マシューズ・マリネン 02 中古屋で見つけたジャベック
3ヵ月後にマシューズが中等訓練所を卒業すると、父は約束通りにジャベックを買ってくれた。
商売が順調だったので、ずいぶんと父が金額をはずんでくれた。
おかげでマシューズは中古ではあるが、性能の良いジャベックを買う事が出来た。
レベル75の戦闘型魔法ジャベックだ。
本来ならばこの性能ならば、金貨80枚はするような代物だったが、運よく中古屋に金貨50枚で売られていて、父が気前よくそれを出してくれた。
マシューズは念入りに確認をしてからそのジャベックを購入した。
パメラと名づけられたそのジャベックは、レベル75の人間女性型汎用魔法ジャベックで、魔戦士型ジャベックだった。
簡単な日常会話も可能な上に、低位火炎魔法で攻撃をして、剣技にも秀でていて、さらに低位治療魔法も使える優れ物だった。
そして無事中級訓練所を卒業して、今や五級組合員となり、パメラを伴ったマシューズは1日に大銀貨2枚分ほどを稼げるようになった。
パメラを伴い、ゴブリンロードを倒したマシューズは「ゴブリンの短剣」を持って四級審査に望み、傀儡の騎士を倒し、四級となったのだった。
四級となったマシューズは実家を出て、町にある組合の宿舎に入る事にした。
確かに家にいれば少々の金を食費として入れれば文句は言われないし、食事も母が作ってくれるので面倒はなかった。
しかし家にいると、マシューズの便利さに気がついた父や兄たちが何かにつけて、自分を使おうとするようになったからだ。
それは今まで何とはなしに魔法使いだと思っていただけのマシューズが、実はとても重宝する事がわかったからだった。
それを嫌がったマシューズは、家を出て組合の運営する宿舎に入った。
利用する宿舎は「中宿舎」だった。
これは組合中級者に人気のある宿舎で、普通の宿屋ならば一泊大銀貨1枚はするような広い部屋だが、朝食付きで1日銀貨5枚、1ヶ月の利用料金は金貨1枚だった。
マシューズは最初もう一つ下の「並宿舎」にしようかと思ったのだが、パメラがいるために、並宿舎では少々狭くなるので、奮発して「中宿舎」にしたのだった。
それにその程度の稼ぎはパメラが一緒に稼いでくれる。
今や四級となったマシューズは、自らの魔法とパメラがいてくれるおかげで、一ヶ月に金貨6枚前後は稼ぐ事が出来た。
これは四級程度の組合員では上々の稼ぎだ。
戦闘タロスの出せる数も、7級のころはせいぜい5体が限界だったが、いまや20体ほどは出せるようになったので、戦闘もかなり楽になっていた。
そんなある時、町のゴーレムを扱っている中古屋で、掘り出し物のジャベックを見つけた。
マシューズはパメラがとても便利だったので、もう何体かジャベックを買おうと考えていて時間がある時は、町のゴーレム屋を回る癖がついていたのだ。
その中でもマシューズが気に入っているゴーレム屋があった。
そこで見つけた、いわゆるレンガ型の大きさ2メルほどの戦闘ゴーレムは、レベルはなんと120もあった。
マシューズは顔なじみになっていた店主に、そのジャベックの値段を聞いてみた。
「これはいくらなの?」
「ああ、そうだな・・・金貨30枚でいいさ」
「金貨30枚?そりゃまた随分安いね?
これレベル120もあるんでしょ?」
魔法が使えないとはいえ、レベル100を超えるジャベックが金貨30枚とは破格の安さだった。
「ああ、だが最近は中古で売れるのは人間型が多くてな。
岩石型やレンガ型は今一つ人気がないのさ。
それに実はそいつにはもう一つ、いや2つかな?難点があってな」
「難点?」
マシューズがこの店を気に入っているのは、この店主が売り物の長所だけでなく、短所も説明する点だった。
この店主はしっかりと売り物の長所だけでなく短所も説明し、その上で購入を判断させるので信用がおけると思っていた。
「ああ、こいつはグラーノ化が出来ないんだ。
こんなにでかいのにグラーノ化が出来ないと不便だろう?
それに力はあるんだが、動きは少々鈍いもんでな。
それでレベルが高い割には安く売られているって訳なんだ」
「ああ・・・」
グラーノ化が出来ないという事は、この身長2メルもあるでかい図体をずっと引き連れなければならないという事だ。
これほど大きな体では連れ歩くのは中々大変そうだ。
しかも動きは鈍い・・・
確かにそれは人気がないかもしれない。
マシューズも考え込んでしまった。
「うん、確かに掘り出し物ではあるけど、ちょっと大きすぎるな」
そう言ってマシューズも他のジャベックを見ようと、そこを後にした。
しかし驚いた事にそのレンガ型ジャベックはマシューズの後を着いて来る。
「おや?どうしたんだ?」
その様子を見て店主も驚く。
「こりゃ驚きだ!
ジャベックが勝手に客に着いていくとは・・・」
「どうして?」
「さあ、わしにもわからん」
店主も両手を広げて首を横に振る。
どうもマシューズに懐いて来るような感じだ。
「お前はどうして僕についてくるんだい?」
不思議に思ったマシューズが尋ねるが、もちろん答えはない。
そしてマシューズは冗談半分でそのジャベックに聞いてみた。
「まさか僕に買って欲しいのかい?」
すると驚いた事にその質問にこの岩石ジャベックはこくりとうなずくのだ!
その反応に店主も驚く。
「ほっ!こりゃ驚いた!
ジャベックが客をえり好みするとはね?」
自我があるアイザックと違い、ジャベックには感情や好みなどない。
擬似性格的な物は製作時に仕込めるが、人を選ぶなどという機能は、よほど特殊な事でもしない限り不可能なはずだった。
驚いたマシューズは店主に尋ねた。
「何か仕組んでいるの?」
マシューズは店主が何か仕組んでいるのかと疑って質問をするが、店主は大慌てで首を横に振って答える。
「いやいや、そんな事はないさ!
わしだって驚いている位なんだからな!」
「だったらどうして?」
「そりゃわしにもわからん。
だが、どうだ、兄ちゃん?
あんたに懐いているようだし、正直うちでも実はもてあましているんだ。
安かったからつい仕入れてはみたものの、やっぱりデカ過ぎて場所を取るんでな。
金貨27枚、いや25枚にしておくから買わないか?
力と体力だけは保証するぜ!」
「金貨25枚か・・・」
確かにレベル120のジャベックとなれば、それは格安だ。
グラーノ化出来ない事や、大きさの難点を考慮しても買いかも知れない。
どうせ一人で気ままに迷宮を歩くだけなのだ。
体は大きいし、盾代わりに使うのも良いかも知れない。
少々考えたマシューズはこのゴーレムを購入する事にした。
「わかった。買いましょう」
「いよっ!まいどあり~」
こうしてマシューズはレベル120の岩石ジャベックを購入した。
ブリックと名づけたそのジャベックは当初思っていたよりも使い勝手は良かった。
言葉はしゃべらないし、もちろん魔法も使えないが、戦闘ではとても頼りになる。
言われた通り、動きは少々鈍いが、普通に歩く分には遅れるほどではなかった。
それにそれを補ってあまりある力と体力があった。
戦闘ともなれば、確実に魔物一体を相手にして倒してくれる。
最低でもマシューズとパメラが戦っている間に、魔物の相手をして時間を稼いでくれるのだ。
マシューズは体力の大きい魔物や、固い魔物が出てくると、必ずブリックに命令して相手をさせた。
ブリックはマシューズの期待に応えて着実にその一体を倒していた。
少なくとも盾となって時間を稼いでくれた。
マシューズとパメラはその間に他の魔物を倒し、その後でブリックの相手を倒せば良かったので大いに助かった。
確かに宿舎の部屋では少々邪魔になるが、稼ぎの事を考えれば、独り者のマシューズにとって、それはさほど問題ではなかった。
そしてブリックを購入したおかげで、今やマシューズは組合員三級並の稼ぎを可能になったのだ。
ブリックでずいぶんと散財はしてしまったが、その代わりに貯金もずいぶんと溜まって来た。
だからマシューズは良い買い物をしたと思って満足していた。
しかし、ある時に驚くべき事が起こった!
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