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トム・サテナ 22 トムの学園日記

 俺がこの村に戻ってきてから早くも1年以上が経った。

それにしてもよくもたったの1年でこれほど目まぐるしく、村の様子が変わった物だと俺は感心した。

今の村の様子をマジェストンへ行く前の俺に見せたらまず信じないだろう。

それほどまでに村の雰囲気も実際の様子も変わった。

俺のマジェストンでの3年間の生活は人生をひっくり返すような驚きの連続だったが、この1年間もそれに匹敵すると言える。


 あれやこれやで大騒ぎの1年だったが、それでも全てが順調に行くようになり、俺もようやく落ち着いてきた。

あれほど時間がかかると思っていた村の開墾もたったの1年で一通り終わり、しかも当初考えていた数十倍もの面積が農耕地となった。

これ以上農地を増やしても、俺と今いるジャベックたちだけでは面倒を見切れなくなるので、一時的に開墾は中断だ。

それでもすでに俺たちが農耕地にした面積は数平方カルメルにも及ぶ。

それは今までの村全体の面積に匹敵するほどだ!

だから農地は近い将来に村人が増えるか、新たにジャベックを購入するまでは現状維持だ。

その分、作物の育成には力を入れて、農地には小麦や赤茄子あかなす馬鈴薯ばれいしょ甘薯かんしょ玉蜀黍とうもろこしなどの他に、苺や萵苣 ちしゃ、それに西瓜すいかも作り始めた。

どれも農作物自体としては珍しい物ではないが、全てホウジョウ先生からもらった物なので、品種が従来の物とは別種と言っても良いほどに味が違う!

それこそうちの村の特産品と言っても良いほどだ!

何しろどれもこれも今の所は大アンジュ以外ではメディシナー、ベルンシュタイン領やカーサライネン領など、ほんの一部でしか栽培していない上に、その各所が御互いにかなり離れた場所にあるので、そのほとんどがあまり遠くまでは運べない生鮮食品だけに希少価値が大きい。

特に苺をジャムにした物などは驚くほど売れて、あっという間に無くなってしまったので、次回からは畑の大半を苺にする計画を立てているほどだ。

苺はジャムにすれば瓶詰めになるので置きやすいし、日持ちもするので、うちとしても理想的な農作物だ!

甘薯かんしょも「ベニアズマ」とかいう品種らしいが、その味は信じがたいほどだ!

何しろ畑から掘った物を、そのままオーブンで焼いただけでもあり得ないほどに甘いのだ!

名前も「焼き芋」とそのままの名前なのだが、とにかくこれがうまい!

それは今までの甘薯かんしょとは全くの別物と断言できるほどだ。

三人組も焼き芋を食べて驚いていた。


「こりゃ、うめーや!旦那!」

「ああ、こんな甘くてうまい芋は食べた事がねえ!」

「あっしもですぜ!」


そう言って三人は焼きたての芋をうまそうに食べる。

試しにうちの旅館の食事で出してみたら客たちには大好評だし、旅館の店で売り出したら並べるそばから売れていった!

こちらも芋だけにかなり保存が効くし、俺は苺と共にこれからのうちの畑の作付けほとんどをこの二つにしようと考えているほどだ!

この二つは当分の間、この周辺では我が村の特産物となるだろう。


 サクラ軽食堂も診療所も温泉旅館も問題なく営業をしていて、毎日のように村には客が来ている。

そのサクラ軽食堂もある程度は落ち着いてきて、ようやく本来の移動食堂も各町村を周回し始めたようだ。

特にアジャスタの街にはほぼ毎日どれかの移動店舗が開店しているらしい。

パンの種類もいくつか増えて、主力パン以外にも人気のあるパンも色々とあるようだ。

俺が苺ジャムを店に卸した時などは苺ジャムパンや苺メティなどがあっと言う間に売り切れて大騒ぎが起こったとメロディールさんから聞いた。


「苺のジャムパンは驚くほどの売れ行きですわ!

是非苺ジャムを追加で購入したいのですが?」

「ええ、あと少しならありますが、今年はそれで終わりですね」

「それは残念です!

また次回に期待しますわ」

「ええ、今回の事でかなり売れる事がわかったので、瓶詰めにすれば保存も効くし、次は今回の20倍ほどの栽培をするつもりですよ」

「それは期待していますわ!」


こうして苺は作れば作っただけ売れるのでありがたい作物だ。

まず余り物など出ない。

余り物と言えば、俺はサクラ軽食堂がメティを作り始めた時に切り取って余ったパンの耳をどうしているのかと思ったら、これもきっちり商品にして売っていたのには驚いた!

何と切り取ったパンの耳をさらに一口大の大きさに小さく切って、何かの粉と砂糖をまぶして揚げた物を売っていたのだ!

俺は驚いてメロディールさんに聞いた。


「これは凄いですね?

こんな物まで商品にしてしまうとは・・・」

「ああ、これもホウジョウ様の考案した物なのですよ。

名前は「パンの耳のきなこ砂糖揚げ」と言うそうです。

「きなこ」というのは乾燥大豆を粉にした物の名前です。

それを砂糖と和えてまぶした物を油で揚げたのです。

うちでは略して「耳揚げ」と言ってます。

もっとも例によってホウジョウ様は自分の故郷ではよくある子供のおやつのような菓子だったとおっしゃってましたが」

「へえ・・・流石はホウジョウ先生ですね?

こんな余り物でまで斬新な料理を作ってしまうとは・・・」

「ええ、あの方は「食べられる食材ならば余る物などない」とよくおっしゃってますからね」

「なるほど」


実際に俺も食べてみたが、これは香ばしくて中々うまい!

そばにあるとついつい手が出てしまう!

しかも余り物で作っているだけあって、値段も紙袋一杯に入って大銅貨3枚と安い!

値段が安いせいもあって、これも地味ながら隠れた売れ筋商品のようだ。


 温泉旅館の方も料理などをジェリーがメロディールさんから教わって、一部チキュウ料理などを出すようになって以来、ますます繁盛して順調だ。


 アオキンたち三人組もこの1年で大いに進歩した。

師匠に航空魔法と使役物体魔法を習ってアオキンはTS魔法士になれたし、キーロとアカーラも一通りの初歩的魔法を覚えたので、マジェストンまで連れて行って、俺と同じく短期初等魔法学校へ入学させて、正式に魔法士の資格を取らせた。

そしてキーロは航空魔法を、アカーラは何とか使役物体魔法を覚えたので、二人ともそれぞれS魔法士とT魔法士の資格も取れた。

 様々な収穫のおかげで俺もかなりの収入を得る事が出来たので、三人組にもそれなりに給金を出す事が出来るようになって、アオキンたちも大喜びだ。

時々3人でその金を使ってアジャスタの町へ行って酒場で飲み食いをしているらしい。

その時には他の客たちに頼まれてホワイトウィーゼル退治の話をして盛り上がっているようだ。


 そしてあちこちの村からうちの村の発展ぶりを見て驚いた人々が、自分たちの村も開墾をしたいのでクルティボを貸して欲しいと申し込まれた。

俺としてはクルティボを色々使う事があるので、あまり気乗りはしなかったのだが、村長様に近隣の付き合いもあるからと言われて有料で貸し出す事となった。

俺はクルティボに護衛や補助としてサーバントとヘルパーをそれぞれ一体、さらにラボロを2体つけてジャベック5体を1ヶ月金貨10枚で貸し出す事にした。

初めての村に貸す場合は俺が数日行って、その使い方を教える事にした。

クルティボは一体でも土木タロスを使って普通の村人数百人分の勢いで開墾が出来るし、それをラボロ2体が手伝うと、驚くほどの速さで開墾が出来るので、借りた人々はその性能に驚いた。

さらにサーバントとヘルパーはレベルが100の上に、攻撃魔法や治療魔法も可能なので、魔物退治や村人の治療も出来て、各村から恐ろしく重宝がられた。

これはあちこちの村でもかなり好評で、クルティボの貸出しは半年先まで予約で埋まっていて、俺にとっては予想外の良い稼ぎになった。

ジェリーには「クルティボの貸出料だけで一生食べて行けそうね」と笑われたほどだ。


 村の周囲を囲んだ土塁も、川から持ってきた石で何とか石垣として格好がついたし、その外側に木柵も作った。

これで魔物や盗賊への対策もある程度出来て安心だ。

それで俺もようやく一息つく事が出来た。


 そこで俺は以前から書きたいと考えていた本の製作にかかった。

一応3年間の事は、全て日記の形で書き残してはいるが、やはり記憶が鮮明なうちに、本にしておきたい。

もっともほとんどの出来事が驚きの連続で忘れようのない事ばかりだった。

本の題名は「魔法学校での生活 ~青き薔薇たちとの思い出~」だ。

基本は俺の学校生活ではあるものの、やはりそのほとんどがホウジョウ先生がらみの出来事が多かったからだ。

一応、原稿が完成したらホウジョウ先生やグリーンリーフ先生に見せて発行の許可をもらってから出版をするつもりだ。


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後日出版されたトム・サテナ作「魔法学校での生活 ~青き薔薇たちとの思い出~」と題された中等魔法学校の学生生活を綴った本は、当時の魔法学校の学生生活や、シノブ・ホウジョウの学生時代の貴重な資料本として後世に伝えられる事となる。


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これにてトムの話は一旦終わります。

しばらくしたら、次はキャロルかマシューズの話を出す予定です。


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