売るよ」
そのあまりの安値にサイラスも驚く。
「え?そんなに安くて良いのですか?」
「うん、色々と説明してもらったしね。
それと売る仲介もして欲しいから、安いのはその手間代と仲介料だと思って」
「わかりました。
それでもう一体ずつは一般業者と研究者のどちらに売りますか?
もちろん高く売れるのは研究者の方ですが?」
どちらにするか?
マシューズは迷った。
「う~ん・・・そうだね・・・
それじゃ三体ずつあるから、それを一組はサイラスに、一組はジャベック業者に、もう一組は研究者に売るよ」
「え?これが三体ずつあるのですか?」
「うん、それでどうかな?」
「わかりました。
では早速私の分は今お支払いしますよ。
お互いの気が変わらないうちにね」
「わかった」
マシューズは金貨150枚を受け取ると、所有権の譲渡をした。
サイラスは高度なジャベックを二体も手に入れて満足そうだった。
「ところで残りの二組なんですが・・・」
「うん?」
「あなたから購入した私が言うのもなんですが、正直出所を言わない方が良いでしょう。
色々と問い詰められると面倒ですからね。
ですから私が業者や研究者に持って行って、売った方が良いでしょう。
私ならば出所をうまくごまかせますからね」
「うん、サイラスに任せたから良いようにして」
「わかりました。
ではその4体を預かりましょう」
「うん、よろしく」
数日たって、サイラスはマシューズに4体を売った金額、金貨900枚を渡した。
その時にサイラスは苦笑いで話した。
「いやはや参りましたよ。
業者の方はともかく、知り合いの研究者に根堀葉堀聞かれましてね。
一体こんな状態の良いホンザ賢者のジャベックをどこで手に入れたんだ!とね」
「そんなに?」
「ええ、もう10枚金貨を上乗せするから出所を教えてくれと迫られましてね。
何とかごまかして知らない事にしておきました。
やはりマシューズさんが行かなくて正解でしたよ」
「それは苦労かけたね」
「いえいえ、そのために私は安く譲っていただいたんですからね。
まあ、その値引き代の苦労分ですよ」
そう言ってサイラスは笑った。
「うん、ありがとう。
実はこのジャベックを売ろうと思ったのはロナバールの中等魔法学校に行こうと思ったからなんだ。
僕もサイラスみたいに魔道士になりたくなってね。
だから学校に通う間はあまり仕事を出来ないから授業料と生活費が欲しかったんだ。
もっとも予想よりもずいぶんと稼げたみたいだけどね。
これで僕もしばらく仕事をしないで魔法学校に通う事が出来るよ」
「なるほど、そういう事だったのですか?」
「うん、そうなんだ」
マシューズはソーニャたちのおかげでレベルが上がった。
それに伴い、魔法感覚や魔力量もかなり上がっていたために、これならば余裕を持って魔道士にもなれるだろうと考えて中等魔法学校へ行こうと思ったのだった。
サイラスもそんなマシューズを応援する。
「ええ、是非、頑張ってください。
マシューズさんなら立派な魔道士になれると思いますよ」
「ありがとう。
でも一応組合員の休職届けは出さずに、週に1回位は迷宮に行くつもりだけどね」
「なるほど、どちらにしてもマシューズさんが魔道士になるのを祈っていますよ」
「うん、ありがとう。
僕も魔道士になれたらサイラスに一番に報告をするよ」
「ええ、その時をお待ちしております」
それから3年間、マシューズは学校に通うと、無事に魔道士となる事が出来た。
「さて、無事に魔道士になる事が出来たし、いよいよあれを実行するか!」
マシューズは以前から考えていた事をいよいよ実行する事にした。
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