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トム・サテナ 18 サテナ村

 俺に名前を呼ばれた男はニヤリと笑って話しかけてきた。


「よう!トム!久しぶりだな!

俺も父さんの仕事でちょいとしばらく出かけていたんだが、昨日ようやく帰って来れてな」

「ああ、久しぶりだ!」

「こっちもお前さんの活躍は父さんやロバート先生から色々と聞いたぜ!

ずいぶんと大活躍しているみたいじゃないか!」

「はは、まあね」


俺はそばで驚いているジェリーにその男を紹介する。


「ジェリー、この人は村長様の息子でジャックだ。

俺と同じ年で、小さい頃からよく遊んだ仲なんだよ」

「まあ、そうなの?

初めまして、トムの妻のジェリー・サテナです」

「ああ、よろしく!

ところで父さん、今の村の名前の話だけどな」

「おお、それじゃ!

この村の名前を決めようとしていた所だ!」

「俺は今言った通り、村の名前を「サテナ村」にする事を勧めるぜ」

「サテナ村?なぜじゃ?」


不思議がる村長様にジャックは呆れたように説明する。


「そりゃそうだろう?

父さん、今この村の防衛を担っているのは誰だ?」

「それはトムじゃ」

「この村の農地をここ半年で大幅に増やしたのは?」

「それもトムじゃ」

「これから作るパン屋を誘致してきたのは?」

「トムじゃな」

「それでこれから診療所も作らせようってんだろう?」

「まあ、そういう事じゃが」

「何でもかんでもトム、トム、トム!

いくら何でもトムに頼りすぎだろう?」


ジャックにそう言われると父である村長様も縮こまったように答える。


「しかしそうは言っても他に頼る人間もおらぬしのう・・・

ロバート先生にもこれからはトムを頼って良いと言われたしのう」

「そんだけ頼ってんなら、もう村の名前もサテナ村にしちまったっていいだろうが?

その方がトムも働きがいがあるってもんだ!

何しろ自分の名前が村の名前になるんだからな!」

「ううむ・・・」


考え込む村長様に対して脅かすようにジャックが話を続ける。


「そもそもこんな優秀な奴は他にそうそういないぜ?

それは父さんもわかるだろう?

何たってレベル170を超える正規の魔道士で、しかもあのトリプルスターの一員なんだからな!

もし今からトムが嫁さんや全部のジャベックと一緒にどこか他の村に移住するって言ったらどうするよ!」

「それは困る!」

「だろ?

だけど、村の名前をサテナ村にしちまえば、トムだって他の村には行けないだろうよ?」

「確かにそうだのう・・・」


ジャックの説明で村長様も半ば納得してしまったようだ。


「ははっ!そういう訳だ!トム!

これからこの村の名前はサテナ村だ!

よろしくな!」


それまで大人しく話を聞いていた俺が呆れて答える。


「おいおい!ジャック!

俺は別に恩のある村長様や師匠を見捨ててこの村からいなくなったりしないぜ?

そんな事を言って、俺を今まで以上に働かせる気だろう?」


その俺の指摘にジャックは笑って答える。


「ははっ!ばれたか!

しかしお前だって、自分の名前がついた村だったら守るにも発展させるにも気合が入るだろう?」

「確かにそうだけどな」

「ホラ、父さん!もう決めちまいな!」

「わかった!それでは今日からこの村の名はサテナ村だ!」


村長様の決定に師匠も少々驚いて尋ねる。


「本当にそれでよろしいのですかな?村長?」

「ああ、ロバート先生も知っての通り、今やトムはこの村になくてはならない存在になった!

ましてや帝都防衛の英雄様だ!

その事まで考えてみれば、確かに対外的にもその名前にした方が良い!

周囲の村や町の人々も、この村に帝都防衛のトリプルスターの一人がいると知れば、見る目も違うじゃろう!

今日からこの村の正式名称はサテナ村じゃ!」


その村長様の言葉にマルセルさんが念を入れて尋ねる。


「では、この村の名称は正式に「サテナ村」という事でよろしいですね?」

「うむ、それで頼みたい」

「承知いたしました。

それではここに作る予定のうちのパン屋兼支店の名称は「サクラ軽食堂 サテナ村支店」とさせていただきます」

「うむ、それでよろしくお願いしたい」


こうしてうちの村にサクラ魔法食堂のパン屋兼軽食堂「サクラ軽食堂 サテナ村支店」が出来る事となった。


「それでは早急にこちらで図面を引いて、近日中に店を開きたいと思います。

場所の案内をお願いします」

「うむ、ではトムよ。後は任せた」

「はい、ではマルセルさん、メロディールさん、こちらへどうぞ」


俺はパン屋の建設予定地へとマルセルさん一行を案内する。


「この辺一体の土地を好きに使ってください」

「承知しました。

 ところであちらの屋敷は?」

「あれは私の家です」

「それではこちらの土地にすでにあるこの建物は?」

「それは私が自分でパン屋を開くつもりで作った建物です。

それをそのまま使っていただいても良いですし、別に新しい建物を作っていただいても良いです」

「拝見させていただいても宜しいですか?」

「ええ、もちろんです」


俺の建てたパン屋の構造を見たマルセルさんとメロディールさんは感心したようだ。


「これは素晴らしい作りですね!」

「ええ、本当です!

水回り的にも衛生的にも問題はありません。

単純にパンを売るだけでしたらこれで十分ですね」

「しかし惜しむらくはこちらで予定している店としては少々狭いようです。

でもこの建物をこのままにしておくのは惜しいですね。

トムさん、この建物はこの建物として使わせていただいて宜しいでしょうか?」

「ええ、もちろんです。

自由に使ってください」

「ありがとうございます。

それではメロディール、それを前提にして店を考えましょう」

「はい、ポキューズ部長」


二人が相談した結果、ロナバールのサクラ魔法食堂とは言わないまでも、相当大きな店になるようだ。


「大体こんな所かしら?」

「そうですね。

これで販売部、調理部、軽食堂、倉庫、職員寮、馬車置き場に魔法飛行艇置き場と全て問題はないはずです」


俺が少々驚いて尋ねる。


「馬車置き場や魔法飛行艇置き場までですか?」

「ええ、近隣から馬車で購入に来る方もいらっしゃるでしょうし、こちらからも近隣の村には宣伝を兼ねていくつかの馬車や飛行艇で移動販売にも行くでしょうから。

何しろここはこの地区の要にもなる場所ですからね」

「なるほど」

「ここは恐らく、うちの職員10人ほどと、ジャベック60体ほどで運営する予定になりそうです」

「そんなに大規模な店になりますか?」

「ええ、これからよろしくお願いします」

「はい、こちらこそお願いいたします」


これは確かにかなり大規模な店が出来る事になりそうだ。

マルセルさんとメロディールさんは村長様とロバート師匠にさらに店の詳しい説明をしてロナバールへと帰って行った。

早速近日中に店の建築に取り掛かる予定だそうだ。

俺は村長様に両手を握られた上で、激しく上下に動かされて感動したように話された。


「おお、トムよ、助かった!

全くお前はいつもこちらで頼んだ以上の働きをしてくれるのう!

あのような名店がこの村に支店を作ってくれるなど、夢のようじゃ!

これも全てお前さんのおかげじゃよ!」


そばにいたジャックも笑って話す。


「ははは、全くトム様様だな!」

「ああ、全くじゃよ!

ところで、トムよ。

これでパン屋の方は解決したようなものだが、次は以前に話したとおり、診療所を頼みたいのだがどうだろうか?」

「そうですね、それにはちょっとまた参考にしたい場所があるので、そこを見学して来ます。

話はそれからで良いでしょうか?」

「うむ、わかった。

良い返事を待っておるぞ」


俺とジェリーは三度師匠に留守を任せ、旅の準備をしてある場所へ向かった。

目指すはポリーナの故郷パーシモン村だ!


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