表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/180

トム・サテナ 08 モーゼスの町

 俺はモーゼスの爺さんから聞いていた町に着くと、まずはその辺の人に聞いた。


「なあ、この町に魔道士でモーゼスって爺さんがいるはずなんだけど、知っているかな?」


俺のその質問に町の人は少々驚いて答える。


「モーゼスって・・・まさかモーゼス・カイト様の事かい?」

「ああ、そうそう、その人だよ。

どこに住んでいるか知っているかい?」

「あんた、モーゼス様のどういう知り合いだい?」

「え?俺はモーゼスの爺さんの友達だけど?」

「友達?」

「ああ、魔法学校で同級生だったんだ。

俺もこう見えてもモーゼスの爺さんと同じ魔道士でね」


俺は今回空を飛んでは来たが、格好は普通の旅姿でやって来た。

これでは普通の旅人にしか見えないだろうから、一応魔法使いである事を説明した。

俺がそう説明すると、その男性はさらに驚いて俺を案内し始める。


「魔法学校の同級生で魔道士?

それならこちらです。

御案内させていただきます」

「え?いや、大体の場所を教えてくれればいいんだけど?」

「いえいえ、御遠慮なさらずに」


そう言って案内された場所は大きな屋敷だった!

周囲はぐるりと壁で囲まれていて、何とその入口には門番まで立っている!


(おいおい!これじゃホウジョウ先生の屋敷並みじゃんかよ)


そう思った俺だったが、そこの門番に尋ねた。


「あの~俺はモーゼスの爺さん、いや、モーゼスさんの友人なんだけど、ここにモーゼスさんはいるかな?」

「モーゼス様の友達?」

「そうなんだけど」

「お名前は?」

「トム・サテナです」

「少々お待ちください」


そう言って門番は屋敷の中へ消えていった。

それを見送った俺は少々不安になってきた。

いや、俺は間違いなく、あの人の友達だよな?

俺は改めて大きな屋敷を眺めて不安に駆られながらも、言われるがままにそこで待っていた。

しばらくすると執事のような人が来て、俺を屋敷の中へと案内してくれる。


「お待たせいたしました。

サテナ様、どうぞこちらへ」


俺は案内された屋敷の中を見て、その内装に驚く。

恐ろしく豪華だ!

これでは本当にお貴族様の屋敷並だ!


(うひゃ~、こんなすごい屋敷にモーゼスの爺さんは住んでいるのかよ?)


俺が応接間のような部屋に到着すると、そこにはモーゼスの爺さんが待っていた。

それを見た俺はホッと一安心した。

爺さんは気さくに俺に挨拶をしてきた。


「よう!トム、来たな!」

「久しぶり!モーゼスの爺さん!」

「うむ、卒業以来、半年ぶりほどじゃな」

「それにしてもモーゼスの爺さん、あんたひょっとしてこの町のお偉いさんだったの?」

「あ、うむ、まあな」

「まあなって、驚いたぜ!

ここの町に来てモーゼスさんの知り合いだって言ったらいきなりここまで案内されてさ。

まさかこんなお屋敷に住んでいるとは思わなかったからさ。

これじゃホウジョウ先生ん所並の屋敷じゃないの!」

「まあ、気にするな」

「そうする事にするよ。

 ところで何で俺を呼んだのさ」

「うむ、まあその事じゃが、まずはわしの家族を紹介しよう」


そう言ってモーゼスさんは息子や娘、孫などを紹介した。

息子や孫と言っても、みんな俺よりも年上だ。

俺は無難に挨拶をしておく。

そして最後に紹介された女性に少々俺は驚いた。

それはすこぶるつきの美女だったからだ。


「初めまして、孫のジェリーです。

トムさんの事は祖父から伺っています。

よろしくお願いしますね」

「は、はい、こちらこそ」


全員の紹介が終わると、俺はモーゼスさんと応接間でくつろいで話した。


「うむ、遠路お疲れ様だったな、トムよ」

「まあ、それは飛んできたからそれほどでもないけどね」

「はは・・・そうじゃな。

時におぬしの村の方はどうじゃな?」

「ああ、ホウジョウ先生のおかげで驚くほどに順調さ。

何しろ村人が総出で5年開拓するよりも広い面積がもう農地になっちまったんだぜ?

まるで夢を見ているみたいだよ!

あんまり順調なんで怖いくらいさ!

こんなに開墾がうまくいくとは思わなかったよ。

もちろん全部ホウジョウ先生のおかげだけどね。

全く本当にホウジョウ先生様様だな」

「ああ、うちもそうじゃ。

綿の栽培もうまくいっとるし、先日はホウジョウ先生の紹介状を持って、孫と一緒にメディシナーへ行ったらメディシナー侯爵自らがわしを丁寧に接待していただいて、恐れ多くて困ったくらいじゃわい。

全くホウジョウ先生には頭があがらんわい」

「そうだな、ところでさっきから気になっているんだけど、そこにいるペロンそっくりなのは誰なの?」


そう言って俺は座っているモーゼスの爺さんの横に目を向けた。

そこには先ほどから見た目がペロンそっくりの者が立っていた。


「ああ、これはホウジョウ先生からもらった治療ジャベックのペロリンじゃよ。

正確に言うとペロリンN5号だそうじゃ。

ペロンを模って作ったじゃベックで、簡単な治療魔法が出来るので、今度作る無料診療所で働かせようと考えておるのだが、今の所はこうしてわしの家にいさせて色々と経験を積ませておるのじゃよ。

メディシナーにはこれと似たような型のジャベックがたくさん働いておってな」

「なるほど、俺もこのジャベックをホウジョウ先生からもらったんだ。

名前はマイクって言うんだけどな。

他にも開拓ジャベックとかもらって大助かりさ!」

「それは良かったのう。

 ところでトムよ。

 先ほど紹介したわしの家族はどうじゃな?」

「え?どうって、みんな中々いい人たちじゃないか?

 何しろ俺なんか天涯孤独だから羨ましいぜ!」

「うむ、特にジェリーはどうじゃ」


そう言われて俺はドギマギしながら答えた。


「え、まあ、そうだな。

中々美人でいいじゃないか!

爺さんもあんな美人の孫が居ていいな!

俺の嫁さんに欲しい位だぜ!はっはっは!」


俺がそう言うとモーゼスさんはうなずいて答える。


「そうか、ではお前さんにくれてやろう」

「はっ?」


驚く俺に爺さんは同じ話を繰り返す。


「だからジェリーをお前さんの嫁としてくれてやろうというのじゃよ」

「待て待て待て!爺さん!いきなり何言っているんだ!

そりゃ無茶だろう!」

「無茶でも何でもないわい!

お前さん、まだ独り身なんじゃろう?」

「そりゃそうだが・・・」

「別に許婚やこれと言った女性がいる訳でもないんじゃろ?」

「そうだな」

「だからわしの孫娘をくれてやろうと言うんじゃよ」

「だから何でそうなるんだよっ!

説明してくれよ!」


俺がそうわめくと爺さんは説明を始めた。


「うむ、実はな、わしは魔道士になってここに戻ってから家族にマジェストンの話をしておったんじゃよ。

そして、おぬしの話をしておったらあの孫娘がその話に偉く興味を持ってのう。

是非お前に会ってみたいというのじゃよ」

「え?何で?」

「うむ、あの娘はわしの孫の中でも特にばあさん、つまりわしの妻じゃな、それに似ておって、そういう人生を自分も生きてみたいと昔から常日頃言っておってな」

「そういう人生ってどういう人生さ?」

「そうだな、どこかの小さな村に嫁いで、その夫とその村を大きくして、いずれこの町のように大きな町にしてみたいというのだ」

「はあ・・・」


それは中々変わった御嬢さんだ。

普通はそんな苦労をして人生を送りたくはないだろうに。

ましてやこんな金持ちの家に生まれればなおさらだ。


「実はこの町はわしが妻と友人夫婦の4人で作った町でな。

当時はわしら4人から始めた村だったのだ。

ちょうど今のお前さん位の時だ。

そして百年以上もかけてようやくここまでの町に出来た。

その話をよく孫娘にしておったのじゃよ。

他の孫たちにも話した事はあるが、ジェリーは事のほか、その話が好きでな。

それで自分もそういう村作りの話に憧れて、自分もそういう生き方をしてみたいと以前からわしや妻に言っておったのじゃ。

それでジェリーにお前さんの話をしたら、お前がまさにそういう状況だったのでな。

それでお前さんを呼んで会わせて見たという訳じゃよ」

「いや、ちょっと待てよ!爺さん!

そりゃ確かに俺はその条件にはあっているかも知れないが、そんなのは他にもたくさんいるだろう?」


しかしモーゼスの爺さんは首を横に振って話し始める。


「いやいや、これが中々みんな帯に短し、たすきに長しでな。

中々これという人物は今までおらんかったのじゃよ。

それでわしもあの孫娘が行き遅れてしまうのではないかと心配しておったのじゃ。

だが、トムよ、お前さんはその条件にぴったりなんじゃ。

何しろあの娘はわしらと同じ正規の魔道士なので、相手にも魔道士か魔法学士辺りを考えておったしの、それでこれから新しい村を開墾して有望そうな若者というとこれがなかなかな・・・。

実はわしがマジェストンの魔法学校へ行った目的の一つには孫娘の婿を探すのもあったのじゃ。

あそこならば魔道士はたくさんいるだろうと考えてな。

そしてお前さんを見つけたという訳じゃ

それだけお前さんは珍しい人材という事じゃよ」

「そうかあ?俺以外にも結構いそうだけどなあ?」

「そんな訳ないわい」

「ああ、ホラ、それだったらホウジョウ先生がいるじゃないか!

あの人なんか帝国貴族で天賢者だぞ!

大切な孫娘ならちょうどいいじゃないか?」


俺がそう言うと、モーゼスの爺さんは頭を抱えて返事をした。


「バカめ!

そんな訳ないじゃろうが!」

「へ?」


俺が間抜けた声を出して驚くと、モーゼスさんがため息をだして俺に問いただす。


「あのな、トム、よく考えろよ?

お前に目に入れても痛くない可愛い孫娘がいたとする。

しかも中々良く出来た娘で正規の魔道士で家事も万端に仕込んで、どこにだしても恥ずかしくはない孫娘だ。

しかしその孫娘をホウジョウ先生に嫁に出す気になるか?

あの「ホウジョウ先生」にじゃ!」

「あ?」


そう言われて俺は気が付いた。

一拍おいて俺は自分を納得させるように呟いた。


「ならないな・・・」

「そうじゃろう?」


確かにホウジョウ先生は帝国貴族で身分は申し分ない。

性格も温和で女性には甘くやさしい。

しかし本人は天賢者で、なおかつその周囲には天賢者や魔法学士、魔道士の女性がゴロゴロといる。

しかもその全員が美女で、魔法や事務仕事に家事万端が出来るらしい。

出来ないのは天竜のライラくらいなものだろう。

そして何と言ってもグリーンリーフ先生がいるのだ!

ホウジョウ先生の事だから決してモーゼスさんの孫をないがしろなどにはしないだろうが、その美女たちの中で囲まれて生活をしたら、一体本人はどう考えるだろうか?

まともな神経を持っていれば、そんな環境にいたらまず萎縮してしまうに違いない。

しかも魔物が跋扈する金剛杉の大森林の中での生活は普通の魔道士では過酷なのは間違いないだろう。

そこまで考えた俺はようやく爺さんの言いたい事がわかった。


「確かにな・・・」


モーゼスの爺さんもうなずいて答える。


「ホウジョウ先生は確かに素晴らしい人物じゃ。

しかしお前さんも知っての通り、とてもではないが普通の人物ではついていけん。

あの人についていけるのはよほど特殊な人材じゃ。

グリーンリーフ先生やアンジュたちのようにな。

とてもわしの孫娘などには無理じゃ。

人にはそれぞれつり合いという物があるじゃろう」

「そうか・・・」


確かにその通りだと俺は思った。


「じゃから御主が一番いいんじゃよ」

「そうは言ってもなあ・・・」

「今も言った通り、あの娘は正規の魔道士じゃし、家事も万端仕込んである。

開墾や農作業に関しても理解はあるし、むしろ自分で進んでやりたがるくらいじゃ。

しかも容姿はあの通りじゃ。

性格は少々勝ち気じゃが、お前さんにはそれくらいがちょうど良かろう。

それにこれから村を広げて農地を開拓するとなれば、その程度でなければ務まらんだろうしの。

何か不満はあるのか?」

「いや、俺には全然不満はないけど、あっちの気持ちはどうなのさ」

「実は今、この部屋に来る前にあの娘に聞いてみた。

あっちは問題ないそうじゃぞ」

「ええ~」

「実はあの娘の母親はわしの末娘でな。

しかし、数年前に父親と共に鉱山の事故で亡くなってしまったのじゃ。

そこでわしとばあさんが手塩にかけて育ててな。

まあ、わしの娘も同然という訳なのじゃよ。

しかも一番気に入りのな。

だから正直に言って、わしもあの孫娘の婿には安心できる者が欲しい」

「そうだったのか・・・」


俺が思わず納得すると爺さんはそのまま話を強引に進める。


「では良いな、それではこのままここで式をあげるぞ」

「ええっ?!」


あまりに突然の事で俺は驚いたが、モーゼスさんはさも普通のように話す。


「別に構わないじゃろ」

「だけど、もし結婚するなら俺の村の村長さんや師匠に報告もしなけりゃならないし、式にだって出て欲しいしさ」

「そんなもん、こっちから迎えにいくワイ」

「それに結婚立会人はどうするのさ」


俺がそう言うと、モーゼスの爺さんはニヤリと笑って言った。


「それは申し分のない人を用意してやるわい。

これ以上ないほどのな」

「ええ・・・?」


どうやら俺は本当に結婚する事になりそうだ。

これは驚きの展開だ!



ここからの話は少々本編よりも先の話になります。


当小説を面白いと思った方は、ブックマーク、高評価、いいね、などをお願いします!

ブックマーク、高評価、いいねをしていただくと、作者もやる気が出てきますので是非お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ