トム・サテナ 15 マジェストンの迷宮へ
ハーベイ村の視察を終えた俺は村へ帰ってジェリーと師匠、それとアオキン、キーロ、アカーラの3人組に話した。
「ハーベイ村の施設は中々凄かったし、食堂などもうちでパン屋を作る時の参考になった。
それでこれからこの村の防衛を強化しようと思うが、それに関して先にしようと考えている事がある」
「何でしょう?」
「それは私や師匠も含めて、ここにいる我々自身の強化だ」
うちの面々は俺以外にはレベル100を超えた人間はいない。
師匠はレベル88で、ジェリーは60、3人組は28から38の間だ。
レベル100を超えるジャベックが6体もいるとは言え、ここはやはりもう少し人間を鍛えておいた方が良い。
ハーベイ村にもゾンデル暫定村長を初めとして、レベル100を超える村人がゴロゴロといたのだ。
それを見て、やはり村の防衛のためにも一人でもレベルが高い者が多くいた方が良いと感じたのだ。
それに俺の留守や病気で寝込んでいる時に盗賊に襲われる可能性だってあるだろう。
その時のためにも一人でもレベルが高い者がいるに越した事はない。
そう考えた俺に師匠が賛成する。
「ふむ、確かにそうじゃな。
それにはわしも賛成じゃ。
幸いな事にレベル100を大きく超えている人間とジャベックが合わせて3人もいるのだから、どこかの迷宮へ行って少々鍛えるとするか?」
「そうですね」
ジェリーも賛成し、アオキンたちもうなずく。
「もちろん、あっしらも構いませんぜ」
全員の賛同を取った俺はうなずいて相談をする。
「そうか、ではレベル上昇の訓練をするとして、どこでしようかな?」
「ふむ、ここから一番近いのはアジャスタの町の迷宮だが、あそこは7階層までで、大した事はないな」
「ではいっその事、マジェストンまで行きましょう」
「そうじゃな、それが妥当じゃろう」
「でも私たち全員で行っては留守が問題になるのでは?」
「ああ、だから2回に分けていこう!
まずは俺とジェリーがマイクとナンシーと一緒にマジェストンへ向かう。
それで帰ってきたら、今度は俺と師匠とアオキンたちとで行く。
それでどうだろう?」
「うむ、それで良かろう」
「ええ、私もそれが良いです」
師匠とジェリーが賛成したので決定だ。
「それでは早速明日にでも向かおう。
まあ、さし当たっては2週間も鍛えれば多分大丈夫だろう。
そして師匠、その間にお願いがあるのですが?」
「なんじゃな?」
「アオキンに航空魔法と出来れば使役物体魔法を教えて欲しいのです。
それとキーロとアカーラには治療魔法も」
俺の言葉に3人組は驚く。
「ええっ?」
「あっしらに?」
「出来ますかねぇ?」
頭をかしげる3人に俺が尋ねる。
「お前たち、今後はこの村にずっと住むつもりなんだろう?」
「ええ、そのつもりですが・・・」
「じゃあ、それ位訓練してみろ!
うちにホワイトウィーゼルみたいのが来たら、お前たちだってあの時以上に戦わなきゃならないんだぞ!」
俺にそう云われた3人組はうなずいて答える。
「そりゃごもっともで、おい!二人とも!
こうなったら俺たちも覚悟を決めてロバート師匠に魔法を習うぞ!
お前らはまずは治療魔法だ!」
「へい!」
「わかりやした、兄貴」
村を師匠に任せた俺とジェリーは、マイクやナンシーと共にマジェストンへ向かった。
マジェストンへ着いた俺たちはまずは宿を取り、ジェリーにマジェストンを案内する事にした。
「ジェリーはマジェストンは初めてなんだろう?」
「ええ、私は中等魔法学校は別の所へ行きましたからね」
「じゃあ、今日と明日くらいはちょっとマジェストンを観光してみるか!
君も正規の魔道士なんだし、これから俺が何かの用事を頼む事もあるだろうから、多少はマジェストンに詳しくなった方が良いだろう」
「そうですね」
俺はジェリーたちにマジェストンを案内した。
まずは魔法学校だ。
「ここが俺が通っていた中等魔法学校だよ」
「さすがに魔法使いの本場だけあって立派な学校ですね」
「ああ、俺が三年間世話になった我が母校って奴さ」
まだ卒業して1年も経ってないが妙に懐かしく感じる。
まあ、ここでの3年間は俺にとって100年分くらいの驚きがあった場所だから、それも当然か?
次に案内したのはホウジョウ子爵邸だ。
「ここがホウジョウ子爵のマジェストンのお屋敷だよ。
もちろん今はホウジョウ先生はいないけどね」
「まあ、ここが・・・」
ジェリーが感心していると、その屋敷の中から見知った顔が出てくる。
相手も俺を見つけると挨拶をしてくる。
「おや?トムさん?」
「やあ、キャロル!
久しぶりだね!
シャペロも調子はどうだい?」
「ええ、お久しぶりです。私はいつも通りですよ。
アンジュ御姉様がいないのが唯一の残念な点です」
「わしもいつも通りだぞい!トム殿」
ここでシャペロを見たジェリーが驚く。
「え?帽子がしゃべった・・?」
驚くジェリーに俺が笑いながら説明をする。
「ああ、シャペロはアンジュが創った帽子型のアイザックなんだ。
こう見えても俺なんかよりずっと強いし、凄いんだぜ」
「帽子型の・・・アイザック?」
「何の!トム殿とて中々の者ですぞ!」
「はは、ありがとうよ」
俺がそうシャペロに返事をするとキャロルが尋ねて来る。
「今日は何の御用ですか?
もちろんホウジョウ先輩がいらっしゃらないのは御存知だと思いますが・・・?」
「ああ、今日は俺の嫁さんにこの町を案内しているんだ。
実は最近結婚してね」
「ええ、その話は伺ってます。
何でも相手はモーゼスさんのお孫さんとか・・・」
「そうなんだよ、ジェリー、彼女はキャロル・マーカス男爵令嬢、俺と中等魔法学校でクラスは別だけど同じ学年だったんだ。
彼女もトリプルスターの一人だよ」
「はい、初めまして、ジェリー・サテナです。
よろしくお願いします。
でもキャロル・マーカスさんと言えば、確かサフィール族の?」
「ええ、私はサフィール族の魔人ですよ」
「それでアンジュさんに対して相当想いを寄せているとか?」
あ、まずい!
俺はそう思った。
案の定キャロルは何かのスイッチが入ったようだ。
「そうなんですよ!
あの方は天賢者にして、サフィール族の希望の星!
私はあの方に御仕え出来るのを無常の喜びとして・・・」
興奮して話し出すキャロルを俺が止める。
「はは・・・キャロル、まあ、その話はまた今度な?
まだうちの嫁さんをあちこちに案内するんでな」
「そうですね、そう言えば今日は私も急いで家に帰る所でした。
それではまた!
ジェリーさんも今後ともよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
「ああ、キャロル、ここにいる間に何か迷宮関係で頼みごとがあるかも知れないからよろしくな。
実はここへ来た一番の目的は迷宮での訓練なんだ」
「ええ、そんな事でしたらどうぞ」
こうしてマジェストンの案内をした俺は翌日からジェリー、マイク、ナンシーと共にマジェストンの迷宮に挑んだ。
その広さと深さにジェリーは感心したようだ。
「さすがは世界一の迷宮、いえ、今は二位になったのでしたっけ?
どちらにしても恐ろしく広く、魔物の種類も多彩ですね」
「ああ、今度、魔法協会とアースフィア広域総合組合が大アンジュの迷宮を世界最大の迷宮として認定するらしいからな。
それでも今でも一番有名な迷宮はこのマジェストンの迷宮さ」
「こんな凄い迷宮の最深部まであなたは行ったのですね?」
「ああ、だがそれはあくまでホウジョウ先生やグリーンリーフ先生の力で、俺なんかただのお供みたいなものさ」
「それでも凄いですわよ!
私も話しに聞いて一回は領域迷宮という場所へ行って見たいとは思ってはいましたけど、私なんてお供すらできません!」
「はは、まあ、ここで多少鍛えればジェリーも領域迷宮に行く位は出来るさ。
ちょうど良いから今回の目標はそれにしてみようか?」
その俺の言葉にジェリーは軽く驚く。
「え?領域迷宮に・・・ですか?
確かに一度行って見たいとは思いますが・・・」
「ああ、そのためには目指すはレベル120だな」
「ひゃくにじゅうぅ・・・」
「ああ、そのレベルでないと領域迷宮への単独入場許可が下りないのさ」
「それは・・・凄まじいですわね?
私に出来るかしら?」
「大丈夫!まだ正規の魔道士でもない普通の中等魔法学校の生徒だった俺にだって出来たんだ!
ジェリーにだって出来るさ!」
俺たちは順調に訓練をして2週間が終わる頃には目標どおり、ジェリーのレベルは120どころか130にまで上がり、最後の仕上げとして領域迷宮を目指す事になった。
しかし流石に俺たち4人だけでは危険なので、キャロルに頼んで影主、飛鷲、シャペロ、シャッテンにも付き合ってもらう事にした。
この面々ならば全員がレベル200を大きく超えているので俺も安心だ。
キャロルたちは俺の頼みを快諾してくれた。
だが、それでもジェリーは不安なようだ。
「本当に私が行っても大丈夫なのかしら?」
「ああ、26階層駐在所から遠く離れなければ大丈夫だよ。
ただ最初のダークキマイラが少々厄介だけどね。
あれを現在の我々だけで倒すのは流石に無理だ。
何しろ俺が倒した時は魔法学士が50人掛かりだったんだからね。
でもキャロルたちがいれば安心さ」
「何だか、ドキドキしますわ」
「はは、俺だって最初の時はそうだったよ」
俺たちは次の自由日にキャロルたちと待ち合わせして領域迷宮まで行く事となった。
現地へ行くと、キャロル以外にも思ったよりも多くの人がいた。
「やあ、今日はわざわざすまないね、キャロル」
「いいえ、ちょうど私も久しぶりに領域迷宮に行きたい所でしたから、問題ないですよ」
「ああ、流石に我々だけでは領域迷宮へ行くのには無理があるからな」
「それは私たちだって同じですよ。
いくら全員がレベル200を超えているとは言ってもね。
トムさんのような経験者が一緒だと心強いです。
ジェリーさん、紹介しますよ。
こちらがアイザックの影主、飛鷲、シャッテンです」
その影主の姿にジェリーが少々驚く。
「え?そちらの影主さんって・・・」
「ああ、ホウジョウ先生にそっくりだろう?
何でもホウジョウ先生が何かの時に自分の代行をさせるために創ったアイザックらしいよ。
だから髪と目の色以外は全部そっくりなんだ。
今は魔法学士になるためにホウジョウ先生と入れ替わりで高等魔法学校に、キャロルたちと通っているのさ」
「そうでしたの?」
「はい、影主です。
よろしくお願いしますね」
「まあ!声や話し方までホウジョウ子爵様にそっくりですのね?」
「ええ、そうでないと代わりが勤まりませんからね」
「そうですわね」
そしてキャロルがさらに一緒にいた若い連中も紹介する。
「そしてこちらは私の弟で現在中等魔法学校に通っているジョミー・マーカス、一緒にいるのはその同級生のクラウス・サーマルとアネット・ダンドリー男爵令嬢ですわ」
「初めまして!ジェリーさん、ジョミー・マーカスと申します」
「ボクはクラウス・サーマルです!
シノブ師匠の一番弟子なんですよ!」
「私はアネット・ダンドリーです!」
「はい、ジェリー・サテナです。
皆さんよろしくお願いしますね?」
ジェリーが納得した所で、俺たちは迷宮へ向かう事にした。
「では行くとするか!」
「ええ、行きましょう!」
俺たちは久しぶりの領域迷宮行きに気を引き締めた!
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