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トム・サテナ 09 結婚式

 いきなり俺の結婚式が決まった!

それからは恐ろしいほど早く話が進んだ。

モーゼスの爺さんは驚くほどに手際よくテキパキと事を進め、俺の村に使いを出して、村長様とロバート師匠を呼んだ。


「おい、トムよ、これは一体どういう事なのじゃ?」

「いや、俺にもわからないんですよ!師匠!

何しろここに遊びに来たらいきなりモーゼスの爺さんに孫と結婚しろと言われて・・・」

「ふむ、まあ、めでたい事じゃ、良かろう」

「ううむ・・トムにはわしがどこか良縁をと思っていたのだが、このような名士の孫娘となれば、問題はなかろう」


師匠も村長様もそれで納得したようだ。


 そしていよいよ俺とジェリーの結婚式となった。

結婚立会人はあのホウジョウ先生とグリーンリーフ先生とアンジュ、おまけにミルキィとペロンまでもだ!

他の国では知らないが、このアムダール帝国で正式に結婚するには「結婚立会人」という者が必要だ。

その結婚立会人が二人を承認する事によって、正式に結婚が成立する。

何と策士の爺さんは、自分の設計した無料魔法診療所の確認にかこつけてホウジョウ先生たちを呼んだのだった!

モーゼスさんが得意げに俺に説明をする。


「どうじゃい!トム!

結婚立会人が帝国子爵自治領主様と天賢者二人にハーベイ村名誉村長、おまけにケット・シーまでいるぞい!

こんな豪華な結婚立会人はそうそうおるまい!」

「確かにそうだけどさあ・・・」


一般的に結婚立会人は身分が高く、人数が多いほど良いと言われている。

この面々で文句がある訳が無い!

聞いた所によると、今までのモーゼスの爺さんの子供や孫の結婚立会人の中でも最も豪華な面々らしい。

そりゃそうだ!

天賢者3人が結婚立会人になるなんて前代未聞だろう!

もっとも天賢者として紹介されるのはアンジュだけで、ホウジョウ先生は帝国子爵自治領主、グリーンリーフ先生はガレノス三高弟として紹介をされるそうだ。

どっちにしてもとんでもない大物だ!


「こんな大物を俺の結婚立会人にしちゃって大丈夫なのかよ・・」


俺がぼやいているとホウジョウ先生が挨拶に来る。


「やあ、トム!結婚おめでとう!

まさかモーゼスさんの孫と結婚をすると思わなかったよ」

「はは、俺もさ!」

「モーゼスさんから孫娘が結婚するんで、結婚立会人になって欲しいって言われたから来たんだけど、まさか相手がトムとは思わなかったよ!」

「はは・・・俺もさ」

「でも良かったじゃないか!

 お幸せにな」

「ああ、ありがとう」

「トム、ジェリーさん、おめでとうございます」

「トムさん、ジェリーさん、おめでとうございます」

「トムさん!ジェリーさん!おめでとうございます!

 花嫁さんも美人で、良かったですね!」

「はい、ありがとうございます」


グリーンリーフ先生やミルキィ、アンジュも俺を祝ってくれる。

俺がみんなに礼を言うと、そばにいたペロンも祝ってくれる。


「二人とも良い匂いの人同士でお似合いですニャ」

「ありがとう、ペロン」


わずかに不安だった相手の性格もペロンのおかげでなくなった。

ペロンが良い匂いだというのならば間違いはないだろう。


「急な事だったんで、大した物は用意できなかったけど、我々からの御祝いは全部モーゼスさんに渡しておいたよ」

「え?そうなんだ?

ありがとう」


後で聞いたら何とホウジョウ先生は俺たちの御祝いに、金貨20枚と「サーバント」と「ヘルパー」というTS魔法士級の魔法ジャベックを2体ずつ合計四体、そしてホウジョウジャベック店で売り出す予定の「ラボロ」という一見変わった見かけの汎用ジャベックを10体もくれたらしい。

さらに子供が生まれた時の遊び相手だと言って、チルンとテディという小型のジャベックまでくれた。

俺はそれを知った時に、相変わらず気前の良い人だと思った。

こりゃ何かの時は本当にホウジョウ先生には借りを返さないとなあ・・・

しかしどうもそんな時は来そうにない。

そしてモーゼスさんからはジェリーの結婚持参金として金貨100枚もの大金をもらった。

驚いた俺はモーゼスさんに尋ねた。


「おいおい!こんなに持参金をつけちゃっていいのかよ!

モーゼスの爺さん!」

「心配するな、わしの女孫の結婚の時は全て金貨100枚を持参金につけておるのでな。

その件に関しては何も問題はない。

むしろお前にそれ以上を頼みたい」

「それ以上?何だよ?」

「ちょっとこっちへ来い」


モーゼスさんは俺を別室へ連れて行くと、自分のマギアサッコから何やら箱を出した。

これは金貨100枚箱だ!

モーゼスさんが蓋を開けてその中身を見せると、中には金貨がギッシリと詰まっている。

そしてそれの蓋を閉じると、そのまま俺に押し付ける。


「これもお前にくれてやるわい」

「何だって!」

「何、前にも言った通り、アレはわしの一番気に入りの孫なんじゃ。

しかも両親を亡くしていて不憫なのでな。

そういう意味ではお前さんと同じ境遇じゃな。

それでせめて余計に持参金をつける事にしたのじゃ。

だが、他の孫や曾孫たちの建前、堂々と余計にはやれぬのでな。

だからこれはお前さんに内密にくれてやるわ。

もちろん、誰にも言うなよ!

ジェリーにもじゃ!

しかし困った時には構わんから好きに使え」

「いいのかよ!

こんな大金を!」

「ああ、御主の事は信用しておるからな。

何しろ三年間同じ場所で暮らして、同じ食事をした仲じゃからな!

気心も知れておるわい!

だから頼むぞ、婿殿」

「全く・・・敵わねぇなあ・・・」


俺はあきれ返りながらもその大金を受け取った。


 こうして俺たちの結婚式が始まった。

結婚式の司会が俺たちを紹介する。


「皆さん、本日は若い二人の門出の佳き日にようこそお集まりくださいました!

本日の花嫁はこの町の名士でもあり、魔道士でもあるモーゼス・カイト氏の孫娘、ジェリー嬢でございます!

彼女は正規の魔道士の資格を持ち、残念な事にすでに御両親は他界されておりますが、その後も祖父母であるモーゼス夫妻に育てられ、本日結婚の運びとなりました!

 そして一方のトム・サテナ氏はまだ20半ばといえども花嫁と同じく正規の魔道士であり、祖父モーゼス氏とも同級生で友人同士でもあります。

その縁にて今回の結婚と相成りました。

しかも驚く無かれ!新郎は中等魔法学校の生徒でありながら、あの世界最大と言われるマジェストンの迷宮を友人たちと共に制覇し、さらには帝都防衛の悪魔退治で名を馳せた「トリプルスター」の一員でもあります!

これはまことに良縁と言えるでしょう!」


ここで司会が言葉を区切ると集まった招待客たちから「おお!」と声がする。

ああ、うそじゃないけど話を盛っているなあ・・・

まるで全部、俺一人の力で成し遂げたみたいな言い方をしているよ。

まあ、結婚式だからそういう物か?


「そしてこのお二人の結婚立会人を御紹介させていただきます。

まず第一の立会人は新郎とモーゼス氏の共通の友人で、アムダール帝国子爵自治領主閣下であらせられるシノブ・ホウジョウ様でございます!」


ここでまたもや招待客たちから声が上がる。

「おお!」「あの・・・」などと囁きあっている。

さすがはホウジョウ先生だ!

帝国子爵の名は霊験あらたかだな!


「さらにはその師匠で何と!あのメディシナーの始祖、ガレノス様の三高弟であるエレノア・グリーンリーフ様!

そして現在ただ一人魔道士便覧にその名が載っている唯一の天賢者、アンジュ・サフィール様!

近日急激に成長著しいハーベイ村の名誉村長であるミルキィ・ハーベイ様!

さらには昨今有名な高級食堂であるサクラ魔法食堂の名誉店主でもある、ケット・シーのペロン様です!

本日列席の皆様も御存知の通り、ケット・シーは幸せを運ぶと言われております。

そのケット・シーが結婚立会人になるなど、滅多にはございません!

このような結婚立会人の下で結婚が出来るとは本日の新郎新婦は真に縁起が良いといえるでしょう!」


その司会の説明で招待客たちからは割れんばかりの拍手が俺たちに贈られる!

やっぱり帝国子爵様や天賢者なんて立会人だと凄い騒ぎになるなあ・・・

ましてやケット・シーまでが立会人になるなんて、確かに普通ではないだろう。


 無事に結婚式を終えた俺はジェリーと二人で村の俺の家へと帰った。

色々と荷物もあったので、ホウジョウ先生がリンドバーグで俺たちを送ってくれた。

村長様や師匠も一緒で、モーゼス爺さん夫妻も俺の家を見たいと言ってついてきた。

そしてモーゼスの爺さんは俺の家を見ると感心した後に、安心した様子で、「ジェリーを頼む」と言って帰って行った。


 俺は結婚式を挙げてジェリーと自分の村で過ごしていた。

まさかこんなに早く嫁と生活する事になるとは思わなかったが、師匠に言われて家を大きく作っておいて良かった!

何だかんだ言いながらも嫁がいる生活というのは良いものだ!

ましてやうちの嫁みたいに美人で出来の良い嫁はそうそういるもんじゃない!

村長様はまた村に魔道士が増えたと大喜びだし、村人たちにもお似合いの夫婦だと褒められたり、トムには勿体無い嫁だとからかわれている。

 しかもホウジョウ先生からもらったジャベックはどれもこれも優秀だ!

マイクとナンシーを初めとして我が家に20体もいる汎用ジャベックのおかげで、すでにうちはまるで、大金持ちの屋敷のように様々な担当がいる。

まさかこれほど早くにこんな大人数になるとは思わなかったが、師匠に言われて家を大きく作っておいて本当に良かった。

妻のジェリーはホウジョウ先生からもらったチルンとテディをかなり気に入っていて、色々と仕込んでいるようだ。

モーゼスの爺さんにいきなり結婚を言われた時は驚いたもんだが、今の俺は感謝しかない。

それに今やモーゼスの爺さんは義理の祖父なのだ!

こりゃ一生頭が上がらないなあ・・・

そんな生活をしていると、師匠がうちに訪ねて来た。


「どうじゃ、トムよ、新婚生活は?」

「はは、最高ですよ!師匠」

「うむ、ところで実は昨日わしは用事で魔法協会のアジャスタ分所へ行って来たのじゃがな」


アジャスタ分所はこの辺では一番大きな魔法協会の分所だ。

それ以上大きな魔法協会の出先機関はこの辺にはなく、その次に近い大きな魔法協会はいきなりマジェストンの総本部になってしまう。


「アジャスタへ?

何かあったんですか?」

「いや、用事自体は大した事は無かったのじゃ。

今年度版の新しい魔道士便覧を買ってきたのじゃよ。

まだ買ってないのを思い出してな。

今年版からはせっかくお前の名前も載っているのだからな。

ホレ、お前と嫁さんの分も買ってきてやったぞ。

ああ、金は別にいらん、祝いの追加みたいなものじゃ」


そう言って師匠は俺に魔道士便覧を二冊渡す。


「ありがとうございます」


俺がそれを受け取ると、師匠は少々笑いながら話す。


「しかしわしもそれを見て驚いたわい。

ちょっと最初の方のページを見てみろ」


俺は言われたとおり、便覧を開いてみて驚いた!


「あっ!これは!」


そこには堂々と1ページを丸々使って天賢者アンジュ・サフィールの名が紹介されていたのだ!

それを見て俺は唸った。


「さすがは天賢者・・・」

「ああ、便覧に載った初めての天賢者じゃからな。

たった一人じゃし、扱いも特別じゃわい。

わしも実際にお前の結婚式で天賢者のアンジュ様に会って、話を聞いておらんなんだら、さぞかし驚いたであろうな。

これでアンジュ様は世間的には「唯一の天賢者」という訳じゃ」

「そうですね」


現在魔法協会に登録されている天賢者は世界に8人いるとホウジョウ先生から聞いてはいるが、そのうちホウジョウ先生やグリーンリーフ先生を含めた7人は便覧に名前を掲載していない。

その事情を知らない普通の魔道士たちにしてみれば、アンジュは「唯一の天賢者」という訳だ。

同じようにそのページを見ていたジェリーも感心して話す。


「アンジュさんって私たちの結婚式に来て立会人になっていただいた、あの可愛らしい方でしょう?

あなたから話は聞いていてもあの可愛らしい人が天賢者なんてやっぱり驚きね」

「ああ、俺もそう思うよ」


俺たちが感心していると師匠が話を変える。


「だが、それとは別にアジャスタの宿で妙な話を聞いてきての」

「妙な話、何です?」

「うむ、最近アジャスタの町にトリプルスターの名を名乗っている者がいるらしいのじゃ。

それが何とホウジョウの名を名乗っているのじゃ」

「え?ホウジョウ先生が?」

「いや、わしもホウジョウ子爵にはお前の結婚式の時に会っているので顔は知っておる。

しかしわしも実際にその人間を見て来たのだが、そのホウジョウと名乗る人は全く別人でのう。

トリプルスターには子爵様以外に親戚か何かでホウジョウという方がおったのか?」


その話を聞いて俺は驚いた!


「いや、ホウジョウという名の人は子爵様以外にはいませんよ!

一体そいつは誰なんです?」

「いや、もちろんわしにもわからんよ。

だからお前に聞きに来たのじゃからな」

「そうですか」

「ふむ、話はそれだけじゃ。

邪魔したな」


そう言ってロバート師匠は帰って行った。

その後で俺が考え込んでいるとジェリーが話しかけてくる。


「あなた、気になるならアジャスタまで行って確認してくればいいじゃありませんか?」

「しかしこっちの事もあるしなあ」

「うちの事は私とナンシーにでも任せて、マイクと一緒に行って来なさい。

気になるんでしょう?」

「まあ、そうなんだが・・」

「私も気になるし、ロバート先生だってそうでしょう。

あなたはトリプルスターの人を全員知っているんでしょう?」

「ああ、全員と話した事はないが、顔と名前は全部知っている」

「じゃあ、行って確認してらっしゃいよ」

「そうだな、じゃあ、ちょっと行ってくる。

場合によってはかなり日数がかかるかも知れないが」

「ええ、もちろん構いませんよ」


俺は旅支度をすると、マイクを伴ってアジャスタの町へと向かった。

一体、ホウジョウと名乗る者は何者なのだろうか?


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