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トム・サテナ 14 ハーベイ村への訪問

 無事に盗賊団ホワイトウィーゼルを倒し、村へ帰って来た俺は、師匠やジェリーと一緒に、村長様に村の防衛に関した事を申し出た。


「そういった訳で、この村の防衛強化をさせてください。

さもないと、ホワイトウィーゼルのような連中が襲ってきたら、今のこの村ではひとたまりもありません」


一緒に戦った師匠やジェリーも俺に賛成する。


「トムの言う通りです。

この村はあの村と規模は同じ程度です。

今のままではあのような連中が来たら危ない」

「私も同感です。

防衛設備を整えた方が良いと思いますわ」


魔道士3人にそこまで言われれば村長も危惧を感じる。

しかも俺たち3人は実際に盗賊団と戦ってきたのだ。

これほど説得力のある話も無い。


「ううむ、確かに今までこの村がそういった連中に襲われなかったのは運が良かっただけかも知れぬな。

しかもうちの村の近くでそんな事が起こったのならば尚更だ。

わかった、その件に関してはトムに任せるので、この村を守ってくれ。

今日からトム・サテナを村の防衛責任者とする」

「はい、承りました」


村の防衛の責任者となれば俺も心が引き締まる。

何しろ俺の防衛策で今後の村の運命が決まるといっても過言ではないのだ。


「それと実はもう二つ、トムに頼みがあるのだがな」

「なんでしょう?」

「うむ、実はな、トムにこの村でパン屋を開いて欲しいのじゃよ」

「パン屋?」


その村長様の意表を突いた頼みに俺は少々驚く。


「ああ、ホレ、トムが教えて作ってくれた、あのサクラ魔法食堂のパンだがな。

村人たちが出来ればいつも食べたいと言うのだよ。

それに関しては私もだ。

たしかにあのパンは普通に焼くパンとは全然違うし、比較にならないほどうまい。

だから出来ればトムにそのパン屋を開いて欲しいのじゃよ。

御主の家の人数も増えた事だし、どうにかならぬかな?」


村長様の願いだが俺は少々困った。


「しかし・・・アレはあの特別な調合粉がなければ出来ませんよ?

もちろんその粉をロナバールへ行けば購入する事は可能ですが、もし何らかの事情で入手出来なくなれば普通のパンしか売れなくなりますよ?

それに今までは単に私が御馳走していましたが、売るとなればそれなりにお金をいただかなくてはならないし、アレは普通のパンよりもかなり高くなるはずですよ?」

「ああ、それでも構わない。

元々この村にはパン屋は無かったからな。

この際、普通のパン屋も兼ねてもらって構わない。

普段は普通のパン屋で、その特別な調合粉を入手できた時だけ、あのパンを売るのでも構わない。

最初の資金はこちらで出すから何とかしてくれぬかのう?」


普通のパン屋で良いのか?

うちにはパンを作れるジャベックもいる事だし、それならば大丈夫だろう。


「わかりました。

それならば何とかなると思います」

「うむ、ありがたい。

それともう一つの事なのだが、この村に診療所を作って欲しいのだ」

「え?診療所を?」


それを聞いて俺は驚いた!

診療所と言えば、それなりの設備がいる。

そして魔法治療士や薬師なども必要になり、その運営はパン屋の比ではない。


「ああ、御主も知っての通り、この村には医者などいない。

今までも病気になった者や怪我人はロバート先生の所に担ぎ込まれ、治療してもらっていた。

しかし、今や御主の所には正規の魔道士が二人、ロバート先生やマイクとナンシーも合わせれば魔道士級の魔法を使える者が5人もおるのじゃ。

しかもサーバントやヘルパー、それに御主の所に最近来た3人組を合わせれば、魔法を使える者が12人もおるのだ。

それに魔法こそ使えないもののレベル50を超えた汎用ジャベックも14体もいるのだ。

それで何とか診療所を開いてもらえないだろうか?」

「しかし・・・」


正直な所、診療所を作るのはかなり難しい。

俺は一応正規の魔道士で治療魔法もそれなりに使えるが、ポリーナのような専門家ではない。

いくら正規の魔道士とは言っても得手不得手はあるし、俺は正直言って治療系の魔法はそれほど得意ではない。

魔道士とは言っても治療系の魔法は最低限しか使えないし、得意でもない。

俺は村の開墾のために、どちらかと言えば使役物体系の魔法に力を入れて学んでいた。

それで診療所を運営するにはかなり無理があるだろう。

しかし俺が迷っていると、ジェリーと師匠が後押しをするように話しかけてくる。


「やりましょう!あなた!

私はあなたと同じ正規の魔道士ですが、どちらかと言えば治療士よりで、初級の薬師の資格も持っております。

ジャベックたちにも薬の作り方を教えれば何とかなりますわ!」

「うむ、わしも今までこの村で治療を一手に引き受けてきたからある程度はわかる。

わしも手伝うからやってみよ!」

「わかりました。

防衛とパン屋の件は引き受けますが、診療所の方は直接人の命にも関わる事ですので慎重に事を進めたいと思います。

正直まだハッキリとはお答えできません。

それで良いでしょうか?」

「うむ、それでよい。

まずは村の防衛とパン屋の方をよろしく頼む。

診療所の方はまたその後でな」

「承知しました」


やれやれ!大変な事を引き受けてしまった!

村の防衛は必要な事だし、パン屋程度であれば何とか出来そうだが、診療所となると、流石に心もとない。


「さて、ではどうするかな?」


俺が考え込むと、ジェリーが提案をしてくる。


「まずは村の防衛施設から始めましょう!

いつ村が盗賊や魔物の群れに襲われるのかわからないのですからね。

実は私は数ヶ月前に御爺様と一緒にある村へ見学に行ったのです。

そこはちょうど村の規模がここと同じ位なのですが、とても村の防衛が整っていて、そこの村長さんはそれこそ1万の軍勢に攻められても撃退できると豪語していましたし、実際にそれが出来そうなほどに凄かったですわ。

ここからは少々遠いですが、まずはそこに見学に行きましょう」

「へえ?そんな場所が?」

「ええ、しかも何でもそこはホウジョウ子爵様と御縁がある村だそうですよ」

「ホウジョウ先生と?

一体、何て村なんだい?」

「北のアドレイユ王国に近い、ハーベイ村という所ですわ」


その名前を聞いて俺は驚いた!


「ハーベイ村?ひょっとしてミルキィの村か?」

「そうそう、そう言えばあの方が名誉村長をなさっている村です。

その村の広場にはミルキィさんの銅像まで建っているのですよ。

私、結婚式の時にその銅像の御本人がやって来て、結婚立会人だと伺って驚きましたわ」

「なるほど、ではまずはそこに行ってみるか!」

「ええ、私が案内をします」


俺は師匠に留守を頼み、ジェリーと一緒にマイクとナンシーを連れてハーベイ村へと向かう事にした。

我が家の3人組にも師匠の言う事を聞いてよく働けと言っておいた。


「へい、親分も奥様もどうか気をつけて行ってらっしゃいませ!」

「留守はロバート様と我々にお任せください!」

「帰りをお待ちしています」

「頼んだぞ。

しかしその親分とか言うのは何とかしてくれ」

「へい、では何とお呼びすればよろしいので?」

「そうだな・・・考えておくよ」


俺たちは航空魔法でハーベイ村へと向かった。


「ここがハーベイ村か・・・」

「ええ、そうです」


確かにその村は凄かった!

空から見ただけでも、村全体がグルリと高い煉瓦作りの街壁に囲まれて、さらにその街壁は広く深そうな堀で囲まれている。

しかもその外側にはもう一つ、外壁と外堀があり、その外堀をさらに丈夫そうな木柵が囲んでいる上に、その外側には何やら石垣のような囲いまであるのだ!

これはうちと同程度の規模の村としては恐ろしいほど強固な防御だ!

これならば確かに一万の軍勢といえどもこの村を攻めるのは難しいだろう!

 入り口は3箇所しかなく、そこ以外からはとても村の中へは入れそうになかった。

しかも下手に空から村に進入すると迎撃されると聞いていたので、村の手前で着地して徒歩で村へと向かおうと考えていた。

実際、俺たちが村に近づくと、うちのサーバントと同じ型のジャベックが飛んできて、俺たちを誰何してきた。


「ここは白狼族のハーベイ村です。一体何の御用ですか?」

「怪しい者じゃない。

この村の見学をしたくて来たんだ」

「では地上に降りてください。

御案内いたします」


俺たちはそのジャベックと一緒に地上へ降りて、村の入り口からジャベックに案内されて徒歩で村内に入った。

なるほど、村は小奇麗で中々見栄えも良い。

ジェリーはそのジャベックに案内を頼む。


「私はジェリー・サテナと申します。

 暫定村長のゾンデルさんの所へ案内願います」

「承知しました」


そしてジャベックに案内されると一人の白狼獣人の所へ連れて行かれた。


「私がこの村の暫定村長のゾンデルです。

おや、そちらの方は以前にモーゼスさんといらっしゃいましたね?

確かモーゼスさんのお孫さんでしたかな?」

「ええ、モーゼスの孫のジェリーと申します。

今はこの夫と結婚して、ジェリー・サテナと申します」

「夫のトム・サテナです。

よろしくお願いします」

「こちらこそ、して、今回はどのような御用事で?」

「ええ、実はこの妻のジェリーからこちらの村の防衛施設が素晴らしいと聞いて見学に来たのです。

うちの村も最近は盗賊に襲われる可能性が出てきたので、その参考にしたいと考えましてね。

それとこちらは私の友人であるホウジョウ子爵やミルキィとも縁がある場所と伺いまして」


その俺の説明にゾンデル暫定村長は驚く。


「何と!あなた様はホウジョウ子爵様やミルキィ様とお知り合いなのですか?」

「はい、マジェストンの魔法学校で同級生でお二人とは懇意にしておりました。

それにグリーンリーフ先生やミルファさんとも知り合いです」

「そうでしたか!

それでは是非この村を見学していってください!

私が案内させていただきます」

「よろしくお願いします」

「ええ、ではまず宿に案内いたしましょう」


俺たちがゾンデル暫定村長について行くと、途中の広場に銅像が建っている。

その銅像を見て俺は少々驚いた。


「これは・・・ミルキィ?」


ジェリーに聞いてはいたが、本当にミルキィの銅像があったので俺は驚いた。


「ええ、その通りです。

ミルキィ様はこのハーベイ村では名誉村長として村人全員から尊敬されております」

「そうなんですか?」


ジェリーから聞いた話ではミルキィはこの村の人々が堕落しかけた時に、叱咤してホウジョウ先生たちと共に村を復興させたそうだ。

なるほど、それならば村中から尊敬されているのもわかる。


 俺は宿へ着くと、その作りに驚いた。

水道や風呂の作りがホウジョウ先生の物にそっくりだったからだ。


「もしやこの宿もホウジョウ先生が・・・」

「ええ、その通りです。

ホウジョウ子爵がこの村を訪れて村の復興の一環として作られたのです」

「なるほど」


俺たちは宿に泊まると、改めて村を案内してもらった。

案内をしながらゾンデル暫定村長がこの村の話をしてくれた。


「この村は昔はドングリを採取して獣を狩って食べる生活をするだけの、小さいですが平和な村でした。

しかしある時に突然アドレイユ王国のラーガン伯爵領に襲われましてね。

一旦、この村も壊滅しかかったのです。

その後で残った村民が集まって再び村を復興させようとした時に、「雲の旅団」という方々が訪れましてね」

「雲の旅団?」

「ええ、旅の傭兵集団だったのですが、うちの惨状を見て、協力を申し出てくれましてね。

この村の防壁などを作ってくれたのはその方々なのですよ」

「へえ・・」


俺はてっきりここの防壁を作ったのもホウジョウ先生たちだと思っていた。

恐ろしくホウジョウ先生の防御施設と作りが似ているし、このような防御施設を構築可能な連中が他にいたとは思わなかったからだ。


「そしてその雲の旅団の方々は再びこの村に襲い掛かって来たアドレイユ王国のラーガン伯爵軍を撃退してくれましてね。

しかもその時に和平条約まで結んでくれて、相手から膨大な金額の賠償金までもぎ取ってくれたのですよ。

ま、ここの防御施設はその賠償金で出来たような物です。

何しろ大きな声では言えませんが、金貨数万枚も相手からふんだくれましたからね」

「それは凄いですね?」


なるほど、ここの防御設備が凄いのはそんなに金をかける事が出来たからか?

それはそれで凄いが、残念ながらうちではそんな財源はないし、とてもこんな凄まじい設備は作れそうに無い。


「ええ、あの方たちには感謝しかありません。

そしてこの村に平和が訪れたのですが、お恥ずかしい話で平和になれた我々は怠惰になって働かなくなってしまいましてね。

そのような時にホウジョウ子爵とミルキィ様がこの村を訪れて、我々を叱咤して村の復興を手伝っていただいたのですよ」

「それはありがたい話ですね。

私も友人でありながらあの人たちには散々世話になりっぱなしなのです」

「ええ、我々も本当にこの御恩をいつかは返したいと考えているのですが・・・」

「同感です」


俺とジェリーはゾンデル暫定村長に村を一通り案内してもらって、その防衛施設の数々に感心した。

そしてその施設の数々もさる事ながら村人自体の自分たちの村を防衛するという気持ちが一番大事なのだという事を教わった。

さらに何も名産や名物などなかったというこの村に数々の名産品が売られているのを見て驚いた。

そしてそれが全てホウジョウ先生とその仲間たちによって作られたのだと聞いて驚いた。

やはりあの人は物を作る発想が凄い!

俺は猪饅頭やハーベイ火付け、ドングリ酒などの珍しい品物が作られた経緯を聞いて、そのいくつかを土産に買っておいた。


「今回は色々と教えていただきありがとうございました」

「いえいえ、御役に立てれば幸いです。

またいつでも遊びに来てください」

「はい、ありがとうございます」


俺とジェリーはハーベイ村でたくさんの収穫を得て、自分たちの村へと帰った。

そしてその話を参考にしていよいよ村の防衛のために、まずはある事をするべく、うちの魔法組を召集した。


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