トム・サテナ 13 凱旋
俺は用心して村人たちは土塁の内側へいさせたまま、ラボロたちを村の外へ繰り出して倒れた盗賊たちを次々に縛り上げる。
ホウジョウ先生だったら蔦状のタロスで縛り上げる処だが、残念だが俺達には難しくてあれは出来ない。
特に大男で頭目のノーロイを厳重に縛りあげる。
縛り上げた盗賊たちを俺たちは用意してあった数台の荷車に乱暴に乗せて、全員を乗せ終わると、念のために師匠とナンシーとラボロたちを村の防衛用に留守番として残すと、俺とジェリー、マイクと三人組たちはアジャスタに向けて出発する。
アジャスタまでは二日かかったが、盗賊団の連中は夜もジャベックやタロスたちに見張らせるので、もちろん逃げる事は出来ない。
アジャスタに着いた俺たちは直ちに捕縛した盗賊どもを魔法協会の分所へ連行する。
魔法協会の受付で100人以上に及ぶ盗賊団を引き渡すと受付に驚かれた。
「これは・・・もしや盗賊団のホワイトウィーゼルですか?」
「ええ、そうです」
「大手柄です!
よくこの連中を捕まえられましたね?」
ここでジェリーが得意げに受付の協会職員に伝える。
「ええ、うちの夫はトリプルスターの一員ですからね」
「えっ?あの帝都悪魔迎撃部隊の?」
「ええ、そうです」
「なるほど、さすがは悪魔の集団を迎撃して殲滅しただけの事はありますね?
噂通り、納得の強さです!
ありがとうございます!」
こうしてトリプルスターが悪名高き盗賊団「ホワイトウィーゼル」を捕縛したという話があちこちに広まった。
俺は期せずしてトリプルスターの名声を上げたようだ。
大盗賊団だけあって懸賞金も全部で金貨30枚もかかっていたので、俺はそれを三人組にも分けてやった。
「ほら、お前たちにもちゃんと賞金の分け前をやるぞ!
金貨5枚ずつだ」
「へっ?いいんですかい?」
「ああ、お前たちも今回はちゃんと活躍したんだからな!
それだけあれば何もしなくとも半年近くは生活も出来るだろ!
その間に自分たちの今後の事を考えろ!」
「へい、ありがとうございます!」
「恩にきやす」
「ありがとうございやす」
無事にホワイトウィーゼルを魔法協会に引き渡した俺たちは一旦エイトン村へ帰ると、村人たちに今後の事を指示して一応依頼料をもらった。
そしてジェリーと師匠や偽者3人組を連れて酒場へ行って、あの時の聴衆たちに向かって言った。
「皆さん!無事にホワイトウィーゼルは壊滅しました!
この偽トリプルスターの3人も体を張ってそれなりに活躍しました!
どうかこれで許してやってください!
ホラ、お前たちも謝罪するんだよ!」
俺に促されて偽者3人組も頭を下げる。
「へえ、皆さん、どうもこの度はすいやせんでした」
「申し訳ない」
「反省しております」
その言葉を聞いた酒場の客たちがそれぞれ話す。
「おう!トムさんがそう言うなら許してやらあ!」
「ああ、何と言っても本物のトリプルスターの一員が言うんだからな!」
「仕方がない!」
「その代わり帝都迎撃戦の話をお願いしますよ!」
「はは・・・わかったよ」
俺は帝都迎撃戦の話をしてやった。
ホウジョウ先生の活躍やグリーンリーフ先生の凄さ、333期生たちの見事な連携技、そして俺とモーゼスの爺さんがロウデーモンやミドルデーモンを倒した事などを事細かく話した。
本物の悪魔迎撃の話を聞けて酒場の聴衆たちも満足したようだ。
「ははあ、これは凄いな!」
「ああ、本物の話は迫力が違う!」
「しかしそのホウジョウ子爵様ってのは凄いな!」
「ああ、あの上位悪魔のサタナキアを葬るなんてな!」
「俺には一生できないよ」
「当たり前だ!」
「しかしサルガタナスを魔法一発で倒したグリーンリーフ先生というのはもっと凄いな」
「ああ、もはや想像を超えている」
「トムさんもミドルデーモンまで倒すとは流石だな!」
「ああ、さすがはトリプルスターの一員だ!」
俺の話に聴衆たちも満足したようだった。
しかし一番満足したのは別の人たちだ。
「さすがですわ!
そんなトリプルスターの一人が私の夫だなんて私も鼻が高いですわ!」
「はっはっは!わしもそんな弟子がおるかと思うと自慢したくなるわい!」
師匠とジェリーは周りの人たちの反応に大満足の様子だ。
さらに頼まれて、俺は今回のホワイトウィーゼルたちとの戦いの話も話した。
村の防衛に土塁を張り巡らした事、村人総出で盗賊どもに石を投げつけた事、そして偽者3人組もそれなりに活躍をした事などだ。
俺は3人組にも促した。
「ほら、お前たちも話してみろよ!
今度はホラ話じゃなくて、本当の話なんだぞ!」
「へい、それでは・・・そこで俺たちはホワイトウィーゼルの連中を囲んで煽ってやった訳です。
奴らは俺たちの挑発に乗って向かってきたので、針鋲陣に突っ込んできて散々痛い目にあった訳でさあ」
「そこに俺たちが魔法で攻撃をしたんだ」
「あれは痛快だったな!」
「ボクも活躍したクマ~」
「おお、お前さんには世話になったな、相棒よ!」
「そうクマ、アオキンとボクは相棒同士クマ~」
テディも加わり三人組が戦いの様子を話した。
なんだかアオキンとテディは仲良くなったようだ。
今までのホラ話で慣れているせいか、話も中々の名調子だ。
時々テディの合いの手が入って面白い。
その話にも聴衆たちは大満足したようだ。
今回は俺だけでなく、師匠やジェリーも存分に活躍したので、そんな二人を酒場の人たちも褒めちぎる。
「いやあ、奥さんもこんな旦那さんで幸せですな!」
「しかもその夫を助けるために奥さんも自ら駆けつけて戦いに参加するとは素晴らしい!」
「さすがは奥さんも正規の魔道士ですな!」
「まあ、おほほほ・・・私は当たり前の事をしただけですのよ」
「御師匠様もこれほどのお弟子さんを育てるとは素晴らしい!」
「こんなお弟子さんを持つとは羨ましいですな!」
「ははっ!何の何の!」
二人とも酒場の魔道士や組合員たちに持ち上げられて御満悦だ!
「ジェリー、師匠・・・」
そんな二人に俺は苦笑いするのだった。
そして俺たちが帰ろうとした時に声をかけてくる者たちがいた。
「兄さん、兄さん!トムの兄さん!」
それはあの偽トリプルスターの3人だった。
俺はこれが最後と思って3人に忠告をする。
「いいか、お前ら!
これに懲りて二度とトリプルスターを名乗るんじゃないぞ!
次にそんな事をしたら、今度こそお前たちを魔法協会へ突き出すからな!
それに限らずもう人を騙すような事をするんじゃない!
まじめに暮らせよ!」
「へっへっへ、もちろんそんな事しやせんや!」
「その通りでさあ!」
「ええ、これからは本物が毎日目の前にいるのにそんな事をする訳ないでしょう!」
その言葉の意味をわかりかねた俺が3人に問いただす。
「本物が毎日目の前にいる?
一体、どういう事だ?」
「ええ、あっしらは兄さんの気風に惚れやした!
それでこれからはあっしらはトム兄さんの舎弟として働こうかと」
「はあ?」
「よろしくおねがいしやす!兄さん!」
「はあ?うちで働く?
何を言っているんだ?お前たち?」
「ええ、ですからこれからは兄さんの下でまじめに働こうかと」
「何を言っているんだ!
冗談じゃない!そんな事はお断りだ!」
「そんな冷たい事言わないでくださいよ!
兄さん、いやトムの親分」
「誰が親分だ!
俺はお前たちの親分になんぞなる気はない!」
「そう言わずに・・・」
「お願いしますよ」
「そもそもうちにはお前たちを雇うほどの金はない!
お前たちはただ働きになるぞ!」
「いえいえ、3人で一部屋をいただいて、メシさえ食わしていただければ文句は言いませんので」
なおも俺が断ろうとすると、ジェリーが3人に質問をする。
「あなたたち、なぜそんなにうちの夫の部下になりたいのですか?」
「へい、あっしはこんなに正義感も腕っ節も強く、また公正な魔道士を見た事がございやせん」
「あっしもです」
「その通り!」
「何しろ我々のウソ話を即座に見抜き、制裁を加えた上で、名誉挽回の機会まで与えてくれて、しかもそれを手伝ってくれる。
そしていきなり助けを求められた名も無い村を大盗賊団から救ってみせる!
さらに儲けた賞金は俺たちみたいな者にまで、ちゃんと山分けしてくれる。
まさにマギア・デーヴォの精神の塊で、魔道士の鑑!
こんなお人には今まで会った事がございやせん!」
「全くその通りでさ!」
「同感です!」
しかし俺はその事に反論する。
「アホか!そんなもん常識で当然だ!
そんな普通の行動をしただけでまとわりつかれてたまるか!」
しかし三人組は引き下がらない。
「それを「常識で当然」や「普通の行動」と言える所にほれ込んだ訳でして」
「あっしもです」
「どうか部下にしてくだせぇ!」
それを聞いたジェリーがうなずいて答える。
「いいでしょう!
理由はわかりました。
あなたたちが私の夫であるトムを慕ってうちで働きたいというのであれば、妻である私が許可しないでもありません。
ちょうど我が家に部屋はいくつか空いてますから、一人一部屋で大丈夫です。
食事は私とジャベックで作りますから問題はありません。
但し!本当に当分の間は無給ですよ!
うちにはそれほどの余裕はありませんからね!
それでも良いのならばうちで雇いましょう」
「もちろん、それで構いやせん!」
「さすが姉さん!話がわかる!」
「それと私の夫に逆らったり、その名に泥を塗るような真似をしたらトムが許しても私が許しませんからね!
知っての通り、私はこれでも正規の魔道士です!
容赦はしませんよ!
そこは覚悟しておきなさい!」
「へいっ!それはもちろん!」
上機嫌で勝手に話を進めていくジェリーに、俺が戸惑って話しかける。
「おい、ジェリー・・・」
「ふふ・・・いいじゃありませんか?あなた。
それに実は私、こういうのにもあこがれていたんですよ!」
「こういうのって、どういうのさ?」
「ええ、昔おじい様も村を襲って来た盗賊団を退治した時、その内の改心した何人かを部下にしたという話を聞きました。
この人たちもそれと同じですよ」
「そうかなあ?」
「ええ、是非うちで働いてもらいましょう!」
何だか微妙に違う気もするが、ジェリーがその気ならば、俺もさほど反対する気はなくなった。
「まあ、君がそれで良いというなら、俺は構わないよ」
「はい、では3人とも!
これからはうちできっちり働いてもらいますよ!」
「へい!お任せください!奥様!」
「まあ、奥様だなんて、うふふ・・」
うちに家人が出来たのをジェリーはうれしそうだ。
「奥様・・・ね」
こうして偽トリプルスターを名乗った3人は、何故か俺のうちの家人となって働く事になったのだった。
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