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トム・サテナ 11 エイトン村からの救援要請

 その少年の言葉に一人の年配の組合員らしき男が答える。


「坊や、ここは酒場だ。

 盗賊退治なら組合か魔法協会へ行きな」

「すでにどちらも行きました!

でも魔法協会はちょうど人が他の事でいなくて、組合では依頼は受けるけど、内容に対して請負料が少ないから引き受け手はいないだろうって言われたんです!

それに普通の組合員では相手にするには悪すぎる集団だと!

それでここに悪魔も倒したトリプルスターの人たちがいるって聞いて頼みに来たんです!

どうか助けてください!」


それを聞いた俺はその少年に聞いてみる。


「盗賊団だって?わざわざ村を襲う予告してきたのかい?」

「そうなんです!」


盗賊団がわざわざ村を襲うのに予告してくるなど、まずあり得ない。

そんな盗賊団はよほどの盗賊団に違いない。


「しかも普通の組合員では相手にするのには悪すぎるって?

一体その盗賊団の名は何と言うんだ?」

「はい、奴らは「ホワイトウィーゼル」と名乗っていました!」


それを聞いた酒場の人間たちが一気に震え上がる!


「ホワイトウィーゼルだって!」

「冗談じゃない!」

「あんな連中と戦えるか!」


ホワイトウィーゼル・・・その名は俺も聞いた事がある。

泣く子も黙る盗賊団だ!

確か頭目は2メルを超える大男で人数も100名を超えていると聞いている。

それに狙われた村はまず助からないと言われている盗賊団だ!

俺も自分の村がそいつらに襲われた時の事を考えて、色々と防衛策を考えていた連中だ!

俺はその少年に状況を聞いてみた。


「その連中はいつ襲って来ると言っているんだ?」

「十日後と言って来ました!

それまでに必ず金と食料と女を用意しておけって!

でもあれからもう三日経っているから、あと1週間しかありません!」

「そうか」


俺はしばらく考えてからその少年に答えた。


「君、安心するといい。

この3人はトリプルスターではないが、その盗賊団を倒したくてウズウズしているそうだ。

ホワイトウィーゼルを倒してくれるそうだよ」


その俺の言葉を聞いて偽者たちはびっくり仰天して叫ぶ。


「そんな!」

「殺されちまいますよ!」

「勘弁してください!兄さん!」


しかし俺はその3人に冷たく言い放つ。


「騒ぐな!お前たち、仮にもトリプルスターを名乗ったんだろ!

それだったら罪滅ぼしに少しはそれらしい事でもしてみせろ!

ましてやトリプルスターのホウジョウ子爵ならそんな連中一人でもイチコロだ!

お前たちもそれ位してみせろ!」


俺のその言葉に偽者3人組みは泣き叫びながら答える。


「そんな殺生な!無理ですよ!」

「ホワイトウィーゼルと言えば、頭目は2メルを超える白髪の巨人で、目は赤く口は耳まで裂けていて、部下も100人以上いるって言われている大盗賊団ですよ!」

「しかも襲う村には容赦なく、村人は皆殺しにして、何もかも持ち去るって噂です!」


泣き叫ぶ3人に俺はにべもなく答える。


「では魔法協会に行くか?それともここにいる連中にお前たちをあずけようか?

三つの中から好きな物を選べ!」

「うう・・・」


ここで俺はそこにいる聴衆たちに少々演説をする。


「皆さん、先ほども申した通り、私はトリプルスターのトム・サテナと申します。

さて、皆さんをだましたこいつらですが、私の顔を立てて、ホワイトウィーゼルを倒すという事で許してやるというのはいかがでしょうか?

もちろん、こいつらが例えホワイトウィーゼルに殺されたとしても文句は言わせません!

こいつらがホワイトウィーゼルを倒した暁にはここで再び皆さんにその償いを持って許しを請い、またその後で本物である私が帝都悪魔迎撃戦のお話を皆さんにしたいと思います。

それでよろしいでしょうか?」


その俺の話を聞いたその場にいた聴衆たちはそれで納得したようだ。


「いいぞ!兄さん!それでそいつらは許してやる!」

「ああ、俺もだ!

俺たちを騙した償いにホワイトウィーゼルの奴らを退治するってんなら文句はねぇ!」

「仕方がねえ、俺も許してやらあ!」

「ああ、この偽者ども!骨は俺が拾ってやる!

死ぬつもりでホワイトウィーゼルと戦ってこい!」


俺は3人組に向き直ると話を促す。


「そういう訳だ!

お前たちもそれでいいな!」

「そんな!」

「俺たちはまだ死にたくねえ!」

「そもそも殺されたら文句だって言えねえじゃねえですかい!」


そういやそうだった。

しかし今更こいつらに忖度してやる必要も無い。

俺は冷たく言い切った。


「では魔法協会に突き出されるか?

それともこの人たちに可愛がってもらうか?

俺はどれでもいいんだぞ?

とっとと決めろ!」

「うう・・・」


しかし3人はうめくばかりで返事をしない。

どうやら自分たちでは決められないようだ。


「おい!そこの偽ホウジョウ、お前の名前は?」

「へえ、あっしはアオキンと申しやす」

「正規の魔法士か?」

「はい、一応・・・」

「ならばマギア・デーヴォの心得はわかるな?

 まさに今がその時だ!

 お前たちは今まで人を騙して不当な利益を得ていたんだ。

 ここで逆に人の役に立ってみたらどうだ!」

「しかし・・・相手があの「ホワイトウィーゼル」では・・・」

「俺も手伝ってやる。

それともやはりこのまま魔法協会へ連れて行って欲しいか?」


俺がそう言うとアオキンとやらは自棄になって答える。


「わかりました!

覚悟を決めます!」

「トリプルスターの兄さんが一緒ならやってみます!」

「あっしもです!」

「よし!ではいくぞ!」

「「「 へい! 」」」


こうして俺たちはその足でエイトン村へと向かった。


(まさか、自分の村を守るつもりで聞いていた事がこんな所で役に立つとはな)


俺は自分の村が盗賊集団などに襲われた時のために、ホウジョウ先生や実際にゴブリンキングを倒したポリーナたちに村の防衛方法を色々と聞いていた。

土塁の積み方、空堀の効果、柵の有効性、タロスの使い方等々だ。

俺は村に帰ったらその話に沿って村の防衛策を村長様や師匠に進言するつもりだったが、つい開墾作業が楽しくなってしまい、それをおろそかにしていた。

もし、ホワイトウィーゼルがうちをこの村よりも先に襲っていたら大変な事になっていただろう。

それを考えると、この村の危機も他人事とは思えない。

ここは少々この村の人たちには申し訳ないが、俺がホウジョウ先生たちから教わった村の防衛法がどれほど有効かを試させてもらおう。

そして俺はマイクに事情を説明してナンシーとサーバント、ヘルパー全員を連れて来るように命じた。

敵は100人を超えると聞いているし、戦闘員が実質俺とマイクだけでは心もと無かったからだ。

その間に俺は村の人々に状況を聞き、村の地形を調べてどうやって防衛をするか考えていた。

 すると驚いた事に次の日にはマイクがナンシーとサーバントとヘルパーの5人だけではなく、師匠とジェリー、それにラボロたち10体も全てを連れて来たのだ!

しかもチルンやテディまで一緒だ!

驚いた俺は二人に聞いた。


「どうしたんですか?師匠?

それにジェリーまで!」

「どうしたもこうしたもあるか!

お前があのホワイトウィーゼルと戦うと聞いて、こうして助けに来たのじゃ!

村には最低限のジャベックだけを置いて、それ以外の全戦力を率いてな!」

「いえ、私が頼んだのはナンシーたち魔法ジャベックだけですが・・」


俺がそう言うと、ジェリーが凄い剣幕で話し出す。


「あなた!夫が盗賊と戦おうというのに、妻には一人で逃げていろとでも言う気ですか?」

「ああ、そのつもりだけど?」

「冗談ではありません!

ただの村娘ならともかく、これでも私は正規の魔道士ですよ!

そんな事をしたら私は祖父や祖母に叱られてしまいます!

今こそマギア・デーヴォの心を発揮する時です!

私も一緒に戦います!」

「うきゅっ!」

「ボクも戦うクマ!」


ジェリーと一緒にいたチルンとテディもその気だ。

はは・・・さすがモーゼスの爺さんの孫娘だなあ・・・

不謹慎ながら俺はそう思った。

しかしこの二人がついていてくれるならありがたい!

これでこちらは魔道士が5人いるも同然だ!

それにサーバントとヘルパーの4人もTS魔法士級なので、頼りになる。

ラボロもレベルは50なので、そこらへんの盗賊よりも強いだろう。

チルンとテディは・・・よくわからん。

まあ、連れてきたからには何かの役に立つだろう。


「よし、じゃあ二人にも手伝ってもらいますよ。

まずはこの村全体を土塁と空堀と柵で囲むんだ!

こんな感じで村の周りを土塁と空堀と柵で囲ってくれ」


俺は昨日のうちに描いておいた村の見取り図を見せて全員に説明をした。


「承知した」

「ええ、わかりましたわ」


俺はホウジョウ先生とポリーナに教わった通り、まずは村全体を空堀と土塁で覆った。

俺とナンシーは1千体のタロスを、マイクは500体のタロスを出せたし、師匠とジェリーも100体以上のタロスを出せた。

サーバントとヘルパーも一人当たり、200体のタロスを出せる。

9人の合計で4000体近いタロスを出せたのだ。

そのタロス群を使って大急ぎで村の周囲に空堀を堀り、土塁を積み上げた。

さらに木材を使ってその空堀の周囲に柵を作り上げる。

それはかなり荒削りで大雑把な作りではあったが、俺たちは何とか5日で土塁と空堀と柵を作り上げた。


(きっとホウジョウ先生ならもっと精密な物を1日で作っているな)


俺はチラリとそんな事を考えたが無いものねだりをしても仕方が無い。

それに時間が無いのだ。

今はとにかく正確さや見栄えよりも実質だ。

もちろん、その間、村人たちものほほんとさせていた訳ではない。

自分たちの村の防衛をさせるのだから目一杯働いてもらう。

他人任せにさせるつもりはない。

これは今後の別の盗賊たちに対する指針や訓練にもなるのだ。

それにいつも俺がこの村の防衛を手伝う訳にもいかないし、そのつもりもない。

俺がその事を説明すると、村人たちも納得して、色々と動き始めた。

村人たちには丸太を使って、村の門を作り、槍やら弓矢やらを作らせていた。

さらに盗賊が来ると思しき方向に、高さ10メルほどの矢倉も立てて、村人たちに交代で見張らせた。

当然の事ながら偽トリプルスターの3人にも色々と手伝わせて、村から逃げたりしたら容赦しないと言っておいたし、ラボロたちに見張らせておいた。

そして空堀が完成し、土塁が積みあがると、今度はタロスに命じて村の外にある、石という石を全て村の中へ入れて投げるのに丁度良い大きさに割った。

急造ではあるが、どうにか盗賊たちが来る前に準備を終える事が出来た!


そしていよいよその当日がやって来た!


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