トム・サテナ 19 パーシモン村への訪問
空を飛ぶ俺たちの前方にある村が見えてきた。
「あれがそのはずだ」
「あれがパーシモン村・・・」
俺たちは着陸すると、村の中へ入る。
まずは初めて会った村人に問いかける。
「こんにちは、ここはパーシモン村ですか?」
「ええ、そうですよ。
お客さんたちは何の用かしら?」
「ここにパーシモン診療所というのがあるはずなのですが」
「ああ、それだったらあそこの家よ」
「ありがとうございます」
俺たちがそこへ着くと、その家の周囲が恐ろしく頑丈な作りをしているので少々驚く。
もっともこの村はどの家も他の村の家よりも頑丈に出来ている。
そう言えば、ポリーナはこの村はよくゴブリンの襲撃に会う事があるので、それぞれの家は強固に作ってあると聞いた覚えがある。
俺はその家の玄関で中に向かって声を出して尋ねる。
「すみません、旅の者ですが、この診療所を少々見学したいのですが・・・」
俺がそう言って奥に声をかけると人が出てきて答える。
「ええ、どうぞ、構いませんよ・・・
え?トムさん!」
「あれ?ポリーナ?
ロナバールにいるんじゃなかったの?」
「ええ、当初はその予定だったのですが少々事情が変わりまして今はノーザンシティにいるんです。
そしてこちらにもたまには様子を見に帰って来ているんです。
今回はちょうどたまたま数日前に夫と帰った所でして」
「え?夫って?」
「実はつい先日シャルルさんと結婚しまして・・・」
「え?シャルルって、あのシャルル?」
「ええ、そうなんです」
ここでそのシャルルが家の奥から出てきた。
「どうしたの?ポリーナ」
「あ、あなた」
「あれ?トムじゃないの?
どうしたの?」
「やあ、シャルル!久しぶり!
いや、実はわけあってここの診療所を見学に来たのさ!
それにしてもシャルルとポリーナが結婚していたとは知らなかったよ」
「はは、まあ、結婚したのもつい最近だったしね。
それに式もごく身内だけで済ませたからね。
友人たちで呼んだのはシノブたちくらいなものさ」
「なるほど、実は俺も結婚したんだ」
「ああ、シノブから聞いているよ。
何でもモーゼスさんのお孫さんと結婚したんだって?
ひょっとしてそちらがその奥さんかな?」
「ああ、紹介するよ。
俺の嫁さんでモーゼスの爺さんの孫娘のジェリーだ」
「ジェリー・サテナです。
初めまして、いつも夫がお世話になっております」
「いいえ、こちらこそ。
私はシャルル・クロンハイム、こちらは妻のポリーナ・パーシモン・クロンハイムです」
「はい、お話はトムから伺っております。
何でもホウジョウ様やアンジュ様に劣らない魔法使いで天賢者とか・・・
しかも奥様もあのゴブリンキラーでいらっしゃると伺っております」
「はは、いや、さすがにシノブやアンジュには敵いませんね。
シノブには試合でも一回も勝った事はないし、アンジュには試合で勝った事はあるけれど、今では私よりもずっとレベルが上になったみたいですしね」
「私もまだまだ駆け出しです。
ようやく魔道士になってゴブリンキラーの名を継いだと言っても、先代の名を汚さないようにするのに必死ですわ」
「ご謙遜を」
「ところで何でここの見学をしに来たんだい?」
「いや、実はうちの村の村長様から村に診療所を作って欲しいと頼まれてね。
それでここを参考にしたくて見学に来てみたんだ」
「そういう事か?
それなら我々がいてちょうど良かったよ。
さあ、案内しよう」
「それは助かるよ」
シャルルとポリーナは俺たちに診療所の案内をしてくれて、診療所の運営の仕方も詳しく教えてくれて助かった。
「なるほど、それでは薬も売るなら薬草畑があった方が良いんだね?」
「ええ、この村だけなら森に行った程度の採取で賄えますが、最近は近隣の村までここへ薬を買いに来る人が多くなったので、薬草畑も拡張しました」
「なるほど、それじゃうちも薬草畑を作った方がよさそうだな」
「それなら苗や種をお分けしますよ」
「それは助かる」
俺はシャルルとポリーナから様々な薬草の種や苗を分けてもらい、薬の作り方も教えてもらった。
それは俺とジェリーだけでなく、マイクとナンシーにも教えてもらっていた。
そして数日後、俺はある事をポリーナに尋ねた。
「そう言えば、ゴブリンキングを倒した時って、ここを拠点にしてどこかに攻撃根拠地みたいのを作って倒したんだよね?
そこって今でもあるの?」
「ええ、「ゴブリンキング討伐本部」の事ですね?
もちろんありますよ。
今は無人の砦になってますが、見学する事は出来ますよ」
「是非後学のためにそこも見てみたいんだが」
「では案内しましょう」
俺たちはポリーナとシャルルに案内されて、ゴブリンキング討伐本部の見学をした。
そこはかなり大きな砦で、中には宿泊施設や厨房、大工小屋の跡まであった。
それを見て感心した俺がポリーナに尋ねた。
「これを君たちは1日で作ったって言うのかい?」
「ええ、何しろそうしないと夜にはゴブリンの軍勢に攻め込まれてしまう状況でしたからね。
明け方から作り始めて、何とか夕方頃には作り終えました」
「この規模を一日で作るとはね・・・」
「驚きです」
俺とジェニーが驚いていると、シャルルも笑いながら同意する。
「はは・・僕も初めて見た時は驚いたよ」
「そうですね。こうしてみると改めて大御爺様の偉大さがわかります」
「全くポリーナの大御爺さんは大した人だったんだな?」
「それには僕も全面的に賛成するね。
そんな人に僕は子供の頃、遊んでもらっていたんだからね。
恐れ多いくらいだよ」
「え?シャルルが遊んでもらった?」
驚く俺にポリーナが説明をしてくれた。
「ええ、大御爺様は旅に出る前はクロンハイム家の執事をしていたのです。
それでシャルルとは小さい頃に知っている仲で」
「そうだったんだ?」
「ああ、そういう事なのさ。
もっとも僕の両親の結婚前は母方の祖父の家の執事をしていたそうだけどね」
「へえ?」
意外な二人の関係に俺は驚いたのだった。
数日後、俺とジェリーは二人に感謝をして、今や俺の名前がついたサテナ村へと帰る事となった。
「いやあ、二人にはすっかり世話になったな!
うちの村にパン屋や診療所が出来たら、是非二人も遊びに来てくれよ!」
「ああ、わかった!」
「楽しみにしています」
「ええ、こちらも楽しみに待っています」
俺たち4人は友誼を交わして、俺とジェリーは村へ帰ったのだった。
当小説を面白いと思った方は、ブックマーク、高評価、いいね、などをお願いします!
ブックマーク、高評価、いいねをしていただくと、作者もやる気が出てきますので是非お願いします!




