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トム・サテナ 10 トリプルスターを名乗る者たち

 アジャスタの町へ着くと昔なじみの宿に泊まる。

子供の頃から師匠と一緒に泊まった事のある宿だ。

受付へ行くとなじみの主人が挨拶をしてくる。


「やあ、トム、久しぶりだな!

 ロバートさんに聞いたぞ!

 お前さん、正規の魔道士になって、しかも美人と結婚したんだってな!」

「ああ、まあね」

「今度は嫁さんも連れて来てくれよ」

「そうだな。

所で聞きたいんだが、今ここに帝都防衛のトリプルスターの人が来ているって聞いたんだが」

「ああ、うちの宿の客もそんな事を話していたな」

「どこにいるか知っているかい?」

「確か、ロルドの宿に泊まっているって聞いたな。

なんだい、あんたも会いに行きたいのかい?」

「ああ、そんな所だ」


俺は部屋に荷物を置くと、ロルドの宿へと向かった。

一計を案じて格好は魔道士の制服の上に古びた外套を着込んだ。

これで見た目は魔道士ではなく、ただの旅人に見えるはずだ。


 ロルドの宿は中々盛況だった。

そこはよくある宿屋兼酒場の作りの宿屋で、アジャスタの町では宿としても酒場としても、かなり大きな宿だった。

俺は酒場に入ると、その辺にいる男に尋ねた。


「なあ、ここに「トリプルスター」の人がいるって聞いたんだが?」

「ははっ、あんたもかい?

ここん所はあの連中の独演会みたいな場所になっているよ。

そら、あそこで話しているのがそうさ」

「ありがとう」


俺はその人物の近くに行って話を聞いてみた。

どうやらトリプルスターの人間だと名乗る者は3人いるようだった。

その連中は得意げに悪魔迎撃の話をしている。


「・・・そこで俺とこのキーロとアカーラが仲間の危機にその悪魔に突撃したのさ!

それで俺たち3人で悪魔どもを一掃した!

それで仲間たちも救われたって訳さ!」

「ああ、あの時は爽快だったな!」

「でも、ホウジョウの兄貴と一緒とは言え、ひやひやだったぜ」


そう話す3人を見たが、俺は全く見覚えがなかった。

名前もホウジョウと名乗っている奴以外には全く聞き覚えがなかったし、肝心のそのホウジョウの兄貴とやらはホウジョウ先生とは似ても似つかぬおっさんだった。

それに何よりこいつらの話している事は全くのでたらめだ。


(やれやれ、やっぱり偽者か?

さて、どうしてくれよう?)


もちろん、この連中をこのまま放って置く事などできない。

俺はまずこの連中を鑑定してみた。

この3人のリーダーらしきホウジョウと名乗る奴はレベル38で魔法士程度の魔法は使えるようだ。

レベルも38ならば魔法士としては上々だろう。

だが、それを知った俺は苦笑した。


(やれやれ、この程度の魔法使いでホウジョウを名乗るなよな?

ホウジョウ先生が聞いたら泣くぞ?

いや、あの人の場合は面白がるか?)


そんな事を考えながら他の二人も鑑定してみると、一応この二人もいくつかの魔法は使えるようだ。

しかしレベルは31と28・・・

間違っても悪魔を倒せる力量ではない。


俺はその連中が一通り話終わるのを待つと、前へ出て聞いた。


「なあ、あんたたち!

トリプルスターの人たちはみんな魔法学士か魔道士だって言うじゃないか!

俺は魔法学士章っていうのを見てみたいんだ!

ぜひ、見せてくれよ」


しかしその俺の質問に男は慌てて答える。


「いや、魔法学士章って物はそうそう人に見せるものじゃないんだ!

そう簡単には見せられないな」


残りの二人もその男に合わせて相槌をうつ。


「そうそう」

「その通り」


こいつら馬鹿だな?

これじゃ自分たちが魔法学士だって認めているじゃないか?

しかも魔法学士でもないくせに!

そこで俺は次の質問をした。


「じゃあせめて魔法学士番号を教えてくれよ!

魔法学士と言えば、その証明として相手に学士番号を伝える事は常識だろう?

もちろんそれは知っているよな?」


俺がそう言うと相手は今更違うとも言えず、少々慌てた様子で話す。


「あ、ああ、俺の学士番号はMA333の005だ」

「俺はMA333の006だ」

「俺はMA333の007だ」


それを聞くと聴衆が感心する。


「おお、さすがだ!」

「マジェストンのそんな上位の席次番号を持っているとは」


しかしここで俺はもちろん突っ込みを入れる。


「おかしいな、MA333の005はエトワールさんという女性だぞ?」

「えっ!」

「それに006と007はゴウライとハヤテという名のアイザックのはずだ。

あんたら二人はアイザックなのかい?」


その俺の説明に相手の二人は大慌てだ。


「ええっ!」

「そ、それは・・・」


しかしホウジョウを名乗る男は慌てず図太く答える。


「いや、すまん、少々番号を間違えた。

俺はMA333の015で、こいつらは016と017だ」

「ふ~ん、そうか?

それにホウジョウってのはその時の首席で子爵様なんだが、あんたは一体そのホウジョウ子爵様のどういう関係者なんだい?

まさかあんたが子爵様ではあるまい?」


さすがに本人だとは言えまいと答えを待つと、果たして相手は大体予想していたような答えをしてくる。


「お、俺はそのホウジョウ子爵の従兄弟さ」

「そうそう、ホウジョウの兄貴は子爵様のイトコなんだ」

「その通り!」


二人は偽ホウジョウとやらに話を合わせている。

だが俺はホウジョウ先生は俺と同じく天涯孤独だと聞いている。

それも本人から直々にだ!

こいつが従兄弟の訳がない!

そこで俺は次の質問をする。


「へえ、それじゃトリプルスターの証拠を見せてくれよ」

「証拠?」

「ああ、トリプルスターの人たちは全員トリプルスターの証拠の隊員メダルを持っているはずだぜ?

それは常にマギアサッコに入れてあるはずだ!

それを見せてくれよ!」


俺がそう言うと、そこにいた聴衆たちが俄然騒ぎ出す。


「何?そんな物があるのか?」

「へえ、それは俺も見てみたいな!」

「お~い!その隊員メダルとやらを見せてくれよ!」


周囲の聴衆たちにそう要求されると、当の3人は今まで以上に慌てだす。


「い、いや、今は持っていない」

「そうそう、家に置いて来たのさ」

「そうだ」


しかし俺はそこをさらに追及する。


「おかしいな、トリプルスターの連中はみんなそれをマギアサッコに入れているはずだぞ?

持っていないなんて事はないはずだ」


俺の言葉に3人は慌てふためいて返事をする。


「そんな事はない!」

「そうだよ!

 全員がいつもそんな物を持っている訳ないだろ!」

「お前は一体何なんだよ!さっきから俺にイチャモンをつけやがって!」

「そうだ!俺たちトリプルスターに文句でもあるのか!」


その質問に俺はうなずいて答える。


「そうだな、文句はあるよ」

「何だと!」

「どういう事だ!」

「一体、何の文句があるんだ!」

「そりゃ本物としては自分の仲間の偽物を名乗る奴がいたら文句の一つも言いたくなるだろう!」


その俺の一言で3人は一気に青ざめる。


「なっ!」

「本物・・・だと!」

「そんな・・・!」


周囲の人々も口をつぐみ、一瞬その場がシーンと静まり返る。

青ざめる3人に対して俺は笑って答える。


「ああ、そうさ。

あんたらみたいな偽者と違ってな」


俺のその言葉で偽者ホウジョウはこれ以上はないほどに慌てふためく!


「ウソを言うな!

そっちこそ偽者だろう!

それこそ本物の証拠でもあるのか!」

「ああ、あるよ」

「何っ!」

「そら、これがトリプルスターの証だ」


そう言って俺はマギアサッコからトリプルスターの証である、隊員メダルを出して見せる。

ホウジョウ先生に作ったもらった三つの流星が彫り込まれているミスリル銀製の大きなメダルだ。

そして小汚い外套を脱ぎ捨てて正規の魔道士の制服を見せる!

もちろん胸には魔道士章もつけている!


「ほら、よく見てみろ!

ホウジョウ子爵家の紋章も入っている本物だ!

トリプルスターの面々は全員これを持っているんだ!

俺はトリプルスターの一人、魔道士のトム・サテナだ!

トリプルスターは全員で60人ほどいるが、俺はその全員の顔と名前を知っている。

しかし俺はお前たちの顔も名前も知らないぞ!

これは一体、どういう事だ?!」

「ひっ!」


俺がそう言うと、こいつらは一言叫ぶと無言になった。


「そら、どうした?

俺に説明をしてみろ!」


すると、それまではおとなしく話を聞いていた聴衆も騒ぎ始める。


「そうだ、そうだ!」

「ほら、ちゃんとどういう事か説明しろよ!」

「俺たちから散々金を取って話をしているんだから説明する義務があるだろ!」

「早く説明してみろ!」

「さも無ければ金を返せ!」

「逃がしはしないぜ!」


そう言って観客たちは3人の周囲を固める。

そこにはもちろん逃げ出す隙間など無い!

一気に騒ぎ始めた観客たちに対して3人はうろたえる。

何しろここにいるのはそのほとんどが組合員やら魔法士やらのはずだ。

この3人がそれらを全員相手に出来るはずもない。


「う、う・・・」

「あ、兄貴・・・」

「そんな・・・」


ここで俺は呪文を唱える。


「アニーミ・デクドゥ・エスト!」


途端に3人組の周囲には赤銅色の甲冑型戦闘タロスが12体現れて囲む。

これでこの3人は完全に逃げ場を失った!

動揺する3人に俺は再び話しかける。


「どうやら説明ができないようだな。

さあ、どうする?

このまま俺と一緒に魔法協会へ行くか?

それともこのままここにいる人たちにお前たちの処分を任せようか?」


俺の周囲にいる観衆たちはそれこそ殺気立っている。

今まで相手が英雄だと思っていたからこそ、わざわざ金を払って話を聞いていたのだ。

それが偽者だとわかれば当然ただではすまないだろう。

それこそこの連中に半殺しにされてみぐるみ剝がれるのは必至だ!

そしてついに進退窮まった3人に泣きが入る。


「助けてください!」

「そうです、俺たちはほんの出来心なんです!」

「兄さん、助けてください」


しかしもちろん俺はそんな3人を突き放す。


「悪いが俺にそんな義理はないな。

お前さんたちの自業自得だ。

さあ、どっちを選ぶ?

魔法協会へ自首するか?それともこの人たちに可愛がられるか?

それだけは選ばせてやるよ」

「そんな・・・」


俺たちがそんな話をしていると、そこへバタン!と大きな音を立てながら酒屋の扉を開けて、一人の少年が酒場へ入って来て叫ぶ。


「ここにトリプルスターの人たちはいますか?」


その声に酒場にいた連中は一斉に俺と偽者たち、酒場に入ってきた少年を見比べている。

そして最終的にその視線は俺に集中する事になる。

俺は仕方なく少年の問いに答える。


「確かにここにトリプルスターの人間はいるが何の用だい?」


俺がそう言うと、少年が俺に向かって懇願する。


「ボクはエイトンの村の者です!

実はうちの村が盗賊たちに狙われて困っているんです!

どうか助けてください!」


そう言って少年は俺に向かって頭を下げた。


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